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http://bylines.news.yahoo.co.jp/eikenitagaki/20140221-00032853/
板垣 英憲 | 政治評論家、板垣英憲マスコミ事務所代表
2014年2月21日 1時37分
◆2月8日の大雪に続いて、14日に降った20年ぶりの記録的大雪は、都道府県・市町村もいわゆる「事件官庁」であることを多くの国民に思い知らせた。大雪のために8都県で19人が死亡した。
東京都の舛添要一知事(都民1300万人の安全担当)は大雪が降っていた最中、東京・赤坂の高級天ぷら店で、てんぷらをほおばり、舌つづみを打っていたという。
埼玉県の上田清司知事(県民722万人の安全担当)は15午後5時20分ごろ、秩父市の久喜邦康市長から電話で自衛隊派遣を要請されたのに、これを断っていた。
静岡県の川勝平太知事も15日午前、静岡県御殿場市から陸上自衛隊の災害派遣を要請されていたにもかかわらず、「派遣の要件に該当しない」と難色を示していたという。
そう言えば、伊豆大島町の川島理(まさ)史(ふみ)町長と原田浩副町長は2013年10月、台風の大雨による土砂崩れにより、元町地区を中心に甚大な被害を受けた際、出張で島内に不在だった。
事件官庁と言えば、警察庁・警視庁・道府県警察本部、国税庁、金融庁、証券取引監視委員会、公正取引委員会などが思い浮かぶけれども、それだけに限らない。都道府県・市町村もレッキとした「事件官庁」である。事件、事故、自然災害(天災)に深く関与しているからだ。
とくに都道府県知事・市町村長は、警察などの事件担当者以上にうっかり「持ち場」を勝手に離れることは、許されない。「持ち場」を離れたときに限って、大災害に見舞われる。
◆これまでこのサイトで度々紹介してきたことであるけれど、都道府県・市町村長の「任務と心構え」に関することなので、以下、再再録しておきたい。
1995年(平成7年)1月17日未明に阪神淡路大震災が発生したのを契機に、私は、「内務省が復活する日」(サンドケー出版局、1995年10月25日刊)を上梓した。この本の執筆に当たり、旧内務官僚、自治官僚のOBらを取材した。
そのなかで鹿児島県知事を務めた鎌田要人参院議員(1921年=大正10年=10月2日〜2005年=平成17年=12月3日)から話を聞きながら、深い感銘を受けた。
鎌田要人参院議員は、鹿児島県日置郡金峰町尾下(現・南さつま市)出身。鹿児島二中(現甲南高校)、七高造士館を経て東京帝国大学卒業後の1943年(昭和18年)、内務省に入省した。朝鮮総督府への出向、静岡県副知事、消防庁長官、自治事務次官などを歴任した後、1977年(昭和52年)に鹿児島県知事選に立候補して、初当選し、1989年(平成元年)まで3期12年務めた。退任後の1989年(平成元年)、参議院議員選挙に鹿児島選挙区から自民党公認で出馬し初当選して、2001年(平成13年)まで2期12年務めた。2005年(平成17年)12月3日、心不全のため都内の病院で死去。享年85。
旧内務官僚といういかめしさはなく、実にざっくばらんな人柄で、取材は楽しかった。しかし、この取材の最後にしみじみと、こう語っておられたのを、いまでも忘れられない。
「鹿児島県知事のとき、鹿児島県から県外に出るのは、滅多になかった。台風の通り道なので、大洪水などの大被害がいつ起こるかわからないからだ。だから夜も安心して眠ることができない。知事時代はもちろん、参議院議員になってからも、家内を一度も海外旅行に連れて行ってやれなかった。申し訳ないと思っている」
市長はもとより、都道府県知事という行政の首長=トップは、在任中、市民、都道府県民のために職務に専念しなくてはならないのである。国政にかかわりたいというのであれば、その首長の座を辞して行うべきである。それも、自ら国政に進出しようともせず、首長のままでかかわろうとするのは、卑怯である。
◆首長であっても、危機管理を疎かにしていると、大変な禍に襲われることがある。その代表例が、次の大事故である。
ロシアのナホトカ号が1997年(平成9年)1月2日未明、島根県隠岐島沖の日本海で重油流出事故を起こした。流出した重油が、日本海を漂いながら、石川県小松市沖合の海を汚染したばかりか、海岸の岩場や砂浜をべったりと汚した。これを除去し、きれいにするために、全国各地からボランティアが集まった。ところが、小松市の当時の北栄一郎市長が事故発生後、ウソの理由で休暇を取って、サイパンに海外旅行に出かけてしまっていた。しかも、女性同伴の不倫旅行だった。このため、小松市民はもちろん、マスメディアが一斉に批判した。北栄一郎市長は、この責任を取り辞任に追い込まれた。後継市長選挙が1997年3月に行われ、北栄一郎市長も再出馬したが、石川県農水部長を務めていた西村徹(自民、新進、社民推薦)が当選した。北栄一郎市長は、森喜朗(後の首相)が石川県知事含みで育っていた人材だったが、期待を裏切った。
【参考引用】読売新聞YOMIURIONLINEが2月18日午前7時32分、「大雪被害、市側の自衛隊派遣要請を拒否した県」という見出しをつけて、以下のように配信した。
「記録的な大雪の被害が拡大する中、埼玉県秩父市が15日以降、自衛隊の派遣を要請するよう県に打診していたにもかかわらず、県が当初『除雪のための派遣要請はできない』 と拒否していたことがわかった。県は17日午後6時半になって自衛隊に派遣要請したが、地元からは、『対応が遅すぎる』『秩父を見捨てたのか』などの批判が相次いでいる。防衛省によると、17日午後3時現在、自衛隊に派遣を要請したのは山梨、群馬、長野、静岡、東京、宮城の6都県。山梨県は最も早い15日午前11時20分に要請しており、群馬、長野両県も同日中に要請した。秩父市の久喜邦康市長が電話で県側に自衛隊の派遣要請をしたのは15日午後5時20分頃。それ以降、市危機管理課の担当者らが『病気の人もいるので何とかしてほしい』などと繰り返し依頼したが、県の担当者は『自衛隊と協議したところ、除雪だけを理由に要請するのは難しい』と受け入れなかったという。6都県の多くは『人命救助のための除雪』を理由に派遣要請しており、防衛省は『一般論で言えば除雪が人命救助と密接である場合は要請できる』と説明している。こうした県の対応に対し、秩父市民から批判が相次いでいる。同市の主婦(45)は『遅すぎる。もっと早く自衛隊が来てくれれば除雪もスムーズに進んだのではないか』と憤る。ある男性会社員(53)は『もっと早く来てくれないと意味がない』と怒り心頭だった。秩父市、横瀬町、皆野町、長瀞町、小鹿野町の5市町は17日午後6時半、自衛隊の派遣を改めて文書で要請した。県はほぼ同時に自衛隊に派遣要請したが、山梨県より約55時間も遅れたことになる。同課の担当者は 『《助けてほしい》という声は秩父地域から届いていたが、救助に必要な要件を満たしていなかった』と話した。また、県が大雪で孤立集落が出た場合の対策を想定していなかったことも判明した。県によると、東日本大震災を受けて2011年11月に地域防災計画を改定し、帰宅困難者対策などを盛り込んだが、関係機関の対応については 『一般災害時における予防対策計画に準じて整備』するとあるだけで、具体的な対策は明記していないという。同課の担当者は『これほどの積雪はそもそも想定しておらず、大雪で孤立集落が出るとは思っていなかった』」と釈明した」
出典:売新聞YOMIURIONLINE 2月18日午前7時32分、「大雪被害、市側の自衛隊派遣要請を拒否した県」
読売新聞YOMIURIONLINEが2月19日午前8時48分、「大雪被害への陸自派遣要請、静岡県も難色示す」という見出しをつけて、次のように配信した。
「大雪による被害が拡大する中、静岡県御殿場市が15日午前に陸上自衛隊の災害派遣を要請するよう県に打診したにもかかわらず、県東部危機管理局が『派遣の要件に該当しない』と難色を示していたことがわかった。その結果、御殿場市への派遣要請は見送られ、市内の主要道路については民間の協力も得て、ようやく16日に除雪が終わったが、生活道路の多くはまだ手つかずだ。市民からは『記録的な大雪で、柔軟に対応してほしかった』 など疑問の声が上がっている。御殿場市では15日午前9時の時点で県内最大となる85センチの積雪を記録。主要道路は雪で通行できず『積もった雪でドアが開かず、家から出られない市民もいた』(市危機管理室)という。自衛隊への災害派遣は市町の依頼を受けて知事が要請するため、市は同日午前中、事前に県東部危機管理局に打診した。県東部危機管理局によると、御殿場市から相談を受けた同局の当番職員は、県庁本庁の担当部署と相談した結果、市に『除雪が間に合わないだけでは要請できない』と電話で伝えたという。その後、県は最終的に派遣要請を見送った。同局担当者は『生命、財産を守るという差し迫った緊急性がその時点ではなかった』と説明する。一方、小山町については、70世帯78人が一時孤立していたこともあり、県は16日午前10時過ぎ、陸上自衛隊に派遣を要請した。同町の新井昇危機管理監は『町の対応能力を上回る事態を受け、県に派遣要請をお願いした』と話している。自衛隊に派遣要請する際、県や市町は『公共性』『緊急性』 『非代替性(自衛隊の派遣のほかに取り得る手段がない)』の3要件を満たしているかどうか考慮する。防衛省報道室は「除雪作業についても、人命救助という目的があれば、派遣要請することは可能」としている。実際、今回の大雪では、17日午後11時時点で陸自の派遣を要請した7都県のうち、静岡を含む3都県が『人命救助のための除雪』を要請理由としている。こうした県の判断に対し、御殿場市民からは不満も聞こえる。同市の農業男性(56)は『自宅前の道路の除雪がようやく17日午後に終わった。自衛隊がいれば、もう少し除雪が早かったと思う』と話した。若林洋平市長は『市内は救急車も通るのが難しいほど雪が積もっていた。人命に直結すると考え、県に相談した。今後も同じような認識では困る』と述べた」
出典:読売新聞YOMIURIONLINE 2月19日午前8時48分、「大雪被害への陸自派遣要請、静岡県も難色示す」
板垣 英憲
政治評論家、板垣英憲マスコミ事務所代表
昭和21年8月7日広島県呉市生まれ。中央大学法学部卒業、海上自衛隊幹部候補生学校を経て、毎日新聞東京本社に入社、社会部、浦和支局、政治部・経済部に配属。福田赳夫首相、大平正芳首相番記者、通産省、東京証券取引所などを担当。昭和60年6月、評論家として独立。著書は「戦国自民党50年史」「小沢一郎総理大臣」「国際金融資本の罠に嵌った日本」「孫の二乗の法則―孫正義の成功哲学」(PHP文庫)など130冊。
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