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2014年2月14日
八重山教科書採択地区で使用する中学公民教科書が一本化されていないことに対し、文部科学省は月内にも地方自治法に基づく「是正要求」を竹富町に出す方針だ。
市町村教育に対する国の介入は全国に例がない。信頼関係に基づく解決を力ずくで放棄させ特定の教科書を押し付けるなら戦前の国定教科書と変わらず、戦後教育の破壊にほかならない。介入は厳に慎むべきだ。
事の起こりは、同地区採択協議会会長の玉津博克石垣市教育長が運営ルールを無視し、十分議論しないまま、領土・防衛・改憲の記述が目立つ保守的な育鵬社版を答申したことにある。竹富町は答申に従わず在沖米軍基地を取り上げた東京書籍版を採択した。
文科省の方針は妥当なのか。第一に是正要求は自治体が違法な事務処理を行った場合に発動できる。「地方公共団体が自ら教科書を購入し生徒に無償供与することまで法令上禁止されていない」というのが内閣法制局の解釈で、竹富町の行為は違法とは言えない。
第二に地方自治法は「自治体の自主性・自立性に配慮しなければならない」と定めている。八重山地区はその後、全教育委員による協議で東京書籍版に一本化した。だが文科省はこれを認めず、政務官が現地に乗り込んで育鵬社版を強要するなど自治体の自主性を妨げた。国の姿勢こそ是正すべきだ。
第三に教育現場への是正要求は地方教育行政法の「児童生徒の教育を受ける権利が侵害されていることが明らか」な場合に限定される。2013年実施の全国学力テスト結果によると、同町は小学校の国語A・B、算数A・Bともに県平均正答率を上回り、国語Aは全国平均を上回る。中学は全国平均を上回り国語Aはトップレベルにある。学校、家庭、地域の連携によって児童生徒の権利は守られていることを数字が示している。
ボタンの掛け違いに目をつぶって育鵬社版を強要し続ける文科省こそ、教育基本法に定められている「教育の中立性」を否定している。米ニューヨーク・タイムズ紙は、竹富という小さな島が歴史修正主義の「グラウンド・ゼロ(中心地)」にされていると指摘、沖縄を利用した日本の右傾化へ懸念を示した。
県教委が示すように、根本解決は時間をかけて八重山採択地区で協議を尽くし、統一の教科書を採択するよう努力することだ。
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