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このままでは「流れ解散」必至!?都知事選・細川惨敗で見えた民主党の政策なき「漂流状態」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38375
2014年02月14日(金) 長谷川 幸洋 現代ビジネス
舛添要一知事を誕生させた東京都知事選は、やはり単なる地方選挙にとどまらなかった。選挙結果は、いまの永田町の姿を象徴しているようだ。
まず、都知事選は民主党の漂流状態をくっきりと浮かび上がらせた。それから、日本共産党の躍進もあらためて印象づけた。永田町では野党再編論議がくすぶり続けているが、今回の都知事選の教訓をしっかり整理して、次に備える必要がある。
■「即脱原発」に「脱成長」。党左派より過激だった細川の主張
民主党は当初、舛添支持に傾きながら、細川護煕候補の出馬が固まると、一夜にして細川に乗り換えた。「そんな簡単に支援候補を切り替えられるのか」という思いは民主党支持者でなくても感じたに違いない。
舛添と細川では何が違ったか。両者とも脱原発を唱えたが、舛添は「エネルギー政策は基本的に政府の仕事」と認識して段階的な脱原発を主張した一方、都知事にできる部分として、再生エネルギーの活用や省エネ推進を訴えた。これに対して、細川は即原発ゼロだった。
私がもっとも重要な違いとみたのは、細川が出馬の第一声で「経済成長至上主義からの脱却」を唱えた点だ。舛添は、そんなことは言っていない。脱原発に加えて脱成長となると、たとえ即原発ゼロに賛成でも、首をかしげる有権者もいたのではないか。
この路線は、民主党左派をさらに過激にした路線でもある。民主党は2030年代までの段階的な脱原発を志向しつつ、経済成長については成長志向派と格差是正(=公正な所得再分配)派の間で内部対立がある。
民主党が当初、舛添に傾いていたのも、成長志向派からみれば、政策的にそう違和感がなかったからでもある。だが、結果的に細川が即原発ゼロと過激になり、かつ脱成長まで唱えたものだから、せいぜい民主党左派を支持する勢力がうなずける程度になってしまった。
そうなると、実は宇都宮健児候補が有利になる。宇都宮を支援した日本共産党と社民党は、即原発ゼロと脱成長・格差是正路線の元祖であるからだ。同じように即原発ゼロと脱成長を唱えるなら、突然、湯河原の里から降りてきた細川よりも筋金入りの共産党・社民党のほうが信頼できる。そう考えた有権者も多かったはずだ。
皮肉を込めて言えば、15年間も釜を焼いたり絵を描いたり、畑をいじって優雅な隠遁生活を送ってこられた殿様に、選挙カーの上から「脱成長を」なんて言われるより、戦前から一貫して労働者の側にいた共産党のほうが、はるかに「格差是正」に真剣に取り組むだろう。そんな思いが細川の上に宇都宮を押し上げた理由である。
有権者の一番の関心は何だったか。それは昨年の参院選、一昨年の総選挙から一貫している。それは景気回復と安定成長の実現である。各種世論調査をみても、今回の都知事選で有権者の関心は「景気・雇用」と「医療・福祉の充実」に集中していた。
有権者はまず長く続いた低迷を脱して「安心して暮らせるように生活をしっかり立て直したい」と考えているのだ。そういう目線からみると、脱原発は重要課題ではあっても、有権者の関心からは少しズレていた。
■経済・外交安保で基本軸なく議論にならず
民主党が舛添から細川に大きくスイングした姿は、いまの民主党を象徴している。先の党大会で海江田万里代表は「いのち、雇用、暮らしを守る」と強調した。だが、その中身となると、まったく心もとない。
経済政策の根本である「まず成長を目指すのか、それとも公正な所得再分配が先か」という論点でも、いまだに結論が出ていない。海江田は後者だろう。だが、党内には「公正な所得再分配を実現するには、経済成長が不可欠だ」という意見もある。
外交安保防衛問題となると、混迷は一層、顕著になる。今国会後半の重要テーマになる集団的自衛権問題にどう対応するか、民主党は結論を先送りしている。経済政策と外交安保政策で肝心な柱を打ち出せないようでは、とてもまともな政党とはいえない。
民主党が2012年総選挙で敗北してから、もう1年3カ月が過ぎた。この間、いったいどんな議論を重ねてきたのか。いまの民主党は惰性で生きているようなものだ。私は1年以上も前から言っているが、このままの状態が続くなら、民主党は「流れ解散」必至である。
そんな民主党のだらしなさが、翻って日本共産党の躍進につながっている。この傾向は昨年の東京都議選と参院選から明白になっていたが、今回の東京都知事選でも宇都宮が細川をしのぐ大健闘という形で引き継がれた、とみていい。
こういう状況下では、私は共産党におおいにがんばってほしい、と思う。これは皮肉ではない。本当に期待する。なぜなら、民主党のように基本軸がきちんとできていない政党では、とてもじゃないが、安倍政権と核心に迫る議論はできないからだ。
それは当然である。議論というのは、双方がそれぞれ「これが本筋」と考える基本軸があってこそ成立する。自分たちの軸がなくて、ふにゃふにゃしたコンニャクのような状態だったら、枝葉末節で相手の揚げ足取りをするのが精一杯ではないか。
それでは、政治が前に進まないのだ。
その点、共産党ははっきりしている。経済成長は2の次、3の次で、まず格差是正=公正な所得再分配である。それから、自衛隊はいらず日米安保条約もいらず、武装解除して「(言葉だけの)外交」による平和実現を唱えている。もちろん集団的自衛権の見直しも憲法改正にも大反対だ。これくらい自民党と明確な違いはない。
だからこそ、共産党はそんな基本軸をしっかり掲げて政権と議論すればいい。そうすれば、日本の現状と課題が議論を通じてはっきりしてくる。私は共産党の政策にまったく賛成しないが、日本の政治を前に進める触媒として、あるいは反面教師として共産党に期待するのだ。
■「寄り合い所帯」を「真っ当な政党」に変える政策論議を
と、ここまで書いてきたら、結いの党の江田憲司代表から『政界再編』という新著が送られてきた。パラパラとめくってみると、次のような文章があった。
「今の『ごった煮』政党、考え方の違う『寄り合い所帯』化した政党を、政治理念や基本政策で整理整頓して、一本背骨の通った、違いのわかる、有形者の選択肢たりうる『真っ当な政党』に造りかえていく。(中略)これが私の目指す『政界再編』なのです」
いや、まったくその通りである。
ただ、前のコラムにも書いたように、江田は集団的自衛権の行使について慎重と聞いていたので、それで行使に積極的な日本維新の会と連携できるか、と心配になる。
そこで、集団的自衛権について書かれた部分を読んでみると、どうやら頭から反対というわけでもなさそうだ。
たとえば、北朝鮮のミサイルが日本上空を飛んで米国に向けて発射された場合、日本が「撃ち落とすのは、個別的自衛権の行使だと考えられます」とある。わざわざ集団的自衛権を持ち出すまでもない、という立場である。
北朝鮮のミサイルが米艦船に命中したとき、並走していた日本艦船が反撃するかどうかについても「もしかしたら自衛隊の艦船を狙ったものかもしれない。そうなら即座に反撃する、それが現場の常識、感覚ではないか」とある。反撃OKなのだ。
さらに国連決議に基づく集団的安全保障については、憲法9条の法理とは別に「PKO活動の実態等を踏まえ(中略)個別具体的なケースを抽出し、検討すべきでしょう」と記している。たとえば、PKO(国連平和維持)活動の「駆けつけ警護」だ。これは安倍政権が設定した問題そのものである。
この本を読む限り、安倍政権が「集団的自衛権の範囲」と考えるケースを、江田は「個別的自衛権の拡大」で対応できると考えているようだ。どっちの範囲か、などという神学論争は学者にまかせておけばいい。政治にとって肝心なのは、具体的にどんな対応をするのか、である。国民の命を守るのは神学論争ではない。現実の具体策だ。
結いの党やみんなの党、日本維新の会、共産党などが政策を研ぎ澄ます作業に力を入れている中、民主党はどうするのか。東京都知事選での細川惨敗は民主党の明日を暗示している、と気持ちを引き締めて、政策論議を深めてほしい。
(文中敬称略)
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