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試練の原発輸出(上)
攻める韓ロ勢 リスク覚悟の受注競争
政府が成長戦略の一つに掲げるインフラ輸出。有力な柱である原子力発電プラントの輸出ビジネスが試練を迎えている。福島第1原発の事故で市場環境は一変。ロシアや韓国勢との競争も激しさを増す。官民連携で受注内定にこぎ着ける例も出始めたが、課題はなお山積みだ。
東芝に揺さぶり
昨年末、東芝の田中久雄社長は英国の政府高官と向き合った。英原発会社、ニュージェネレーション(ニュージェン)買収の最終交渉。終盤に斗山重工業など韓国勢が競合相手に急浮上、ニュージェン株主に金銭面で有利な条件をちらつかせ、東芝を揺さぶっていた。
「絶対に取りこぼせない案件だ」。田中社長は斗山を振り切るために自ら交渉に乗り出す。最後は原発政策に影響力のあるエネルギー・気候変動省の高官に直談判し、原発建設地の利用で英政府に100億円以上を支払う意向を表明。ようやく今年1月にニュージェン買収で合意、同社への原発納入にめどを付けた。
「ナポレオンが敗れたワーテルローの戦い以来の屈辱だ」。1月中旬、フランスの原発業界に衝撃が走った。仏アレバ・三菱重工業連合の受注が確実視されていたハンガリーの原発建設を、ロシアのロスアトムが逆転したのだ。決め手は資金支援や核燃料処理への協力だったとされる。
世界の原発市場では米ウエスチングハウス(WH)や米ゼネラル・エレクトリック(GE)、仏アレバが豊富な実績と技術力を持つ。東芝はWHを買収、日立製作所と三菱重工業はそれぞれGE、アレバと提携し必勝体制を築いたはずだったが、最近では苦戦が目立っている。
福島第1原発の事故以来、原発を巡る環境は大きく変わった。ドイツは「脱原発」へかじを切り、日本勢が強かった米国市場はシェールガスの増産で原発のコスト優位性が薄れ新設案件はほぼストップ。主戦場となった新興国では、韓ロ勢が破格の好条件を提示、激しく追い上げる。
経済産業省の香山弘文・原子力国際協力推進室長は「ロスアトムは政府が資金面で手厚く支援し、価格競争力が強い。韓国は電力公社が海外進出に積極的で、発電所建設から運営まで一体提案しやすい」と分析する。
原発1基の一般的な受注額は5000億円前後と巨額だが「利益率はせいぜい数%」(重電大手)。韓ロ勢との激しい受注競争で利益率はさらに下がらざるを得ない。
出口戦略が課題
日立の海外原発担当者は連日、世界の電力会社や金融機関などと連絡を取り合う。2012年に買収した英原発企業のホライズン・ニュークリア・パワーの株式を一部売却し、自らが少数株主となるためだ。魚住弘人・執行役常務は「出資企業の確保は、原発建設の許認可と同等に重要だ」と語る。
原発企業を傘下に持てば電気料収入が見込める一方、事故の際には巨額の補償リスクを負う。もともと日立や東芝は設備の納入が狙いで、原発運営を目指してはいない。奇策ともいえる原発企業買収の「出口戦略」が課題として横たわる。
日本国内で原発新設が見通せない中、海外に打って出なければ事業撤退が現実味を帯びてくる。一方で「国内の脱原発論の高まりは海外の商談に影響しかねない」(重電関係者)と苦悩の声も漏れる。世界の原発市場で、日本企業は採算悪化や事業リスクを覚悟したぎりぎりの戦いを強いられている。
[日経新聞2月13日朝刊P.11]
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