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[真相深層]日中「広報外交」激しく
靖国参拝 世界各地で場外戦、共感得られる「土俵」争う
昨年末の安倍晋三首相の靖国神社参拝を受け、世界で日本と中国の応酬が広がっている。中国は「侵略戦争の美化」と批判すれば第2次世界大戦の戦勝国の理解を得やすく、欧米諸国と共通の土俵に立つ好機とみる。人権や民主主義を尊重する国と協力する「価値観外交」を掲げて欧米と連携を強めてきた首相も対抗している。
「戦後秩序に挑戦」
中国政府は首相の靖国参拝を批判する宣伝戦を仕掛けるよう在外公館に指示した。大使らが現地紙に寄稿したりインタビューに応じたりしたのは約70カ国に及ぶ。欧米の主要国のほかアフリカや中南米にも広がる。カリブ海のグレナダ、地中海のキプロス、インド洋のコモロ、南太平洋のバヌアツなど小国も目立つ。
寄稿に共通するのは、首相の靖国参拝が「日本の軍国主義の復活」を意味し「第2次大戦の結果と戦後の国際秩序に挑戦している」と決めつける論法だ。そのうえで国際社会に安倍首相への警戒を呼びかけている。
中国がこれほどの規模で対日批判を展開するのは珍しい。「安倍政権を国際社会から孤立させるチャンス」。清華大の現代国際関係研究院の閻学通院長は外交戦略を指摘する。
中国外務省の公式文書の「靖国神社」には初出で必ず「第2次大戦のA級戦犯をまつる」という枕ことばが付く。第2次大戦に焦点を当てれば、米英仏ロなど戦勝国と同じ側に立ち、日米の結束を緩めることができる――。こんな戦略が垣間見える。
中国は沖縄県の尖閣諸島を巡る対立でも「日本が盗み取った」と強調。集団的自衛権の行使容認の動きも「軍国主義の復活」と歴史問題に結びつけようとする。
国際社会で相手を動かす要素では、軍事力や経済力のハードパワーが大きいが、価値観や文化などに共感を得ることで発言力を増すソフトパワーの重要性も増している。ソフトパワーの強化を狙う日本と中国が力を入れるのが、国と国の直接交渉とは別に、外国の世論に直接働き掛け、味方に付けるパブリック・ディプロマシー(広報外交)だ。
中国が長く対日関係の議論の土俵にしてきたのは歴史問題。首相はかつて著書で、対中外交では「相手のつくった土俵の上で、相手に気に入られる相撲をとって」きたと指摘している。中国が歴史問題を持ち出して圧力をかけ日本が譲歩してきた、というのが首相の認識だ。
首相は第1次政権から歴史問題の比重をできるだけ下げようとしてきた。2006年10月に訪中した際は当時の胡錦濤国家主席と「戦略的互恵関係」の構築で合意した。中国側も「日本は軍国主義化する」とみていた江沢民政権時代の対日観を修正。胡錦濤政権は戦後の日本の平和国家としての歩みを積極的に評価するようになった。
日本は「自由」強調
さらに首相が狙ったのは外交戦の土俵の転換だ。自由や民主主義、法の支配など「普遍的価値」は民主主義国家の結束を強める触媒になる。実際、中国が南シナ海への海洋進出や民主活動家への弾圧を強めるほど、中国の国際イメージは悪くなり、日本に引き寄せる作戦は奏功した。
だからこそ、靖国参拝で再び歴史問題に焦点が当たるのは痛い。「今回の中国の対日批判は度が過ぎている」(首相周辺)として、中国側の主張にきちんと反論するよう外務省に指示。外務省はすべての批判への反論を在外公館に命じ、約60カ国はすでに対応した。日本大使の寄稿は中国による海洋進出や軍備拡張に触れ、日本が戦後一貫して自由や民主主義、法の支配を擁護してきたと強調している。
習近平国家主席は「中華民族の偉大な復興」を掲げ、歴史問題を再び日中関係の中心に据え、先祖返りした。中国にとって歴史問題は過去のテーマではなく、現在の外交や内政に利用できるカードだ。来年は戦後70年の節目。中国は韓国やロシアも巻き込んだキャンペーンを狙うとみられ、外交戦は一段と熱を帯びるだろう。
(政治部 佐藤賢)
[日経新聞2月12日朝刊P.2]
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