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「未来の党」の惨劇を再現した都知事選の結末
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2014年02月12日00:56 ジャパン・ハンドラーズと合理的選択 Japanhandlers and Their Rational Choice
アルルの男・ヒロシです。今日は2月11日です。
都知事選では私は細川護煕氏に当選してほしいと思っていましたが、やはり組織票の壁にあっけなく敗れました。一人しか当選しない、小選挙区や都知事選挙選挙というのは冷酷な数字に支配視されているものであり、願望では動かないということを改めて確認しました。
私は細川氏を応援していましたが、それはインターネットでの応援程度で、実際に勝手連の事務所にも、選対の事務所にも一度も足を運ばなかった。その意味では外野応援席にいたわけです。
ただ、生活の党の関係者から、年末に「細川が都知事選に出るかもしれない」ということを聞いていて、その情報をもとに国内政治、国際政治の情報を集めながら、シミュレーションをしていました。
そもそも、最初は私は細川が出なければ、「舛添が無難に圧勝するだろうが、まだ舛添が出馬表明をしていないのでなんとも言えない」と思っていたほどなので、自公が支援し、しかも民主党まで載って、共産党など左派系野党との事実上の一騎打ちとなるとの構図を描いていました。
ところが、1月14日に細川が出馬するというので、驚いたあげく、その背景には「脱原発」を表看板にした、実際は安倍政権の外交政策への批判を五輪開催決定を受けた国際都市・東京を舞台に展開するのだろうと見たわけです。
この見立ては、メルパルクホールで開催された細川の支援集会に、表に立って支援していた湯川れい子や菅原文太のような著名人だけではなく、元国連難民高等 弁務官の緒方貞子女史がやってきていたことを確認して、だいたいあたっていると思いました。細川がエネルギー政策と同時に力を入れて演説していたのは、周辺 諸国との関係についてで、靖国神社参拝を巡っての安倍外交を批判していることはあきらかでした。
そのような大きな構図があったことは確かですが、選挙そのもの急ごしらえの選対の脆さが見事に負の方向に働いたといえます。以下に、選対の脆さが生み出した事柄を列挙します。あくまでこれは外部からウォッチしていた限りで気づいたことです。
(1)選対に鳩山邦夫系人脈である上杉・馬渡の二人の不安要因が加わったこと
(2)勝手連との連携の弱さが選挙戦途中まで解消されず、最後まで不完全燃焼に終わったこと
(3)細川候補自身の演説の内容に深みがあまりなかったこと
(4)脱原発のロードマップがあまりにも示されなかったこと
(5)説明責任の問題。国家戦略特区についての見解を明確することが最後まで後手に回ったこと
(6)対抗馬、特に共産党推薦の宇都宮健児氏らの支持者との感情的な対立
選挙といえば、選対に敵対陣営と何らかのつながりのあるの人間が入り込むことは日常茶飯事です。今回、細川選対ではそれが元鳩山邦夫秘書であった、上杉隆氏と馬渡龍二氏の二人でした。
今回の細川選対は、小泉Twitterアカウントの設置をめぐるトラブルが起きましたが、なりすまし疑惑も出たこのアカウント騒動はマスコミの格好の餌食になり面白おかしく書かれました。
しかも、二人の鳩山邦夫元秘書は、選挙戦の途中で元雇用主である鳩山邦夫にフェイスブック上で批判される始末で、これでは二人は一体何だったのかということになってしまいました。この二人が辞任したあと、選対は旧日本新党の人脈で仕切られることになったと報道されました。しょっぱなから候補者とは関係のないところでの批判が起きてしまい、出鼻をくじかれたわけです。
その結果、生活の党が主体で構成されていた勝手連と、選対の間の連絡が悪くなったようです。「ほうれんそう」がうまくいっていたのか疑問が残ります。ただ、この問題も途中で改善されたので致命的な問題ではなかったでしょう。選挙戦終盤ではツイキャスや公式サイトのコンテンツは充実していました。
ただ、選挙直前、直後のトラブルがまずメディアで取り上げられるという事自体、支持者にとって見れば、2012年衆院選時に同じく脱原発を旗印にして選挙 を行った「日本未来の党」の比例名簿の提出遅れの問題を彷彿とさせるものがありました。この未来の党も選挙前に複数の政党が合流してできたことで指揮系統 がぐちゃぐちゃになったことが災いして惨敗しました。
さらに、選対の問題だけではなく、細川候補自身も政策の整理整頓があまりにも不十分すぎた ということが反省材料であると思います。そもそも私が細川出馬の可能性を聞いたのは去年の末である。出馬会見は1月の下旬だから、ほぼ1ヶ月あったわけです。
私は細川候補はその間、1ヶ月かけてエネルギー政策のマニフェストを含めた都政改革案を出すのかと思っていたが、演説を聞いていくうちに、理念の面では整理されているもの の、具体的な話がほとんど出てこない事に気づきました。ディテール不足だなあと思いました。
脱成長至上社会、その上でのエネルギー政策の大転換を東京都から訴えていくという枠組みは非常に良い と思いましたが、そのために都ができることを5つくらいは例示できるようにしておくべきでした。単に「東京都エネルギー戦略会議」を作る、というだけでは、一般有権者 には全く説得力がなかった。
東京都の政策として、例えば、太陽光パネルとか蓄電池への助成金をどうするとか、そういう具体的な予算の話を出来なかっ たのが痛い。こういう時は大雑把な数字であっても、一応は用意しておくべきものだ。その点で言うと、舛添と宇都宮のエネルギー政策はある程度の具体性が ありました。
また細川氏の演説が日によって出来に非常なムラがあり、よくも悪くも安定していた舛添、宇都宮、田母神の3者とことなり、熱烈な支持者以外の有権者には頼りなさを抱かせる部分があったことは否定出来ないところです。
また、脱原発のロードマップも示せなかった。政党の支援を公式には受けていないので、過去に未来の党や生活の党や民主党が出した脱原発の政策を踏まえることができなかっ たのかもしれないが、ひとつの目安として過去の脱原発選挙で各政党が出した政策を踏まえたタイムスケジュールを示せなかったのは非常に痛い。
ま た、脱原発について、細川が「即ゼロ」を掲げたのも、やはり過去の日本未来の党の戦略ミスをそのまま受け継いでいると感じました。いま「ゼロ」なのはたしかに そうですが、それだけで即ゼロが可能だという説得にはならないでしょう。
中期的には脱原発の経済影響は均してみることができても、短期的には田母神俊雄が指摘するように、天然ガスや原油の輸入による貿易赤字の垂れ流 し問題についての目配りが足りなかった。資源代がかさんでいるのは円安の影響もあるが、それだけではないからです。
ここで、元経産官僚の古賀茂明のような非公式ブレーンがついていながら細川陣営がその辺の対抗馬やマスコミからの批判を踏まえた演説を練ることができなかったのはなぜなのだろうか、と思わずに入られません。
さらに、対抗馬からの批判という点でいえば、街頭演説に小泉純一郎を起用したことで当然投げかけられる批判に対する対策のまずさがあげられます。
特に細川が、国家戦略特区を活用すると出馬会見で、発言したことによって、反安倍、反竹中、反小泉の論客や、宇都宮を推薦した共産党からの理論的な疑問が投げかけられるとは予測しなかったのでしょうか。国家戦略特区 については、解雇特区などの問題があるからです。幅広いリベラルの支持を得るにはこの点を明確にしないで済ませることはできなかったでしょう。
この点について、最初、細川候補は「特区についてはいいものについては採用する」と述べただけでした。それ以降、ずっと、リベラル派の有権者の関心事である「行き過ぎた規制緩和、グローバリズム」への懸念を解消するような釈明をしなかった。
これについては、候補者討論会を実施しなかったことが決定的な悪影響を与えていると考えられます。おそらく、選対の判断で、「殿の答弁能力」を露呈させないようにすると いう配慮があったのかもしれませんが、逆に反対勢力への攻撃材料を与えるだけでした。
結局、特区の雇用規制緩和については選挙戦終盤でTPPとともにどちら かと言えばネガティブな考えであるという表明をしましたが、時すでに遅し。
この説明の遅れは、私に去年の参院選におけるある民主党候補のいわゆる「20ミリシーベルト問題」に対する説明の遅れの手際の悪さを連想させました。
この問題は、福島原発事故発生後の、学校での放射能許容量を20ミリシーベルトに設定している件に関連し、この決定をしたのが当時の元文部科学副大臣だったその候補なのではないかとされたという問題です。
参院選のさなか、この決定をしたのが誰かということが問題になりました。細川の特区発言と同様に、参院選のさなかに反対陣営から焦点イシュー化されてしまい、ネット上での批判合戦になったわけです。
この問題に対する対処の仕方をこの候補の選対がどのように行うのか、私は非常に注目していました。なぜならばこのような対抗陣営からの批判をうまく交わして自らの政策を訴えることも選挙では重要になるからです。一番いいのは相手が批判していることを候補者自らが十分な論拠を示して否定することです。
ところが、この候補は釈明をしないばかりか、結局文章だけ発表して問題の収束を図ろうとしたのでした。こういう問題は候補者自らの言葉で記者会見をして素直に説明すれば、大半の有権者の疑念は解消されるものです。
ところが、それをしないで、「放射能について過度に不安を煽る人がいる」という批判だけ を述べるネット動画会見をしてしまった。更に続いて、TPP賛成の立場を表明するというネット会見をした。結果、この候補は、肝心な説明をしないで相手候補やその支持者を語気を強めて批判しているのだ、という風に更にイメージが悪化してしまった。典型的なスピンコントロールの失敗例です。(http://www.youtube.com /watch?v=lI0XnIR4M7Y)
この一件と同じように、細川候補も、説明不足という点を露呈しました。その間、彼に対する疑心暗鬼は広がっていきました。きちんとしたネット選対 が存在すれば、こんなにひどい事にはならなかったでしょう。
本来ならば、ネット上で「国家戦略特区に対する候補者の発言には曖昧さがあるという」批判があることをすぐに掴んだ上で、これを街頭演説や記者会見、討論会で解消につとめるべきでした。しかし、この件は、最後の最後まで後手後手に回ってしまった。その結果、情報を持たないままの状態に置かれた細川支持者と、格好の批判材 料を得た宇都宮支持者の間で主にインターネット上で場外乱闘が起きたわけです。
ネット上の場外乱闘ははっきり言って実際の得票には影響を与えなかった様 に思いますが、それでも細川・宇都宮という二人の脱原発候補の支持者の間にあとに遺恨が残る亀裂を産んだと思う。その副産物として、宇都宮を支援していた共産党が選挙を利用しての党勢拡大戦略をしていた、という全く別次元の問題などが明るみなったわけですが。
以上の主に6点の問題があったために、選挙として途中で空中分解しなかったのが不思議ほどの選挙活動になったのが細川選対です。
結果としては、民主党の組織である連合の支持を得られず、無党派にも思った以上に浸透できず、共産党推薦の宇都宮健児に敗北するという結果になってしまいました。
それでも前回の都知事選に比べて細川・宇都宮を合わせて、脱原発票が180万票で倍増したとは言えるのでしょうが、結果的には舛添には負けたわけであり、小泉純一郎の話術だけに依存した 選挙の限界を見せました。これで小泉自身の神話も終わったでしょう。
結局、小泉はあの2005年の郵政選挙では、組織や公明党の支持があったからこそ大勝できたのであり、今回のように、アメリカの後押しもなく、組織もない風だけの選挙では、100万票もはじき出せなかった。選挙というものの冷酷さを浮き彫りにしました。
以上のように総括してきましたが、結局、脱原発を争点にした選挙では「負け続き」なのです。去年の参院選で局地的に脱原発(どちらかといえば脱被曝)を訴えた山本太郎のような勝利をおさめてはいるものの、あくまで例外的でしょう。
そこで私の結論としては、やはり地方自治体で脱原発を問うのは選挙ではなく、住民投票であるべきである、ということです。
同時に、脱原発依存をしやすくするために立法への働きかけを行うべきです。それには超党派の原発ゼロの会や、脱原発ロビーの「緑茶会」のような団体を通じて、現職の議員らに影響力を与えていくしかない、ということです。
選挙で脱原発だけを訴えるのはもうやめにしてほしい。
以上、非常に雑駁であはありますが都知事選の総評、総括を行いました。
追加として、以下に産經新聞の政治部長の総括を載せたいと思います。原発推進である産経ですが、この分析に限っては、非常に的を得ていると思います。脱原発派の抱える問題を網羅していると思うので以下に貼り付けます。
(貼り付け開始)
■共感呼ばなかった「脱原発」 都知事選 政治部長・有元隆志
産經新聞(2014年2月10日)
「小泉神話」が崩壊した。平成17年の郵政民営化選挙と同様に、小泉純一郎元首相は細川護煕元首相を担いで都知事選も「原発ゼロ」をシングルイシューに 掲げ大勝を期した。しかし、地に足のついていないスローガンには切実感もなく、当然都民の共感も呼ばなかった。「政治の師匠」との対決を制した安倍晋三首 相は原発再稼働に向け一歩前進した。
産経新聞が実施した出口調査では「原発・エネルギー問題」が「最大の争点」とする回答は3位にとどまり、福祉や雇用など、より生活に密着した問題の方が都民の関心を集めた。小泉氏は遊説で原発問題のみを話し都政全般への目配りに欠けた。
選挙期間中に行った世論調査では原発を争点とすることを肯定する人が6割を超えたものの、小泉氏は代替エネルギー問題について「私一人で案を出せるはず がない」と逃げ続けた。細川氏も「専門家による『東京エネルギー戦略会議』を立ち上げる」と述べるにとどまった。都民が判断を下すにはあまりに具体性に欠 けた。
それでも小泉氏が細川氏支持を表明した1月14日当初、細川氏有利と判断した与野党幹部は少なからずいた。ある閣僚経験者は首相に電話し「官邸が前面に 出ないほうがいい」と進言した。小泉氏の勘の鋭さをよく知る首相が流されてもおかしくなかったが14日の小泉氏の会見映像をみて首相は周囲に「全然たいし たことない」ともらした。往年の迫力はないことを早々に見切ったようだ。
舛添要一元厚生労働相擁立に積極的ではなかった首相だが、支持を明言し、街頭演説にも立った。国会答弁では「海外からの化石燃料への依存度が高くなっている現実を踏まえると『原発はもうやめる』というわけにはいかない」などと、原発の必要性を強調した。
都知事選で敗北すれば、首相にとっては1月の沖縄県名護市長選に続く痛手となった。衆参両院で多数を持っており政権基盤が直ちに揺らぐことはないものの、今後の政局に影響が出る可能性もあった。それだけに今回の勝利は首相にとって意味は大きい。
細川氏が勝利すれば突如再演した「小泉劇場」はロングラン確実とみえたが、結果は首相の原発再稼働へのシナリオを後押しすることとなった。もちろん再稼 働には慎重さが求められることは首相も十分承知だ。昨年末、首相は周辺に「今年の最大の課題は再稼働」と明言している。
小泉氏周辺は、「劇場はしばし休演」とするが、再び舞台に上げないためにも、首相には再稼働を着実に進めて電力の安定供給を図り、国民の理解を深めていく責務があることはいうまでもない。
(貼り付け終わり)
言うなれば、脱原発派は上の産經新聞の分析で批判されている弱さを克服していく必要がある、ということなのです。そして、候補になろうとする人は、そのためには普段から政策を練り上げていくために街頭活動や自分の勉強をしなければならないということです。
今回のような都知事選は違いますが、他の国政選挙では候補者が日頃からどれだけ政策の勉強をしているか、それをどのくらいの頻度で一般に向けて街頭で訴えているのか、が問われるわけです。
今回の細川陣営は、そのようなプロセスを経ず、いわば選挙前の準備運動なしでいきなり走らされたうようなものでした。
そして、あの日本未来の党の選挙にもそのような面がありました。 選挙で勝つためにに重要なのは選挙期間だけではないのです。
いずれにせよ、見事なほどに「日本未来の党」の惨劇を再現した都知事選であったというのが結論です。
都政はいずれにせよ公明党の支持を取り付けた舛添要一の手に委ねられました。ということは国政で安倍政権が公明党を切りづらくなったことでもあります。自民党のリベラル派と公明党が、かつての宏池会のような反保守勢力を形作れるか、ということに焦点は向かうでしょう。
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