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(回答先: 永続敗戦論からの展望 白井 聡 2013年9月20日 「オルタ」 投稿者 五月晴郎 日時 2014 年 2 月 11 日 15:11:46)
http://sp.mainichi.jp/m/f/elc/news.html?cid=20140204dde012010002000c&inb=mo
-選挙-
特集ワイド:東京、そして/中 社会思想家・白井聡さん
◇「現実の否認」を絶て−−白井聡さん(36)
白いストライプが入った鮮やかな青のスーツに、黒の山高帽。まるで映画のスクリーンから飛び出たようなしゃれたいでたちだ。「服飾系の学部に個性的な服の学生が多いから、合わせてるんです」。社会思想家で、文化学園大助教の白井聡さん(36)は、そう言って照れくさそうにほほ笑んだ。それにしても、この人はこんな格好でデモに通っていたのだろうか。
官邸前などでの脱原発のデモにたびたび参加し、数万人に上った群衆に交じって白井さんは「原発反対!」と叫んできた。そして、ふと気付いた。「東京にも放射能は降り注ぎ、危険にさらされたのに、なぜこんなに参加者が少ないのだろう。首都圏人口が3000万人だから何十、何百万人が来てもおかしくないはずだ」
昨年中国・上海で開かれた政治思想関係の国際学会では、韓国人学者にこう聞かれた。「日本のデモはなんであんなに小規模なんだ? もし韓国で同じ事故があったら、何十万人規模のデモになる。そうすれば政権なんて吹っ飛んでしまうよ」。「その通りだ」としか言えなかった。
怒りの声を上げる国民が少ないのはなぜか。「私は『現実の否認』という日本人のメンタリティーが根底にあると考えています。しかもこれは今に始まったわけではない。戦時中も戦後もそうでした」
「現実の否認」って、何なんだ?
政治思想を研究してきた白井さんは、昨年3月「永続敗戦論 戦後日本の核心」(太田出版)を出した。「戦後日本は敗戦を終戦と呼び替えることで敗北の事実をなかったこと、つまり否認した。さらに東西冷戦下で米国の保護下にあり、経済大国化に成功したため、敗戦の責任を考えずに済んだ」。この構造を「永続敗戦」と名付けた。同著は論壇で大きな反響を呼んだ。
執筆の動機は福島第1原発事故だ。事故発生後「この国の政府は、国民の生命と安全を守ることに関心がない」と感じた。緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)のデータを米軍に流しておきながら、国民には当初公開しなかった。線量が高い地域に多くの人々が避難し、被ばくした。100億円以上を費やした装備がこんな使われ方をされたのに誰も責任を取っていない。
「人命軽視は戦時中の日本と全く同じです。戦争末期は国体の護持(つまり天皇制の維持)にこだわり過ぎて、早期の戦争終結に動かず犠牲者を増やした」。1945年7月のポツダム宣言をすぐに受け入れず、原爆が投下され、膨大な人命が失われた。
戦中戦後の政府と原発事故収束に手をこまねく現代の政府は、「敗戦」や「原発事故」という重大な現実を全力でごまかし、否認する点で全く同じだった。そう気づいて「はらわたが煮えくり返るくらい」の怒りがこみ上げた。
「東京五輪招致は『現実の否認』の象徴です」。昨年9月、国際オリンピック委員会(IOC)総会で、安倍晋三首相は「汚染水の影響は福島第1原発の港湾内で完全にブロックされている」「状況はコントロールされている」と堂々と宣言した。しかし汚染水の流出は止まっておらず、制御されているとは言い難い。「権力側は原発事故の現実から今も目をそらしているとしか思えない」と言い切る。
しかし、この人の指摘は、政府と権力者による「現実の否認」にとどまらない。
「五輪招致は、都合の悪い現実を否認したいという国民の欲望が、政策として結晶されたものだと思います。原発事故の状態を冷静に考えれば、五輪招致にかまけている場合ではない、という結論に至るのではないでしょうか」
「原発事故は収束した」「被害はたいしたことない」「事故はもう起こらない」……。そんな希望的観測に私たちは逃げていないか。
白井さんと会った文化学園大は都庁からほど近いオフィス街にある。20階にあるギャラリーの窓からは、そびえ立つ双頭の都庁ビルが見えた。知事選は中盤に入り、この新宿でも候補者たちが日々主張を訴えている。
今回の都知事選では複数の候補者が脱原発を争点に掲げる。「原発政策は国政マターだ」と争点化をけん制する声が少なくないが、白井さんは「原発事故以降の国政選挙で主な争点にされなかったから、今回議論されるのは自然なことです」と言ってのける。2012年の衆院総選挙では民主党政権の是非が問われた。昨年の参院選では安倍内閣への信任の有無が焦点で「自民党は原発を再稼働したいとの意思が透けて見えたし、民主党も完全に脱原発を掲げていなかった」と解説する。
「『原発推進か脱原発かの二項対立は意味がない』との主張がありますが、私に言わせればこんな主張をする人は大ばか野郎です。二項対立でしか答えのでないケースもある。それがまさに原発。推進か止めるかの二者択一しかない。都政に多くの課題があるのに原発のワンイシューに絞っていいのかという意見もあるが、原発問題を他と同列に扱うほうがおかしい。原発は国民生活に直結するだけではなく、核兵器への転用の可能性がある。まさに国家の中核にかかわる大問題で、すべてのイシューに関連している」
言葉に力をこめた。
「このままでは『恥ずかしい国』へまっしぐらですよ」。冷戦は終わったのに、安倍政権は、安全保障面で米国依存を強めている。しかし現実は、靖国神社参拝で米国に突き放され、領土問題を抱える中韓とは摩擦が拡大している。
「安倍首相がダボス会議で『英独は大きな経済関係にあったが、第一次世界大戦に至った』と発言し、騒ぎになったでしょう。政府は『誤訳だ』と釈明したけれど、欧州メディアは『日本は軍事衝突の準備をしている』と受け止めた。ならば、中国が同じ『誤解』をしても仕方がない。今後、偶発的に日中が軍事衝突する可能性は十分ある」と、深いため息をつく。
白井さんは都民ではなく、都知事選の投票権はない。しかし、その言葉はますます熱くなっていった。「原発を推進してきた世代を『今さら脱原発なんて無責任過ぎる』と批判したくなる気持ちはよくわかります。でも私たちは将来を担う世代だから、『現実の否認』を絶たねばなりません。それには、福島の原発事故について、私たち個人に刑法で問われるような責任はないけれど、他ならぬ自分たちが起こしたんだ、という当事者意識を持つべきなんです」
この人の怒りは、未来への責任感からきている。取材後、「大ばか野郎だ」の一言が、頭の中で何度も響いていた。【江畑佳明】
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