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2014年02月11日
田母神候補が2,30万票は取るかも?と思っていた筆者にとっても、61万票は目が点になる選挙結果だった。田母神候補の主義主張の」中には、歴史事実認識において、そこそこ“本当は、そういう側面もあった”と云う印象を筆者も抱いている。対極的立場の孫崎亨氏の著書「戦後史の正体」の中にも、田母神候補と似た歴史認識の部分がある。このような現象をみても判るように、歴史が作られていく過程や、その結果生まれる様々な現実の事象には、複雑な原因が絡み合っているわけで、一面的解釈で済むはずはない。
宇都宮候補(日本共産党、社民党など推薦)の持つ組織票グループが98万票に対して、無組織で61万票なのだから、誰が考えても、今回の都知事選で新たなムーブメントの萌芽があったと捉えることは間違いではない。ただ、この現象が大きなムーブメントになる可能性は少ないだろうと筆者は考えている。2000年頃から抬頭したネオナチに類似する部分が多い現象だが、概ね10年程度の賞味期限で下火になる。しかし、このような社会現象がわが国でも起きたことは、興味深い。まぁ「オキュパイ東京」の右向き変形バージョンで、1%と99%への怒りの表現の場だと考えられる。
多くの場合、この現象が起きる社会的構造には特長がある。「寄る辺なき人々」の存在が、一定の社会現象を引き起こすレベルで社会に存在している事実を証明していることになる。このような“寄る辺なき人種層”の人々は、日常的な不安定な生活を通して、鬱屈と不満が醸成される傾向があり、「感情の劣化と徳の劣化」が、著しい形として表現される。嫌韓、嫌中、ヘイト・スピーチのような社会現象も生み出す。このような国民層においては、ほんの些細な感情のフックに釣り上げられ、「寄る辺」を見出す傾向があり、幻ではあるが、一時の「寄る辺」と「アイデンティティ」の確保に寄与する。簡単に言ってしまえば、「1%と99%問題」の変形バージョンであるが、海外メディアは、この田母神現象に強く興味を持つようである。WSJは以下のように報じている。
≪ 超国家主義的思想の田母神氏、都知事選で大健闘
東京都知事選は日本で超国家主義的な政治が台頭する前触れになるのだろうか。
元航空幕僚長の田母神俊雄氏(65)はそう期待している。極めてナショナリスト的な見解で知られる田母神氏は9日投開票の都知事選で驚くほど広い支持を集めた。自衛隊の幹部として培った能力で都民の「命と財産を守る」とうたい、16人の候補の中で4番目の得票数を獲得した。
中国・韓国から大手マスコミ、自由貿易協定などをターゲットに急激に勢いを増す愛国主義者のグループを主導する田母神氏は、約61万1000票を獲得した。安倍晋三首相の後押しを受けて当選した舛添要一氏と反原発を訴えて選挙戦を展開した知名度の高い候補者2人に次ぐ得票数だ。桝添氏の得票数は 210万票で、反原発を訴えた候補2人のそれぞれの得票数は100万票に満たなかった。
田母神氏は9日夜、結果を受けて記者団に対し「組織がないなかで一定の票が入ったことは成果があった」と述べ、「これを機会に保守の政党を誕生させるべく、政治活動を展開していきたい」と語った。
こわもての田母神氏は2008年、大東亜戦争は侵略戦争ではないとする論文を発表し、航空自衛隊幕僚長を解任された。
田母神氏に集まった支持の多くは若者からのもののようだ。選挙陣営によるソーシャルメディアの広範な活用が奏功したとみられる。朝日新聞が行った出口調査によると、20代の24%が田母神氏に投票したと回答しており、この年齢層で36%と最も多くの票を獲得した桝添氏に次ぐ得票率だった。30代と40代の田母神氏の得票率はそれぞれ17%と14%だった。
この出口調査の結果は、一部の政治家や政治学者の見方とも一致している。彼らは、領有権や第二次大戦の歴史的解釈をめぐる中韓との争いが長期化し、ますます熱を帯びる中で日本でナショナリスト的感情が高まりつつあるように見えるとし、その背景に若い世代の存在があると指摘している。
田母神氏は、保守派の議員や有識者、著名人らとの密接な人脈を活用して支援を取りつけ、創造的で機能的な選挙戦を展開した。 陣営は若い有権者に照準を合わせ、ツイッターを積極的に活用。田母神氏の動向を豊富な写真や動画と共に逐一投稿した。投稿の多くは「田母神ガール ズ」と呼ばれる魅力的な若い女性スタッフの一団によって行われた。また、自称「愛国ラッパーshow-k」さんが「HEYLAS 田母神Remix」という曲を作り、その動画が田母神氏のツイッターアカウントで繰り返し投稿された。その歌詞の一節は次のようなものだ。
「危険レッテルばりを軽くKO!!いなし堂々主張。右右もっと右曲がれ 君気にちょっとなってきたね。(左は)汚ねぇ事ばっかだなだから何だ!?バッカだな」
日本の主要報道機関は田母神氏を非主流派の候補者と軽くいなし、同氏の選挙活動にほとんど注意を払わなかった。田母神氏は、安倍首相の金看板政策で ある「アベノミクス」に倣い、「タモガミクス」と称するポピュリスト的経済政策を掲げて選挙を戦った。9日の選挙での田母神氏の健闘については、日本の主要紙も10日の朝刊でわずか数行しか触れなかった。
マサチューセッツ工科大学(MIT)国際研究センターの研究員で日本政治を専門とするマイケル・クーチェック氏は「ニュースメディアは彼に挑むことをせず、田母神氏の経歴や同氏の支持者の排外主義的な見方について有権者に注意喚起することを尻込みした」と述べた。
日本の保守派の著名政治家も田母神氏の応援に駆けつけた。その1人が2年前、日中で領有権争いが生じている東シナ海の尖閣諸島(中国名:釣魚島)購 入を試み、二国間を急速に緊張化させた石原慎太郎元都知事だ。石原氏は「東京の命を田母神さんに預けたい」と都民に訴えかけた。田母神氏の街頭演説にたびたび訪れたもう1人の人物が、神風特攻隊をテーマにした小説「永遠の0(ゼロ)」の作者で最近NHK経営委員に任命された百田尚樹氏だ。百田氏は応援演説で米軍による1945年の原爆投下や東京大空襲を「大虐殺」と批判し、米国主導の第二次大戦後の東京裁判をそうした残虐行為をごまかすための手段だったと発言した。
こうした見解は田母神氏が08年に民間企業主催の懸賞論文で提示したものと類似している。自衛隊でのキャリア終わらせることになったこの論文で田母神氏は、日本が第二次大戦で果たした役割について自らの考えを長々と論じ、日本軍の行為を軽く扱い、日本を自ら望まない戦争へと追い込んだのは米国と蒋介石率いる中国政府だと非難した。 田母神氏は論文で次のように述べている。
「日本が中国大陸や朝鮮半島を侵略したために、遂に日米戦争に突入し3百万人もの犠牲者を出して敗戦を迎えることになった、日本は取り返しの付かな い過ちを犯したという人がいる。しかしこれも今では、日本を戦争に引きずり込むために、アメリカによって慎重に仕掛けられた罠であったことが判明している」
原文(英語):Ultranationalist Candidate Gets Strong Support in Tokyo Vote http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2014/02/10/ultranationalist-candidate-gets-strong-support-in-tokyo-vote/?mod=wsj_nview_latest/
≫(WSJ電子版)
*参考 ≪ ネオナチのイデオロギーは、外国人排斥・同性愛嫌悪・共産党敵対が柱である。教会などによる地域社会への帰属感を持たず、旧ナチスシンパを標榜することをアイデンティティとし反社会的行動を行っている。極左的アナーキズム(無政府主義的)としての傾向から内部に特定の指導者を立てることができないため、同じ国粋主義であっても旧ナチスやイスラム圏の原理主義運動のような組織性を持てず、計画的な行動も取れないケースが散見される。 彼らは信奉するナチスに習う形でナチズムを己の思想として掲げ、ファシズム的な強権政治、民族主義、人種差別(白人至上主義)、外国人追放など排他的な主張を行っている。しかしながら旧ナチスがアーリア人を至上とするアーリアン学説などに代表される白色人種、特に北方人種の優越論を支持し、民族面でもゲルマン系民族を特別視して他民族を見下すなど、発祥国ドイツを中心とした思想として構築されていた(ただし人種に関しては当時からドイツ国民の人種構成の実態と矛盾していた)のに対し、ネオナチはそうした「ドイツ中心主義」から脱して国際色を深めている点で大きく異なる。 ≫(ウィキ参照)
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