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http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014020990070456.html
◆論説主幹・山田哲夫
東京都知事選は9日、投開票される。日本は原発と暮らしの政策で岐路に立ち、結果は安倍政権の姿勢にも影響する。主要4候補者をはじめ計16人が立候補し、17日間の舌戦を繰り広げた。
東日本大震災と福島原発事故からまもなく三年で迎えた東京都知事選挙。多くの争点が挙げられたなかで未来を決めるこの一票には原発の是非判断が避けられません。
全国に革新自治体を誕生させた一九六七〜七九年の美濃部亮吉知事や無党派層を有権者の主役にした九五年の青島幸男知事の例をあげるまでもなく都知事選は時代を先取りする選挙でした。今回も時代の節目、文明や歴史の行方を左右する性格を帯びた選挙です。
甚大な被害の大震災と収束おぼつかない福島原発事故が問いかけたのは、飽くなき成長とエネルギー多消費型の経済社会をなお追い求めるのかどうかでした。そのシンボルの原発は安全が神話だったばかりでなく、高レベル放射性廃棄物という危険極まりない有毒物質を生み、何千何万年にもわたって人類を危険にさらす、そんな近代科学技術の底知れぬ暗部も明るみに出ました。
福島から電力を供給された都民はこの経済社会の一方的な受益者でした。安倍晋三首相は経済成長最優先の政策を選択、安価な電力の安定供給が不可欠として原発再稼働に前向きで「簡単に原発をやめるわけにはいかない」とも述べました。
経済は大切でしょう。雇用や賃金も切実な問題です。しかし、地震国の日本で老朽原発の過酷事故のリスクに目をつぶっていられるものでしょうか。捨て場所が見つからない核廃棄物の最終処分を未来世代に押しつけていいものかどうか。
もちろん脱原発といってもクリーンエネルギー開発の確かな道筋が用意されているわけではありません。ライフスタイル変革の覚悟を迫られるかもしれません。
ただ、事故から三年の今も福島の十四万人が避難生活を送り、その復興の前途多難な現実を見据えるとき、現状維持路線はあまりにも安易です。倫理的にも許されないでしょう。受益する首都圏と困難を背負う福島−これまでの経済社会体制は、やはり見直されなければならないでしょう。
この都知事選では有権者の一人一人が原発への態度と都市の未来図を一票に込めて責任を果たす−そう願わずにはいられません。一千万有権者の選択が日本を動かさないはずがないからです。
(東京新聞)
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