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集団的自衛権、首相「行使まで3段階」
まず憲法解釈の変更 環境整備へ手順明示
安倍晋三首相は5日の参院予算委員会で、集団的自衛権の行使に向けて3段階の手続きを踏む必要があるとの認識を表明した。憲法改正ではなくまず憲法解釈の変更により、早期に行使容認の環境をつくる考えを強調。そのうえで、実際の行使には関連法の整備と、個別案件ごとの政策判断が必要になると説明した。手順を明示することで、行使容認に慎重な公明党や世論の理解を得る狙いがある。
「いま、ないことによるデメリットに直面している」。首相は5日の参院予算委で、集団的自衛権の行使を容認する必要性をこう強調した。
首相が想定するのは、例えば日本近海の公海上で航行する米艦船が攻撃を受けたとき、自衛艦が近くにいても反撃できないケース。北朝鮮がグアムに向けて弾道ミサイルを発射しても、日本のイージス艦は迎撃できない。こうした事態になれば「日米同盟は終わる」と再三、危機感を表明してきた。
首相は憲法解釈の変更により集団的自衛権の行使容認を急ぎたい考えだ。自民党は集団的自衛権の行使容認を含めた憲法9条改正を公約で掲げているが、改憲は衆参各院の総議員の3分の2以上の賛成による発議などが必要でハードルが高い。首相は政府の有識者会議が4月にも提示する報告書を踏まえ、今夏にも解釈変更の閣議決定をめざす。
首相が示した2つ目のステップは、関連法の整備だ。自衛隊の出動要件などを定めた自衛隊法や、日本が直接、武力攻撃を受けた場合に備える武力攻撃事態対処法が主な対象となりそうだ。いずれも外部からの日本への攻撃を想定しており、日本が直接攻撃を受けていない状況で、自衛隊が対処できる規定を加える必要がある。
朝鮮半島が戦闘状態になった場合など、日本周辺有事での米軍への後方支援を定めた周辺事態法も見直し候補だ。集団的自衛権を行使して日米が共同対処することになれば、自衛隊の役割はこれまでの補給や輸送、医療といった同法で定める米軍支援の内容より広がる可能性がある。首相は今秋の臨時国会にも関連法案を提出したい考えだ。
憲法と法律の問題を解決し、集団的自衛権に基づいた自衛隊の運用が可能になれば、最終ステップは個別案件ごとの政策判断となる。例えば、日本近海で米艦船が攻撃を受ければ、集団的自衛権を行使して反撃する可能性があるが、同じケースでも遠海の場合は行使を見送る判断もあり得る。自衛隊の活動にどう歯止めを設けるかや、政策判断する際の基準などが課題となる。
首相は集団的自衛権の行使容認による日米同盟強化で抑止力が高まる点を重視する。5日の参院予算委では「集団的自衛権(の行使)をやらなければならないのではない。(行使できる)権利として持つことで政策的な選択肢を持つ」と強調した。
▼集団的自衛権 同盟国など自国と密接な関係にある国が攻撃を受けた場合、自国への攻撃と見なして実力で阻止する権利。国連憲章は主権国の固有の権利として認める。歴代政権は、自国への攻撃に対する個別的自衛権については自衛のための必要最小限度であれば許容されるが、集団的自衛権は必要最小限度を超え、行使できないと憲法解釈してきた。行使容認論の背景には、中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発などアジア・太平洋地域の安全保障環境が厳しさを増し、日米同盟の重要性が高まっていることがある。
[日経新聞2月6日朝刊P.4]
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