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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140203-00000006-pseven-soci
週刊ポスト2014年2月14日号
通常国会が始まり、安倍晋三首相は開会初日の1月24日に衆参両院の本会議で施政方針演説をした。
演説をみると、マスコミで「安倍政権の大問題」と騒がれるテーマはどう扱われていたか。たとえば、集団的自衛権や憲法改正問題は拍子抜けと言えるほどあっさりしていた。具体的には、こう書かれていた。
「集団的自衛権や集団安全保障などについては『安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会』の報告を踏まえ、対応を検討してまいります」
憲法改正に至っては「責任野党と政策協議をする」と語ったうえで「そうした努力を積み重ねることで定数削減を含む選挙制度改革も国会改革も、そして憲法改正も必ずや前に進んで行くことができると信じております」と述べたにすぎない。
集団的自衛権の見直しや憲法改正に反対する勢力からみれば、これは「争点隠し」と映っただろう。新聞も「重要課題がそっけない」(毎日新聞、25日付社説)などと批判した。たしかに政権が重要課題と考えるのであれば正々堂々、真正面からもっと踏み込むべきだというのは、正論である。
だが、私は安倍政権はこれらの問題に深入りするだけの準備が整っていないのが真相ではないか、とみる。本音は深入りしたくても、できる見通しが立っていないのだ。
というのは、与党の公明党が慎重であるからだ。山口那津男代表は「通常国会会期中に集団的自衛権に結論を出すのは困難」と語っている。
これは、連立組み換え問題に直結するテーマでもある。山口は「連立離脱は考えられない」と言っているが、みんなの党の渡辺喜美代表は安倍首相から電話で「政策協議をしよう」ともちかけられた一件を暴露した。安倍は演説で示唆したとおり、さっそく動いている。
つまり、みんなの党や日本維新の会など集団的自衛権の容認と憲法改正に積極的な野党との連携が進んで、場合によっては公明党が連立離脱しても大丈夫、という見通しが立てば、そのとき初めて一歩を踏み込める。
だが、話はまだそこまで煮詰まっていない。だから、具体的に語ろうにも語れない。いまはそんな局面なのだ。
私自身は集団的自衛権の見直しに賛成だし、憲法も改正すべきだと思う。だが「やるべき」という話と「やれる」という話は別だ。政治にとって重要なのは、理想もさることながら「やれるかどうか」の現実判断である。
第一次安倍政権と今回の政権の違いは、安倍が現実重視のリアリストになってきたところだ。演説で慎重だったのは、やれる見通しが立っていないことの裏返しだろう。
このままいくと、はたして安保防衛の大議論になるかどうか。渡辺は「自民党と組むこともあり得る」という立場だ。予算案成立後の国会に、与野党組み換えの可能性も含めて緊張感が漂うのは必至の情勢である。
(文中敬称略)
文■長谷川幸洋:東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。政府の規制改革会議委員。近著に『2020年新聞は生き残れるか』(講談社)。
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