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[風見鶏]なぜ日本は「共和党」なのか
特別編集委員 伊奈久喜
4月にも来日するオバマ米大統領と安倍晋三首相との首脳会談を成功させるために双方の外交当局者は腐心する。いまの日米関係には、しっくりといかない構造的要因があるからだ。
日本が政治家も官僚もメディアも、オバマ政権与党の民主党ではなく、共和党に傾斜しすぎている点だ。これはグレン・フクシマ元在日米国商工会議所会頭の嘆きでもある。が、日本からみれば、それなりの理由が少なくとも3つある。
第一に、地理的理由だ。日本は米アラスカ州と同じ「レッドステーツ(赤い州)」なのである。共産主義の州という意味ではない。米大統領選挙で共和党が強い州をそう呼ぶ。
冷戦時、ソ連と国境を接する最前線だったアラスカ州では1960年以降の大統領選で64年を除き毎回、共和党が勝利している。日本には、かつてはソ連、いまは中国との最前線の緊張がある。このためにアラスカ州同様、非融和主義的イメージの共和党に傾く。
第二に、歴史的理由だ。ベルサイユ会議で日本提出の人種差別撤廃提案を葬ったウィルソン、第2次世界大戦時に日系人を収容所に隔離したルーズベルト、原爆を落としたトルーマン、中国に9日滞在し、日本を素通りして帰ったクリントン各大統領は、いずれも民主党である。
一方、日米安保条約改定に応じたアイゼンハワー、沖縄を返還したニクソン、日系人に謝罪したレーガン各大統領は、いずれも共和党だ。偶然だろうか。
第三に、心理的理由だ。自民党と共和党との間には保守同士の親和性がある。日米双方に民主党政権ができた2009年は非保守同士の日米関係構築の機会だったが、鳩山由紀夫首相がそれに失敗した。
米側の対日政策関係者をみても、政策以前の違いがある。
共和党のアーミテージ元国務副長官のような義理・人情・浪花節がわかる人は民主党にはいない。中心人物であるキャンベル元国務次官補はソ連に留学して音楽も勉強した多才な政治学者であり、軍歴もあるが、海軍兵学校卒業のアーミテージ氏のような体育会系・浪花節型ではない。
グリーン元ホワイトハウス上級アジア部長は、日本での記者、議員秘書経験を通じて浪花節を理解した。父が民主党、母が共和党の家庭に育ち、若い頃は「無所属」を称したが、アーミテージ氏との浪花節的関係で共和党を選んだ。
ただし共和党色の強いウォール・ストリート・ジャーナル社説も安倍首相の靖国神社参拝を「戦略的負債になる」と安全保障の観点から心配する。これに対し首相は「かくすればかくなることと知りながらやむにやまれぬ大和魂」(吉田松陰)の心境のようだ。
親和性に注目すれば、レーガン政権なら、参拝に対する米政府の「失望」声明はあったかどうか。レーガン大統領は85年にナチス親衛隊員も埋葬されているビットブルク軍人墓地を訪れて批判されたからだ。
余談めくが、ワイツゼッカー西独大統領(当時)は「米独関係に極めて重要」とレーガン氏の墓参に謝意を述べた。「過去に眼を閉ざす者は、未来に対しても盲目となる」で有名な演説の6日前の発言である。歴史の意外な事実である。
オバマ政権はフィナンシャル・タイムズ社説に「死に体政権の最長記録」と皮肉られたように、あと約3年続く。安倍政権は普天間問題、環太平洋経済連携協定(TPP)など実務面で実績を重ねるしかない。そうすれば、日米関係を低位でも安定させられる。
(特別編集委員 伊奈久喜)
[日経新聞2月2日朝刊P.2]
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