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新たなあるじの誕生を待つ東京都庁=柳澤一男撮影
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140131-00000056-mai-pol
毎日新聞 1月31日(金)17時29分配信
東京都知事選(2月9日投開票)が中盤戦に入った。1082万人の有権者と、韓国の国家予算に匹敵する予算規模を持つ東京都の知事選は、どうやら他の選挙とは違う特徴を持つらしい。「イメージ選挙」は本当なのか。なぜそうなるのか。
◇95年の青島氏当選以来変質 「そのつど支持者」がカギ握る
「都民は都政への関心がないんだとつくづく思った」
宮城県知事を3期12年務めた後、2007年の都知事選に立候補した神奈川大の浅野史郎・特別招聘(しょうへい)教授は振り返る。宮城で常に話題になったのは、東京との格差だ。
「みんな東京のようになりたいと意識している。それは宮城が発展してほしいとの思いの裏返しで、つまり県民は宮城のことを考えていた。都民は国の政治には期待しているでしょうが、都政には期待していない。だから実務にたけているよりも、『どれだけ舞台映えするか』と、見た目の格好良さやパフォーマンスが目立つ人が選ばれる」
特に驚いたのは、石原慎太郎元知事の判断で1000億円を出資して設立し、経営不振に陥った新銀行東京に対する反応だ。「資金の元はもちろん都税。宮城だったら間違いなく大騒ぎになる。これだけで知事が辞任に追い込まれてもおかしくない。でも、都民も議会もちょっと騒いで終わってしまった。関心のなさを痛感しました」と振り返る。
政策よりも舞台映え……有権者の選択基準としてはかなり情けない気がするが、北海道大の吉田徹准教授(政治学)は「有権者が政策で選ぶのは理想だが、それはあくまで理想です」と言い切る。
吉田准教授によると政策が争点化するには、争点について(1)有権者がイエスかノーか答えを持っている(2)複数の選択肢が明確に提示されている(3)選択肢の違いを有権者が理解できている(4)選んだ候補者が掲げた政策を実行する信頼感がある−−の4条件が必要だ。
ところが「そもそも五輪開催や待機児童解消、高齢者福祉など誰もが政策として賛成する『合意的争点』が多すぎる。政治への信頼感がない今、知事選が4条件を満たすことはかなり難しい」。さらに、都知事は世間の注目度が高く、当選後も何かと強い発言権を持てるため、候補者に特徴と人気を備えた“役者”がそろいやすい。有権者が惑わされるはずだ。
吉田准教授は「都知事に誰がなっても都政は大きくは変わらない。だったら国の政策に反旗をひるがえそうとか、ノーと言えるとか分かりやすいメッセージを出せる候補者を選ぶ傾向にある」と指摘。世界でも大都市は同様の傾向にある。「昨年11月のニューヨーク市長選では、非常に裕福で保守的で権威主義的なイメージの強かったブルームバーグ市長から、一気にたたき上げの超リベラルなデブラシオ市長に代わった。その人の背景やイメージに投票している人は多い」と語る。
都知事選はいつから「イメージ選挙」になったのか。
世論調査を専門とする埼玉大の松本正生教授は「1995年の青島幸男都知事の誕生で、状況が大きく変わった」と説明する。それ以前の89年の消費税選挙、93年の政権交代で有権者たちは自分の投票で社会の枠組みが変わることを経験した。その経験でじわりと進んでいた「地殻変動」が95年の都知事選で一気に爆発したという。同都知事選は、後出しじゃんけん、候補者の知名度の高さ、政党相乗り候補への反発と、現在の状況と相通じるものが多い。さらに青島都知事誕生以降は、他県に多い官僚出身の知事も誕生していない。
55年体制が崩壊した93年以降、支持政党のない人が加速度的に増えた。松本教授らが2005年から実施している全国調査では、選挙がどれだけ注目を集めて関心が高まっても、「支持政党なし」の人が有権者の約7割に上る。「特定の支持政党がないからといって、政治に関心がないわけではない。むしろ政策を見比べるなどまじめに考えている人は多い。わざわざ投票にいく価値はあるか、今回の選挙は何の意思表示になるのか見極めている」。支持政党を持たなくなった都民にとって青島知事の誕生は、自分の1票の力を再確認する契機となったようだ。
松本教授は選挙にある程度の関心があり投票に行くが、特定の支持政党を持たない層を「無党派」ではなく「そのつど支持」と定義する。「そのつど支持者は、地元の課題に対する選挙には関心がなくても、国政選挙は、国を左右するイベントに参加するぐらいの気持ちで投票に行く。都知事選は地方選挙とはいえ、1995年以降イベント化が進み、国政選挙のような状況です。イベント化された選挙では『そのつど支持』の動向がカギになる」
当然、選挙の戦い方も状況に応じて変化する。都知事選に関わった経験がある選挙プランナーは「都知事選は実は一番お金がかからない選挙だ」と打ち明ける。
通常、衆院選の小選挙区の隅々まで票を掘り起こすには、支持者が通いやすいように事務所を2、3カ所借り、その管理のため私設秘書を長期間雇う。しかし「候補者すら選挙直前に決まる状況では、時間をかけた票の掘り起こしは無理。ポスターだって全掲示板に張る必要はない。それよりは、候補者をどれだけ良く見せるかに金をかけた方がよほど安上がりで効率的」と指摘する。
実際の選挙でも「大統領選のようにやろう」と、イメージ戦略の専門家の助言で候補者に親しみやすい話し方をさせたり、都民の要望をマーケティングして公約に盛り込んだりした。「それでもポスターを大量に刷ったり、事務所を何カ所も開いたりする経費より安い。都知事選で最も必要なのは『企業広報者の素質』です。商品=候補者の良さを説明し、トラブルがあった場合は素早く対応する」
◇「イメージ先行でいい」
それでは今回はどんなイメージが求められているのだろうか。
松本教授は「世論調査をみると、今の全国的な流れは『政治や政局の話はしばらくお休み。まずは経済を立て直す』です。だから安倍晋三首相が靖国参拝をしても、辞任を求めるような大騒ぎにはならなかった。都民も同じです。猪瀬直樹前知事があんな問題を起こさなければ彼でいいと思っていたんですから、都民の気持ちは『え、またやるの?』でしょう。新知事には派手なスター性を求めてはいない」とみる。
前出の選挙プランナーも「消化試合にみえる」と話す。2020年の東京五輪の開会式に誰が知事として立っているかが問題で「その人を選ぶ次の選挙こそが本番だと思っている有権者が多く、盛り上がりに欠けるはずだ」と予測する。
吉田准教授は「今回の中で一番争点になりそうなのは脱原発。少なくとも細川護熙候補を支援する小泉純一郎元首相は、脱原発という分かりやすい対立軸を立てた。でも、今のところそこまでは議論が白熱していない。都民は果たしてその問題を都知事選で問うていいのか悩んでいるようだ」と分析する。しかし、と続ける。「別に『原発は嫌だ』との思いで、候補を選んでもいい。政策で候補者を選ばなければ無責任だという意見には私は違和感があります。『あの候補者がいい』とか、『やっぱり原発は嫌だ』という自然な感情を否定すれば、政策に関心がなかったり気に入らなかったりすれば投票に行かなくていいという層が増えていくことになりかねない」。たとえイメージ先行でも、自分が一番求めていることを自問し、最も近い候補者を選ぶことが大事らしい。
松本教授は「この人だけは嫌だという基準で、消去法で誰かを選んでもいい。毎回ふさわしい候補は選べないかもしれないが、間違ったら忘れずに次につなげればいい。それが、知事の仕事を監視する力になり、次の選挙に生かされるはずです」と話す。
1票の重さを知っているはずの都民。今回はどんな選択をするのだろう。【田村彰子】
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<過去の主な都知事選の結果>
当選者 次点
1991年 鈴木俊一 磯村尚徳
現職、元自治省官僚 元NHKキャスター
1995年 青島幸男 石原信雄
タレント、前参院議員 前官房副長官
1999年 石原慎太郎 鳩山邦夫
作家、元運輸相 元文相
2012年 猪瀬直樹 宇都宮健児
作家、前副知事 前日弁連会長
(敬称略、肩書はいずれも当時)
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