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[注目の人直撃インタビュー] 都知事選候補者・細川護煕氏
http://ch.nicovideo.jp/nk-gendai/blomaga/ar448481
2014-01-30 日刊ゲンダイ
乱心しなければ安倍政権の不条理は止められません
細川の都知事選出馬を「殿、ご乱心」と揶揄した閣僚がいたが、細川は「乱心でなければできませんよ」「腹をくくって出てきた」と、切り返した。細川、小泉連合は合わせて、148歳。悠々自適の生活を捨てて挑むのは、「誰かが出なければ、不条理を変えられないからだ」と言い切る。その壮絶な覚悟に有権者は耳を傾けるべきだろう。
――舛添候補の優勢が伝えられますが、選挙戦の手応えはどうですか?
小泉さんは、(街頭演説をした)立川でも池袋でも、郵政選挙の時より凄いと盛んに言われるんですよ。私は日本新党の時と同じくらいかと思いますが、手応えはあります。これをどれだけ拡散していけるかですね。
――これから文化人などの著名人も応援に入ります。
瀬戸内寂聴さんや澤地久枝さんが、「これは歴史的転換の選挙だから、老体にムチを打って出て行かなきゃならない」とおっしゃって。88歳の梅原猛さんもです。街宣車にのぼるというので、それは危ないからやめてくださいと申し上げているんです。
――みなさん、相当熱いですね。そこに世論調査とは違うムードを感じます。細川さんは、「ご乱心でなければできない」と言って、出馬表明しました。
そりゃそうですよ。「いい年して」と、いろんな人から手紙をもらいました。「幕府の大老まで務めた人が、なぜ今さら江戸町奉行をやるんだ」と言って、私の出馬を止めようとした人もいました。しかし、若い人は出てこないし、それに年齢の話じゃない。若いか年寄りかの分かれ目は、不条理に対して闘う気概があるかどうかということです。私は不条理と闘わなければいけないという気持ちになった。せっかく平和な暮らしをしていたのに、ボロクソに週刊誌やなんかで叩かれ、殿のパンツは誰が洗っているんだとか、何から何まで書かれている。もちろん、そうなることは百も承知です。「ヤリでも鉄砲でも持ってこい」ってことですよ、そういう覚悟はできています。
――そこまでの決意をさせた不条理とは、どんなことですか?
安倍政権の外交、対外的な関係や、秘密保護法を決めたり、集団的自衛権行使容認に向けた安保法制懇やNHK会長の人事、TPPもそうですが、こうしたことについて、ずっといかがなものかと感じてきました。五輪にしても、こんなケンカ腰外交をしていて、中国、韓国が来てくれるだろうか。そんな中、決定打は、政府が去年12月に、新たな「エネルギー計画」で原発を基幹エネルギーの電源として位置付けたことです。最終の閣議決定はこの選挙が終わるまで引き延ばしているのでしょうが、原発再稼働の方向が決まってしまった。これが出馬を決意した直接のきっかけです。核の後始末もできず、原発事故の原因も究明できず、放射能を垂れ流しているのに、知らん顔です。たった3年前のことなのに口をぬぐって、そういう原発をトルコのような地震の多い国に売り込む。本当に無責任な話だと思いますよ。
◇強欲資本主義では国は滅亡
――そうしたインフラ輸出がアベノミクスにおいては成長戦略になっています。
強欲的な資本主義にずっとこのまま依拠していいのか。人口は100年後、いまの1億3000万人が4000万人になる。そんな時代が来るのに、いままでと同じような経済成長至上主義でやっていけるのでしょうか。国の存亡に関わる話です。
――アベノミクスは、高度経済成長の夢をもう一度、という拡大路線ですね。やればできると。
それでは無理だと思いますね。それに原発をやめると成長が止まるという人がいますが、そうじゃない。原発をやめることで、新たな成長のエネルギーに切り替えられるんです。原発をやめなかったら切り替えられないんですよ。
――とにかく、安倍首相は企業の株価を上げることに血道を上げている。そのための原発再稼働。そういう考え方が間違っていると?
脱原発は、エネルギーの話だけではありません。東京都だけの話でもない。日本で戦後からずっと続いてきた価値観や文明史観に関わるテーマです。原発という時代遅れで高コストでリスクが極めて高い電源から、自然エネルギーに切り替え、世界の先端をいく新たな経済成長を日本が成し遂げていく。欧州の先進的な国、ドイツやオーストリアやスペインやデンマークでは、自然エネルギーが基幹的な電源として20〜40%に達しています。そうして成長しているんです。ドイツはこの6年間で雇用が20万人増えた。日本でも同じように自然エネルギーで成長できます。
――日本には豊富な資源がありますからね。
国土の7割が山林です。バイオマス発電の余地は十分ある。火山もあるから地熱も利用できる。蓄電の技術も進歩しています。いまやらないと日本経済はどんどん衰退の一途です。2020年の東京五輪は、施設や宿舎で原発によるエネルギーを一切使わず、自然エネルギーの五輪にすればいい。それを世界にアピールするのです。
――しかし、脱原発というと、凄まじい抵抗、嫌がらせがあるでしょう?
ありますね。いろんな形で。メディアでボロクソに叩かれるし、嫌がらせの電話も頻繁にかかってきます。やっぱり日本の政官業のしがらみってすごいんです。電力会社でつくる電事連がお金をバラまいていますからね。経団連でも何でも、みんなそれで口封じされてしまう。私はそういう既得権というか、政官業の城に切り込んでいこうと。日本新党の時もやりましたけど、それはもう抵抗は凄まじかった。
――一党独裁の政治状況の中で右傾化も心配ですね。小泉元首相はそのあたりについてはどう思っているのでしょうか?
そういう話はしたことありませんが、小泉さんもさまざまな問題の中に、国の方向の危うさを感じ取っていると思います。
――この選挙の意義、つまり、名護市長選に続いて、都知事選も負ければ、安倍政権には大打撃になる。暴走にも一定の歯止めがかかる。そうしたことは小泉さんも当然、理解して闘っていると思っていいのでしょうか?
この選挙によって政治の世界も大きく変わるだろうと、当然読んでいると思います。
――細川さんが勝てば、安倍政権の危険な路線を止めることができる?
少しでもブレーキをかけることができれば、非常に意味があると思います。私は、討ち死に覚悟でやっていますから。
――街頭に立つと寒風が身にこたえるんじゃないですか。体は大丈夫ですか?
小泉さんが「これ暖かいから」とラクダの下着をくれたんです。いまどき珍しいと思いながらも、それを着たら、確かに暖かい。小泉さんは、それにベタベタ使い捨てカイロを貼って、背中は真っ白です。私も5、6カ所貼ってやるようにしています。今週月曜からはダウンを着るようにしましたけどね。とにかく、大きな歴史的転換を図ろう、文明の新たな試みをしよう、と、そういう闘いですからね。最後まで訴え続けたいと思います。
▽ほそかわ・もりひろ 1938年1月14日、東京都文京区生まれ。上智大法卒。元熊本県知事。第79代内閣総理大臣。公益財団法人「瓦礫を活かす森の長城プロジェクト」理事長。
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