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http://www.magazine9.jp/article/amamiya/10293/
都知事選を前にして――絶対に忘れてはいけないいくつかのこと――の巻
都知事選である。
周りを見渡せば、「悩ましい」と頭を抱える人あり、そうそうに応援する候補者を決めて動きだしている人あり、「宇都宮氏と細川氏の一本化」について熱く語る者あり、それに向けて具体的な行動を起こす者あり、既に「味方」だった人をディスる人あり、支持する候補者を巡って仲間割れ的紛糾あり、本気で悩みすぎてノイローゼが心配な人ありで、「純粋な思い」から「選挙のテクニック問題」まで、いろんな思惑が百花繚乱。投開票日まで、自分も無傷でいられるか不安で仕方ない今日この頃である。
ということで、いろいろ考えた結果、ここは正攻法で行こうと決めた。なんたって、この原稿を書いている今は、全員の詳細な政策が出そろっていない状態である。まずはちゃんとそれぞれの政策を熟読してから、決める。以上。今はそれだけしか言えない。
となるとここで原稿が終わってしまうので、今の「ざっくりとした」状況で、考えていることなどを書きたい。
まず、どうしたって論じなければならないのは、「細川・小泉コンビ」だろう。
このコンビの台頭については、共同通信で「どうする雇用と生活の再建 忘れるな小泉政権の誤り」と題した原稿を書かせて頂いた。
細川氏について、私はよく知らない。しかし、「脱原発」で意気投合し、細川氏を全面支援すると息巻いている小泉氏のことはよく知っている。
01年から06年まで続いた小泉政権は、「普通に働き、生きること」を徹底的に破壊するものだった。そしてその影響は、小泉政権後もこの国で猛威を振るい続けている。徹底した新自由主義政策で広がった格差と貧困。社会保障費の容赦ない削減。そして04年には、製造業にまで派遣が解禁となる。雇用は不安定化し、「どんなに頑張っても報われない」層が大量に生み出され、そしてその中の一部は「ヘイトスピーチ」などの方法で悲しいガス抜きをし、明日の過酷な労働に耐える準備をしつつ、偏ったナショナリズムでなんとか自己肯定しながら安倍政権を補完する役割を担わされているという皮肉なことになっている。
それが2014年、この国の光景だ。
そうして小泉政権で広がった貧困は、今や「相次ぐ餓死」や「雇用破壊」の果てに蔓延するブラック企業という形で、この国を覆っている。
小泉氏の「誤り」は、この国の多くの人から「未来」や「安心」を奪ったことだけではない。
03年、アメリカ主導で始められたイラク戦争を、世界で真っ先に支持したのが小泉氏その人である。結局、「開戦」の根拠となった大量破壊兵器は存在すらしなかった。「勘違い」によって始められた戦争で、イラクでは10万人以上の命が奪われた。
小泉政権は、弱肉強食の「自己責任」を強調した。が、そんな小泉氏自身、イラク戦争を支持し、10万人以上の命が奪われたことに加担したという事実について、一度でも責任を問われたことはあるのだろうか?
小泉氏と細川氏を結びつけたのは「脱原発」である。そんな小泉氏は、昨年8月、フィンランドの放射性廃棄物最終処分施設を視察し、脱原発の思いを強くしたのだという。
それ自体は、いいことだと思う。多くの人が3・11の衝撃を受け、それまで自分が信じていたものを疑い、意見や考えを変えている。変えることが怖かったり、様々な利権やしがらみがあったりで「頑なに意見を変えない」オッサン政治家たちなんかより、ずっといいと思う。
しかし、私は、これから書くことを絶対に忘れたくない。
彼が世界に先駆けて支持したイラク戦争では、「核や原発のゴミ」を兵器に転用した劣化ウラン弾が大量にバラまかれたと言われている。湾岸戦争で初めてイラクに投下されたその爆弾の甚大な被害は、イラク戦争が始まる前、当然、世界的に知られていた。この連載で何度も書いているが、私自身、99年、初めて行ったイラクで劣化ウラン弾被害を目にし、腰を抜かすほどの衝撃を受けた。放射性物質であり、重金属である劣化ウラン弾が大量にばらまかれたイラクで増え続ける先天性異常の赤ちゃん、ガン、白血病の子どもたち。目を覆うような光景が、そこにはあった。
それを見ていたからこそ、イラク戦争1ヶ月前、バグダッド入りまでして「ここに劣化ウラン弾を落とすな」とデモをした。
しかし、11年前の小泉氏は、イラクに「核のゴミ」が降り注ぐことに積極的に加担したのだ。
だからこそ、フィンランドの施設で脱原発を確信したという一報に触れた時、私は猛烈に腹が立った。
あなたが視察すべきはフィンランドの最終処分場などではなく、劣化ウラン弾がブチ込まれたイラクではないのか。今もさまざまな病気に苦しむ子どもたちがいる病院をまずは視察し、自分が支持した戦争の果てに起きている残酷すぎる現実を直視すべきではないのか、と。
劣化ウラン弾は、「核のゴミ」の、最悪の処分方法が具現化した兵器だ。最終処分場でそこまで「脱原発」に目覚めたならば、もうひとつの「最悪の処分方法」に、なぜ目を向けないのだろう。私たちが、あのことを「忘れた」とでも思っているのだろうか。だとしたら、舐められているにもほどがある。
私が今、もっとも興味があるのは、細川氏が、そんな小泉氏の数々の誤りについてどう思い、そしてどうしようと思っているのかということだ。「脱原発」ということはわかった。その上で、これまで破壊されてきた人々の生活や雇用をどう再建するのか。
ただでさえ、東京都には、脱法ハウスやネットカフェ難民といった格差社会の歪みが集中している。格差と貧困が拡大した「ツケ」を、人生を台無しにしながら支払わされている層が大勢いる。1%の持つ者と、99%の持たざる者の対比がもっとも鮮やかなのが東京だろう。
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