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安倍総理の「歴史認識」と「平和ボケ」
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★「田中良紹氏の視点ー(2014/01/27)」★ :本音言いまっせー
スイスのダボスでの安倍総理の発言が世界中で問題になっている。記者から「尖閣問題で、日中が武力衝突をすることはあり得るのか」と問われた安倍総理は、「今年は第一次世界大戦から100年目。英国とドイツは戦争前に貿易で結びつきが深かった。日本と中国も今、非常に経済的な結びつきが強い。だからこそそうならないようにコントロールする事が大事だ」と答えた。
これに質問した記者は驚いた。「武力衝突はありえない」と否定するかと思ったら、日中関係を第一次世界大戦の英独関係になぞらえ、武力衝突を否定しなかったからである。「そうならないようにする事が大事だ」と言うのは当たり前で、それを言わなければ事実上の宣戦布告の意味になる。
この発言で安倍総理の頭の中には現在の日中関係と第一次世界大戦時の英独関係とがダブって存在している事が明らかになった。欧米のメディアが安倍総理の「歴史認識」に疑問を抱きたくなるのも当然である。
「今年は嫌でも戦争を意識せざるを得ない」でも書いたが、第一次世界大戦100周年に当たる今年、欧米ではこの戦争について議論が高まり、戦争の歴史から教訓を得る作業が行われる筈である。そうしたところに、遠い極東の日比谷公園ほどの面積の島をめぐる対立と思っていた尖閣問題を第一次世界大戦に例えられたのである。「ムム、なんだこの歴史認識は」となる。
第一次世界大戦は欧州における帝国主義列強の衝突である。イギリス、フランス、ロシアという大国とドイツ、オーストリア、トルコという新興勢力がぶつかる形になった。しかし戦争の原因は複合的で、同盟関係も複雑であり、決して単純な戦争ではない。すぐに終わると思われたのが足掛け5年に及ぶ人類初めての世界戦争に発展した。
結果としてドイツ帝国、オーストリア帝国、ロシア帝国はいずれも崩壊し、大英帝国の栄光も地に堕ち、莫大な借金を抱えたヨーロッパに代わり世界最大の債権国となったアメリカが世界を主導する時代が到来した。アメリカは帝国主義の植民地支配を終わらせようと「民族自決」を訴え、国際連盟の設立を提唱した。
日本は日英同盟に基づいて参戦し戦勝国の一員となった。そして遅れてきた帝国主義国家として中国にあるドイツの権益を要求した。しかし日本は中国と戦争して勝ったわけではない。ドイツの権益は中国に返還されるべきだと主張する中国国民によって反日運動が起き、天安門広場から始まる「五四運動」はアメリカの民族自決の主張に後押しされ、それが中国共産党を誕生させた。
それを知ってか知らずか安倍総理は尖閣問題と第一次世界大戦とを同列視した。そして「そうならないようにすると言ったのだから問題はない」と開き直った。日本のメディアはそれを擁護して「安倍総理の発言は欧米メディアによって誤解された」、「通訳がおかしかった」という論説に満ちている。
フーテンはこちらの方が「恐ろしい誤解」「恐ろしい平和ボケ」だと考える。何度も言うが「そうならないようにする」と発言するのは当たり前で、それを言わなければそれこそ戦争になる。しかし彼らが問題にしているのは尖閣問題と第一次世界大戦を同一視する安倍総理の「歴史認識」である。彼らには「安倍総理は第一次世界大戦を正しく理解しているのだろうか」という疑問もあるのではないか。
安倍総理が自ら歴史を学び「第一次世界大戦前の英独関係と今の日中関係は似ている」と考え出したとは思えない。安倍総理の周辺にそのような考えを持つ人間が存在し、安倍総理はそうした周辺から吹き込まれた。その影響がダボスで出た。
第一次世界大戦前の英独に領土問題があった訳ではない。戦争の原因は帝国主義国家同士の勢力争いである。つまり安倍総理に吹き込んだ人間は現在の日中関係を帝国主義時代の勢力争いと同様に見ている。尖閣の領有権問題はそのためにある。
国民向けには領土問題を前面に出しながら、米ソ冷戦の時代の対ソ政策と同様に中国の勢いを封じ込める事が日本の使命だと考えている。しかしそう思うためには中国を封じ込める事がアメリカを中心とする世界の主流になる事が前提になる。では世界はそのように動いているのだろうか。
冷戦後における世界の新秩序はいまだ混沌として定まっていない。しかし中国が比重を増していくのは間違いなさそうだ。その中国に脅威を抱いている国があることも事実である。しかしそれがかつての東西対立と同じ構図を作り出すかとなると相当の疑問がある。
かつての米ソとは異なり、米中は経済で抜き差しならない関係になっている。世界経済に占める中国経済の存在も大きい。中国経済がおかしくなればアメリカ経済も世界経済もおかしくなる。そのため米中が対立ではなく協調して世界をコントロールする可能性もある。その時には中国封じ込めに力を入れる日本は目障りな存在となる。
中国の軍事力を「脅威だ」とアメリカは言うが、本音では全くそう思っていない。アメリカの軍事力はずば抜けている。空母を11隻、原子力潜水艦も57隻保有し、しかも世界中の海を航行している艦船をすべて衛星で監視している。これに対して中国は空母1隻、原子力潜水艦8隻を持っているに過ぎない。
アメリカが中国の軍事的脅威を日本に強調するのは別の意図があるからだ。それを見抜けないのはアメリカのソフトパワーに洗脳されているためで、それもこれも戦後のアメリカ依存がもたらす「平和ボケ」のなせる業である。日本はもう一度「歴史認識」を磨き直した方が良い。
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