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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140127-00000008-sasahi-pol
AERA 2014年2月3日号
「ご乱心」の殿と市民派弁護士の都知事候補一本化はならず、「脱原発」票はさまよう。
かつてのやんちゃな論客も不協和音は絶えないようで。(編集部 本田修一、鈴木 毅)
* * *
脱原発派の一本化は東京都知事選(2月9日投開票)でも実現しなかった。
「まさに苦渋の選択ではございますが、脱原発候補を当選させるためにはこれしか方法はないと考えている」
小泉純一郎元首相(72)の後押しを受けた細川護熙元首相(76)が正式な出馬会見をする2日前の1月20日、脱原発の市民団体「脱原発都知事を実現する会」共同世話人の河合弘之弁護士は、国会内で開いた記者会見で細川氏支持の考えを、さばさばとした表情で語った。細川氏の「脱原発」の意思は電話で確認したという。
昨年末に弁護士の宇都宮健児氏(67)が脱原発などを掲げて立候補表明した際は、脱原発団体の多くが宇都宮氏を支持する方針だった。ところが今月に入って、細川氏が立候補を決断。このグループも「票が割れては原発推進派を利する」と一本化を模索していたが、両陣営に断られ、細川氏を個別に支持することに決めた。ルポライターの鎌田慧氏、作家の瀬戸内寂聴氏、広瀬隆氏、音楽評論家の湯川れい子氏、社会学者の宮台真司氏らが、こうした「苦渋の決断」に同調した。
●苛烈さ増す非難合戦
だが当然同調しない向きもある。共産党は「悪政を強いてきた元首相コンビ」(「しんぶん赤旗」)と、細川=小泉連合を批判。昨夏の参院選比例区で落選者中最多の17万票余を集めたミュージシャン三宅洋平氏も、
「(細川氏には)宇都宮さんと比べて100倍くらいの距離を感じてしまう」
と表明した。
つまり、河合氏らの決断で「脱原発派」の分裂は決定的になった。細川氏がインターネットテレビ「デモクラTV」のインタビューで、
「一緒になることはできない。野合と言われたらかなわない」
と言えば、宇都宮氏も、
「原発だけで一本化というのはあり得ない」
と態度を硬化し、23日の告示後は、両陣営の非難合戦は苛烈さを増している。
細川氏を勝手連的に支援する民主党の中堅国会議員は、こうため息をついた。
「『脱原発』のワンイシューで戦うのに、脱原発候補が複数いるのは痛い。しかも、連合東京が舛添要一元厚生労働相(65)に付いてしまった。このままなら『宇都宮氏と一本化してたら舛添氏に勝てたのにね』という結果になりかねません」
けれども、細川陣営の雰囲気は明るい。関係者はこう話す。
「基本的には上り調子の細川と、下降傾向の舛添だ。もう相手の背中は見えている」
戦上手の小泉氏と組んだことが、安心感を生んでいるのか。「殿ご乱心」と批判された細川氏は、それを逆手にとって、
「ご乱心でなきゃ、こんなところ出てこない」
とアピール。第一声でも、
「原発ゼロという方向を明確に打ち出して、自然エネルギー大国・日本を打ち出していく」
と演説の8割を「脱原発」に充てた。横に並んだ小泉氏は、往年の「小泉節」を炸裂させた。
●メディア寵児の花舞台
「原発ゼロで日本の経済は成長できる。今回の都知事選ほど国政を動かすことができる選挙はめったにない」
駆けつけた有権者より報道陣が多かったかもしれない。だが東京都庁舎を背景にテレビ画面に切り取れば、いかにも
「新たな都の顔」だ。「政界再編」「郵政民営化」でメディアの寵児となった両氏の面目躍如だ。
辺りには、日本維新の会の松野頼久・国会議員団幹事長や中川秀直・自民党元幹事長ら知られた顔がちらほら。陣営入りした小沢(一郎氏)系ベテラン秘書は、こう打ち明けた。
「『応援演説したい』という議員や元議員はたくさんいるが、選挙カーに立つのは細川、小泉だけ。どんな団体の支援も受けない、というイメージを徹底させるんだ」
実際は、民主党や生活の党が陰で支援し、国会議員経験者のほか、松野氏や旧日本新党出身の小沢鋭仁・維新の会国対委員長らの秘書が陣営に入る。よく言えば「多士済々」、けなすなら「烏合の衆」なのだ。
●調査では先を行くが
一方の舛添氏は、今のところ各種の情勢調査で細川氏らを引き離す。第一声では、
「史上最高の五輪、世界一の東京を目指す」
と気炎を上げた。だが当初予定された与党幹事長そろい踏みは実現せず、動員も少なかったようで、かなり地味。印象に残ったのは応援弁士による細川氏の1億円借入問題へのネガティブキャンペーンぐらいだった。
直前の19日にあった沖縄県名護市長選で強引に保守一本化したのに、現職に大敗したことも尾を引いている。米軍普天間飛行場の移設が争点になり市民に拒否されたわけだから、政権の面目丸つぶれだが、追い打ちをかけたのが、応援作戦の不発と情報の混乱だ。
石破茂幹事長、河村建夫選対委員長、山本一太沖縄・北方相、田村憲久厚労相、衛藤晟一首相補佐官……。勝ちを見越して続々送り込んだが、自主投票の公明党とのきしみが逆に顕在化する結果に。地元記者も証言する。
「自民党系の政治団体が新顔について事務所を構え、電話作戦を展開したんです。何度も期日前投票を呼びかけて◎、○、△、×と色分けするから陣営もすっかり信用した。報道各社の情勢調査では現職有利でしたが、電話作戦のサンプル調査では僅差で、『これは行ける』とぬか喜びしたのです」
名護市長選投開票日の19日、東京での自民党大会は、ゲストの松崎しげるが「愛のメモリー」を熱唱するなど、お祭り騒ぎだった。派閥領袖の一人は、
「名護も我が方がいけるんじゃないか」
とうそぶいたが、結果は大敗。沖縄の混乱が東京に伝染した。小泉氏の次男の進次郎復興政務官が、「(舛添氏を)応援する大義はない」と断言したのを始め、脱原発派の河野太郎衆院議員も舛添氏が自民党を除名された経緯から「『自民党が支持している舛添要一氏』という言及は、正しくない」と主張。同じ脱原発派の秋本真利衆院議員は朝日新聞に「細川氏が発表する政策が我々の政策と合えば、積極的に支援したい」と答えた。
●「脱原発」争点化は半々
舛添氏の元妻、片山さつき参院議員に至っては、安倍晋三首相に舛添氏の応援を直接頼まれたのに、条件を突きつけた。
「舛添氏は、障害をお持ちのご自身の婚外子の扶養について係争になっており、これをきちんと解決していただくこと」「実姉への扶養義務の問題も過去にさかのぼってある」
舛添氏は会見で説明したが、解決は容易でなさそう。
都知事選で何を問うべきか。インターネット調査会社ミクシィ・リサーチの「チャオ」を通じて、告示直前の22日、20歳以上の都民500人にアンケートを行い、男性306人、女性194人が回答した=図参照。
政党支持率は自民23.4%で、他党は全部3%以下(支持政党なし57.0%)で、「自民1強」は昨年より強まっている。
都知事選で脱原発を争点の一つにすることの賛否を問うと、「賛成・どちらかというと賛成」は、「反対・どちらかというと反対」とほぼ同じだった。
細川氏の選挙事務所には自身が揮毫した「桶狭間」が掲げてある。奇襲攻撃が成功するかどうかは、やはり細川=小泉連合が「原発」を争点としてどう盛り上げるかにかかっている。
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