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「原発のない社会を東京から発信する」「原発を使わずに景気回復するのは難しい」「ゼロを明確に打ち出すことが大事だ」
都知事選では「原発」が論戦の大きなテーマになっている。
国策である原発政策を地方選挙の都知事選で議論していることになるが、都知事の判断で政策を変えられるのか。
確かに都知事に原発の設置や稼働に関する権限はない。都は東京電力株を四千二百万株余り持つ四番目の大株主だが、福島第一原発事故後、賠償に必要な資金を確保するため「原子力損害賠償支援機構」が50%以上の株を保有し、実質的に国有化。都の保有率は1・2%となり、株主総会で経営の透明化などを提案しても否決され、影響力にも限界がある。
●武器
しかし、都知事には大きな武器がある。原発を必要としない首都東京を見せることができる。
知事は節電や再生可能エネルギーを拡大させるため、独自の施策や条例をつくれる。東京は全国最大の電力消費地で、消費量を大きく減らせば原発の必要性は低くなる。メキシコや韓国のGDP(国内総生産)に相当する財政力と、都庁という人材豊富な行政組織を活用して、省エネによる脱原発の実践モデルをつくり上げれば、全国に波及していくだろう。
二〇一一年秋の韓国・ソウル市長選で無所属候補として与党候補を破った朴元淳(パクウォンスン)市長は、一四年度までに原発一基分の電力を再生可能エネルギーと節電で補う計画を表明。家庭で電力消費を削減すると交通機関のポイントが得られる制度などをつくり、目標達成が確実となっている。成功例はすでにある。
●うねり
そもそも、千三百万人の都民が「原発ゼロ」の民意を示せば、その政治的な影響力は大きい。新知事が「脱原発」で他の知事や市区町村長らと連携すれば、全国にうねりが広がっていく可能性もある。
安倍政権は昨年末に原発を「基盤となる重要なベース電源」とするエネルギー基本計画案を決め、都知事選後に閣議決定しようとしている。今月十五日には柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働を前提にした東電再建計画も認定した。
関西電力大飯原発(福井県)が昨年九月に停止して以降、「原発ゼロ」の状態が続いているが、安倍政権は春以降、停止中の原発を順次、再稼働させようと手続きを進める。原発政策はいま、まさに岐路に立っている。
「一極集中を続ける首都東京をどうするかは、文化、文明、哲学、倫理の問題として考える必要がある。その象徴が原発問題だ」
元福島県知事の佐藤栄佐久氏はこう指摘する。原発政策はエネルギー政策にとどまらず、経済や産業、外交、暮らしに直結する。重い一票となる。 (金杉貴雄)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014012502000128.html
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