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http://iwj.co.jp/wj/open/archives/121320
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告示後の第一声で、東京都知事選の立候補者である田母神俊雄氏は、持論の「放射能は安全」「原発推進」を声高には叫ばなかった。今までかつて口にしたこともない、弱者への福祉政策を前面に出すなど、選挙民へのアピール戦術を変えてきている様子である。
しかし、我々は忘れるわけにはいかない。
1月12日に行った街頭演説のなかで、田母神氏は耳を疑うような発言をしたのだ。
「50年原発を使っていて、運転中の原発で、放射能で死んだ人はひとりもいないんです、日本に」。
だから原発使おうよ、と言うのである。我々IWJは、この演説を中継している。
(2014/01/12 【東京都知事選】「原発なしにGDPを伸ばしていくことはできない」田母神俊雄氏演説 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/119476)
田母神氏が「運転中の原発」とリミットをつけているのは自己防衛本能によるものかもしれない。それでも田母神氏が伝えたかったことは、「日本に放射能で死んだ人はひとりもいない」ということである。私たちもぜひそうであってほしいと思うのだが、事実は違う。
1999年、茨城県の東海村で株式会社ジェー・シー・オーが、核燃料の加工中に臨界事故を起こした。東海村JCO臨界事故と呼ばれる事故である。この事故で作業員2名が死亡した。その死は当然被曝によってもたらされたもので、死に至るまでの過程が綿密に記録されている。田母神氏はこれを知らないのだろうか。知っていて、あえてこんな事実無根の嘘をふりまいているのだろうか。
JCOの臨界事故以外には、2011年の東京電力福島第一原発事故による「原発事故関連死」があげられる。
震災関連死・原発事故関連死として認定されたのは、岩手県389人、宮城県862人、福島県1383人(平成25年3月現在)。震災関連死と原発事故関連死それぞれの人数は不明だが、他の被災地と比較して福島県の認定者数が多いことから、福島県の1383人に多くの「原発事故関連死」が含まれていることが推測される。
つまり、原発事故がなかったら死なずにすんだ人たちの死である。田母神氏は、これを全く考慮しないつもりだろうか。
また、東京電力は2013年10月に、「現在も毎時1000万ベクレルの追加放出がある」と大気中への放射性物質の放出を認めている。周知の通り、汚染水も漏れ続けている。田母神氏はこの高濃度汚染水について、「アメリカやヨーロッパではコーヒーを飲む水だ」と、さも何でもないかのように発言しているが、現実には事故は現在も進行中であり、放射能汚染は拡大中なのだ。チェルノブイリ事故とその後の経過を見ればわかる通り、放射能による健康被害は遅効性であり、数年を経過して、表にあらわれる。3.11の事故の影響があらわれてくるのは、これからである。
田母神氏は、「原発についてもきちんと科学的根拠にもとづく論理を展開しなければならないというふうに思います」と述べている。しかし田母神氏の言っている「放射能で死んだ人はひとりもいない」という主張こそ、「科学的根拠」もなく、論理性も欠いていると言わざるをえない。
もう1度、1月12日の田母神発言をふり返ってみよう
「50年の実績を見れば、原発を安全に運用して、そして電力を十分に供給していくということは可能なのではないかと思います」。
田母神氏は、自信満々にこう述べた。つまり、50年間原発を安全に運用してきたのだから、今後も安全に続けていくことが可能だという論理だ。
田母神氏が言う「50年の実績」を見てみよう。田母神氏が「安全」という言葉を出したので、あえて、「どのくらい安全運用できなかったのか」の実績を示そう。
・1981年3月 日本原電敦賀原発1号機放射性物質を海に放出 レベル 2
・1991年2月 美浜発電所2号機蒸気発生器伝熱細管破断 レベル2
・1991年4月 浜岡原子力発電所3号機原子炉給水量減少 レベル2
・1995年12月 もんじゅナトリウム漏洩火災事故 レベル1
・1997年3月 動燃東海事業所火災爆発事故 レベル3
・1999年6月 志賀原子力発電所1号機臨界事故 レベル2
・1999年9月 東海村JCO臨界事故 レベル4
・2004年8月 関西電力美浜発電所3号機・2次冷却水配管蒸気噴出 レベル 1
・2011年3月 福島第一原子力発電所事故 レベル7
・2011年3月 福島第二原子力発電所冷却機能一時喪失 レベル3
・2013年5月 J-PARC放射性同位体漏洩事故 レベル1
(※レベルは国際原子力事象評価尺度)
国際原子力事象評価の基準から見て、11回の事故が起きていることになる。しかも 2011年の福島の原発事故は、最高レベルであり「深刻な事故」を指すレベル7が与えられている。全世界で、レベル7に該当する事故を起こしているのは、チェルノブイリと福 島のみだ。福島の事故は、約15万人と言われる避難民を出した。
これが、日本の原子力発電の「50年の実績」だ。福島の事故をその実績の総括と言ってもいい。それは、数々の事故・トラブルを省みず、2003年、小泉政権下では安全装置を外すという愚行までやってのけた結果だった。
これをみて、50年間「安全に」原発を運用してきたと田母神氏は言うのだろうか? 福島の事故さえももう忘れてしまっているのか、それともレベル7をたいしたことはないと言うつもりなのか? もしかしたら、田母神氏が言っている「安全」とは、原発作業員や原発周辺に住む人々の安全ではなく、原発の運用によって利益を得る人々の「利権の安全」なのかもしれない、とすら思う。
福島の事故で原発安全神話は完全に崩壊したはずだった。それも、論理的にではなく、物理的にである。普通の感覚を持っている人は、それを思い知った。それなのに、田母神氏はまだ幻想を見続けている。彼のそのほかの時代錯誤の発言から考えても、田母神氏には現実が見えていないとしか思われない。
【文・ゆさこうこ、文責・岩上安身】
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