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法務大臣 谷垣 禎一 様
法制審議会 新時代の刑事司法制度特別部会 委員 各位
2014年1月17日
要 請 書
全事件の取調べの全過程録音・録画こそ求められています
取調べの可視化の議論が、新時代の刑事司法制度特別部会において終盤を迎えるなか、その内容が「密室」の取調べを改善し冤罪を防止する制度設計から程遠いことに、強い懸念を表明します。
特別部会では、2013年1月にとりまとめられた基本構想に基づき、現在、対象事件を裁判員裁判事件に限定したうえで、(1)録音・録画の対象範囲を取調官の裁量に委ねる案と(2)「一定の例外事由を認めつつ、原則として、被疑者取調べの全過程について録音・録画を義務付ける」として録音・録画しない例外を多々設ける案が議論されています。
しかし、いずれも取調べの全過程の録音・録画をしないことを容認するものであり、えん罪の再発防止に向けた制度改革とはまったく言えません。すなわち、録音・録画の対象範囲を取調官の裁量に委ねる「一部録画」では、被疑者が虚偽自白を強要されるに至った過程や、取調官による被疑者への威嚇、脅迫や暴力的な行為、取調官による誘導を監視することができません。また、「一定の例外事由を認めつつ、原則として、被疑者取調べの全過程について録音・録画を義務付ける」案については、例外事由を認める範囲が拡大し、結果として全過程の録音・録画の対象事件が限定的になる危険があります。
しかも、両案ともに録画の対象事件を、刑事事件全体のわずか1.9パーセントしかない裁判員裁判対象事件に限定しているため、それ以外の事件の取り調べを「密室」のままで行うことを許すことになってしまいます。
多くの市民が、不当な取調べと冤罪を真に防止できる制度を求めています。私たちは、例外なき取調べの全過程の録音・録画のための制度を、強く要請します。また、通信傍受の拡大や会話傍受の導入など、プライバシーの権利などを保障する国際人権基準に違反する疑いのある、捜査当局の権限拡大を目指す案との抱き合わせを止めるよう求めます。代用監獄制度の廃止や証拠の全面開示についても改革を検討し、早急に着手するよう求めます。
2013年5月に行われた国連拷問禁止委員会による日本政府報告審査では、日本の刑事司法に対する包括的かつ厳しい指摘がされました。日本政府は、締約国として同条約に基づく勧告を誠実に遵守する義務があります。
私たちは、全事件における取調べの全過程の録音・録画制度を設計することを、再度強く要請します。
取調べの可視化を求める市民団体連絡会
【呼びかけ団体】
アムネスティ・インターナショナル日本/監獄人権センター/日本国民救援会/ヒューマンライツ・ナウ
【構成団体】
冤罪・布川事件の国家賠償請求訴訟を支援する会/国際人権活動日本委員会/志布志の住民の人権を考える会/社団法人自由人権協会/人権と報道・連絡会/菅家さんを支える会・栃木/富山(氷見)冤罪国賠を支える会/なくせ冤罪!市民評議会/名張毒ぶどう酒事件全国ネットワーク/袴 田巖さんの再審を求める会/袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会/フォーラム平和・人権・環境/無実の死刑囚・袴田巌さんを救う会
http://www.amnesty.or.jp/news/2014/0123_4438.html
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