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2014年01月21日(火) 町田 徹
正式な出馬会見を2度も延期し、まだ公式には立候補さえ表明していないにもかかわらず、東京都知事候補の細川護煕陣営は早くも圧勝ムードに湧きかえっており、連日、様々なグループが入り乱れて恩賞争いまで始まっているという。
これほどの圧勝ムードを作りあげているのが、「原発即時ゼロ」という細川氏の一枚看板の公約だ。しかし、冷静に考えれば、「原発即時ゼロ」という公約は、本来、3年前に東京電力の福島第一原子力発電所の事故が勃発した際に注目を集めた議論である。一昨年暮れの総選挙では、多くの政党が公約に掲げた。手垢にまみれているはずの代物である。
その後、昨夏には参議院選挙もあったというのに、今さら、この公約が都民の目に新鮮なものと映るのはなぜだろうか。そこには、国政を預かってきた政府・与党の怠慢が大きく影を落としている。
■都知事の権限ではできないが、触媒には成り得る
15日に行うはずだった立候補の記者会見を17日に延ばし、さらに22日に変更したため、肝心の「原発即時ゼロ」という公約の中身は、依然として藪の中だ。急きょ、「白羽の矢」の立った経済産業官僚OBが、細川氏が都知事に選ばれれば、新設する計画の「東京エネルギー戦略会議」(仮称)の座長に就任する含みがあって、「原発即時ゼロ」公約の素案作りにねじり鉢巻きで取り組んでいる段階で、依然として確固としたものは完成していないとの情報も飛び交っている。
まして、電力の消費地に過ぎない東京都が、本来、国策である原子力政策に何を根拠にどう関与していくのかは定かではない。
ただ、仮に、国政レベルで「原発即時ゼロ」を実現するならば、これは非常に簡単な話である。現在、国内に50ある原子炉はすべて運転を停止しているのだから、「そのまま再稼働させない」だけで、「原発」の「即時ゼロ」を達成できるからである。
再稼働させない大義名分作りも簡単だ。安倍晋三政権は、耐震強度や津波被害防止策を強化したに過ぎない原子力規制委員会の新規制基準にパスすれば、「安全が確認できた」ことにして再稼働に踏み切る構えを見せているからだ。これに対して、いざという時に住民の避難を優先したうえでベントを可能にするような事故対応策や、再び福島第一原発のような事故が起きた際の損害賠償保険作りが不十分である。
これらがきちんと整備できていない以上、稼働させられないと言えば事足りるのである。きちんと安全を確保し、使用済み燃料の最終処分コストまで勘案すれば、「原発は低コスト」でなくなっている可能性があるだけに、ハードルは従来より下がっているはずだ。
円安の進展で化石燃料の輸入代金が膨らみ、日本の貿易収支や国際収支は未曾有の赤字を記録しており、事態は極めて深刻ではあるが、問題は必要な電力が賄えるかどうかではなくて、単に、おカネの問題に限定されていると言える。
都にハードルがあるとすれば、再稼働の可否は、国が原発の立地自治体の了解を得て、決定する権限になっていることだ。電力の消費地に過ぎない東京都の知事が直接的に関与できる問題ではないのである。東京電力の大株主と言っても、議決権のある株式に限れば、東京都の東電株の保有比率は1.34%と第3位(第1位は政府・原子力損害賠償機構の50.10%、第2位は東京電力従業員持ち株会の1.56%)に過ぎず、東電に対してこれといった影響力も持っていない。
したがって、「原発ゼロ」は都知事の権限ではできないが、全国の住民がやる気になれば、それぞれの電力会社の営業エリアで間接的に実現へ向けた圧力をかける方法はある。自前で、配電網や発電所を建設して、「地産地消」型の電力網を運営することである。
こうした地域が全国に広がり、原発で発電した電気を買わない方針を貫くようになれば、最終的に原発ゼロが実現できる可能性がある。そこで、都は率先して、地産地消型の電力ネットワークに乗り出す一方で、各地の住民の自助努力を促す手は考えられるだろう。これまでも何度か本コラムで紹介したが、こうした試みは、すでにドイツ各地で展開されており、参考になる。
さらに踏み込んでいえば、都知事には、都民の税金で東京電力の配電網を買い取るという手がある。
北九州市などがモデル都市になって実験している「スマートシティ」(ITや環境技術を活用して電力の有効利用を図り、省資源化を徹底する環境配慮型都市のこと)を目指したり、住民運動を組織して太陽光発電や風力発電を伸ばす手もあるだろう。
どれも決定打にはならないし、即時に「原発ゼロ」を達成できるわけではないが、きちんとロードマップを示して将来へ向けて地道な取り組みをスタートさせる触媒には成り得るはずである。
■戦勝ムードの陣営内で激化する主導権争い
選挙公約で、どういったシナリオを描くか。これは、細川護煕氏の指導力の試金石であり、我々はおおいに注目するべきである。
ただ、原発を再稼働しないのならば、電力各社が背負うことになる原発の廃炉や償却の負担や、将来の課題として先送りされてきた使用済み核燃料を即時に最終処分することが避けて通れない課題として浮上する。細川氏はいいところどりを許されず、実現可能な全体像の青写真を有権者に示す義務があるだろう。
もし、今の戦勝ムードに浮かれて、馳せ参じる恩賞目当ての関係者たちを仕切り切れず、原発を減らしていくための緻密なシナリオを描けないようならば、都知事になっても期待はできない。日本新党時代に自身が主導して立ち上げた非自民連立政権の時と同じで、遠からず空中分解することは避けられないと見た方がよいだろう。
1994年2月、深夜の突然の記者会見で、唐突に、消費税を3%から7%に引き上げる「国民福祉税」を公表し、7%にする根拠を「腰だめの数字だ」と言い放ち、国民的な不信を買った前歴を持つのが、当時の細川護煕首相だ。それなりの成長ぶりを証明できなければ、都知事の座は遠のくはずである。
ちなみに、細川陣営では、資金援助をしたとされる鳩山邦夫氏のグループのほか、民主党、生活の党、小泉純一郎氏らが主導権争いを繰り広げているという。
ただ、今回、「原発即時ゼロ」という公約が、東京都民やマスメディアに注目されている背景として、2度の国政選挙で「原発縮小」を公約に掲げながら、なし崩し的に原発再稼働に突き進み、国民負担を増大化しかねない東京電力への国策支援を強化している安倍政権に多くの人が不安を感じていることは見逃せない。
都知事選が近づいてからも、自民党にとって不都合な、脱原発か否かのワンイッシューの選挙が都知事選としては相応しくないと政権や与党の幹部が公言するなど、あまりにも身勝手な態度が目立ち過ぎた。
加えて、同党に見切りをつけて離党した舛添要一氏を都知事選で推薦することを決めて、小泉進次郎氏に「大義はない」と痛烈に批判されたことも、大きな汚点と言えそうだ。
「消去法でも投票したい候補者がいない」と言われる都知事選だが、少しでも有権者に関心を持ってもらうためにも、各候補者は、脱原発や原発削減といったそれぞれの公約をいかに実現していくのか、リアリティのあるシナリオを提示してもらいたいものである。
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