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森、小泉、安倍のバトルロイヤル
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★「田中良紹氏の視点ー(2014/01/15)」★ :本音言いまっせー
細川護煕氏と小泉純一郎氏の二人の元総理が並んで記者団の前に立ち都知事選挙への出陣を表明したのは、自公の推薦を受けた舛添要一氏が出馬会見を行い、また東京五輪組織委会長に森元総理の就任が予定されていた日にぶつけられた。
細川氏がもう少し早い時期の表明を考えていたのを押しとどめ、この日にしたのは小泉氏の意向だったとされる。だとするならば小泉氏は、自分の前と後の二人の総理にバトルロイヤルを仕掛けた事になる。
この日、小泉氏は「都知事選は、原発ゼロで日本は発展できるというグループと、原発なくして発展できないというグループとの争いだ」と宣言し、原発再稼働を目指す安倍総理に挑戦状を突きつけた。
これに対し安倍総理は「エネルギー政策は国民みんなの課題だ」と「脱原発」が都知事選の争点になることを牽制し、「東京都が直面する諸課題についてバランスよく議論される事を期待したい」と争点を絞らせない考えを示した。
一方、細川―小泉会談がこの日でなければ、自公が推す舛添氏は「史上最高の五輪をめざし、東京から日本を変える」と2020年のオリンピックを前面に押し出し、森元総理の組織委会長就任のニュースと連動して都民の目をオリンピックに向けさせる狙いだったと思うが、それが思惑通りにいかなくなった。
そのせいか森元総理はこの日の講演で「五輪を人質にとって原発をやめさせるかどうかを迫るのは卑怯なやり方だ」と細川氏出馬を批判し、また「安倍政権に大きなダメージを与えかねない事をやるのか」と小泉氏の動きに不満をぶつけた。細川氏出馬を主導したのが小泉氏であればいずれも小泉氏を挑発した事になる。
昔から「鮫の脳みそ」と揶揄されてきた森氏だが、何が卑怯なのか、発言の意味は良く分からない。おそらく流れに逆らわずに泳ぐタイプの森氏には小泉氏らの思考が理解できないのだろう。一方で森氏が安倍総理をどう見ているかと言えば、こちらもあまりに幼稚だと低い評価を下しているのである。
先行き不透明なアベノミクスを「この道しかない」と退路を断ったかのように言う安倍総理を見ると、政治家に必要な融通無碍がなく単純思考だけに思えるが、森氏は昔から安倍氏の事を「単純思考には辟易している」と周囲に公言してきた。しかし遊泳術の森氏は現職総理を利用する事も忘れない。
おかげで政治家出身でありながら政治的中立を要求される五輪組織委会長に就任することが出来た。森氏の就任に反対した猪瀬前都知事は検察のリークで排除され、財界人もみな辞退したのは官邸の意向のおかげである。
森氏は2000年に小渕総理の急死により「密室の談合」で総理に就任した。福田赳夫氏以来実に22年ぶりに「清話会」から総理が誕生した。しかしそれから小泉、安倍、福田と四代にわたって「清話会」の総理が誕生し、今や「清話会」は自民党最大派閥となった。
最大派閥は必ず分裂する。それは世の習いである。そしてそれは自民党を分裂させる。それがこの日に始まった。かつての最大派閥田中派は93年に政治改革を巡って分裂したが、今回は日本のエネルギー政策と五輪を巡って森、小泉、安倍の三人がバトルロイヤルを繰り広げようとしているのである。
かつての自民党分裂は「55年体制」の制度疲労が生み出した分裂劇だった。今回は「3・11」で露呈したこの国の脆弱性が生み出す分裂である。それは自民党と野党の双方に地殻変動を起こし、政治の構図を変えることになるとフーテンは見ている。
ところが巷では「郵政民営化のようにシングルイシューで選挙をやるべきではない」とか
「金銭スキャンダルで辞任した猪瀬氏の後に金銭スキャンダルで総理を辞めた人がなるべきではない」とか「もっと若い候補者が出るべきだ」とか言われている。これらはいずれも「木だけを見て森を見ない」稚拙な議論である。
シングルイシューと言ってもエネルギー政策と郵政民営化とはレベルが全く異なる。郵政民営化は国のありようを変える話にならないが、エネルギー政策は国の根幹にかかわる。
それによって根本から国の仕組みは変わるのである。シングルイシューだから駄目だと片づけられる問題ではない。
金銭スキャンダルが問題ならば細川氏は説明すればよい訳だが、この国は先進国ではありえないほど異様に金銭スキャンダルを問題にする。それが検察の政治操作を許しこの国の民主主義を歪めてきた。これまでメディアの洗脳によって騙され、特捜検察が行った数々のでっち上げを許す体質から国民は脱却すべきである。
若い政治家を待望するというのも異常としか思えない。政治家に求められる資質は若さではない。洞察力、経験、知恵などが何よりも求められる。40年ほど日米の政治を取材してきたフーテンの経験から言えば、政治家に向いているのはむしろ老練な知恵と経験を持つ年寄りである。
世界最速の高齢化社会を迎える日本がそれをピンチにするのではなく、発想の転換によって世界最先端の国づくりをするのだと思えば、「3・11」から導き出された二人の元総理の危機感はチャンスを到来させる入り口になる。そこをしっかり見極めて若い世代が続くべきではないかとフーテンは考える。
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