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宇都宮支持をいう前に
東京都知事選の公示日(1月23日)が近づくなか、さまざまな候補者擁立の動きが伝えられている。しかし、表立った動きとしては去る12月28日に宇都宮健児氏が一昨年12月の都知事選に続いて再出馬の意思を表明したにとどまり、その他の候補者擁立は越年となった。このような状況の中で、どの政党も多くの団体、個人も態度表明を控えているが、革新陣営に属する団体、個人の一部では宇都宮氏の立候補表明を歓迎する動きがみられる。
しかし、こうした宇都宮支持者の動きを「安倍政権の暴走を止める」という大義のもとに無批判に支持できるのか、私は昨年末以降、疑問に感じてきた。そこで、宇都宮氏を支持するグループが予定している宇都宮氏推し出しのキックオフ集会(1月8日)、および、それに先立って宇都宮氏が予定している都知事選に臨む政策発表の前に、都知事選の候補者選考に関する私の見解を示すことにした。
今、宇都宮氏の再立候補について発言するに至った経緯と動機
私は東京都民ではなく、都知事選に投票権を持っていない。そのような私が不特定多数の人の目に触れる私設のブログで宇都宮健児氏の都知事選立候補について、より端的に言えば宇都宮氏の都知事候補としての適格性、宇都宮氏を支持する選挙母体の資質について、意見を述べるのを唐突に思われる人が少なくないだろう。そこで、今回、私が以下のような連載記事を書くに至った経緯と動機をはじめに説明しておきたい。
私は前々回の都知事選(2011年4月10日投票日)にあたって、革新統一候補の政策立案(正確にいうと候補者が掲げる政策の参考となる政策分析と提言)にメンバ−の1人として関わった。正確にいうと、石原都政を主な分野ごとに批判的に検証し、これに代わる都政のビジョンを策定することを目的に2008年12月に発足した「新東京政策研究会」(代表者・渡辺治氏)に財政分野の研究グル−プの1人として参加した。共同研究の成果は2011年3月に『東京をどうするか――福祉と環境の都市構想』(岩波書店)として公刊されている。その間、2度、共同研究の中間成果を発表する公開シンポジウムが開催され、それぞれの機会に私は新銀行東京の財政分析、東京都の財政分析と提言を論題として報告をした。
前回の都知事選(2012年12月16日投票日)に当たっては、宇都宮健児氏が出馬表明した直後に熊谷伸一郎氏(岩波書店社員)から、新銀行東京について宇都宮氏にレクをしてもらえないかという要請があり、これに応じて宇都宮氏に新銀行東京に関する私なりの知見と見解を説明した。この時、案内役を務めたのが河添誠氏だった。熊谷氏、河添氏はこの連載記事の続編の中でしばしば登場するが、当時私は熊谷氏が宇都宮選対の事務局長を務めるとは思いもよらなかった。また、河添氏が宇都宮選対のメンバーに加わっていたことを知ったのもごく最近のことである。
今回の都知事選に当たっては、昨年12月26日にA氏から、立候補を予定している宇都宮氏の政策を策定する委員に加わってもらえないかという依頼を受けた。しかし、この連載記事の4回目で詳しく触れるが、前回2012年の都知事選以降、宇都宮氏と幾度か行動を共にし、宇都宮氏の言動を近くで見聞きした体験から私は、宇都宮氏が都知事に最適任の人物と言えるのか疑問を感じた。さらに、次回以降、詳しく紹介する「澤藤統一郎の憲法日記」で連載され始めた「宇都宮健児君、立候補はおやめなさい」で指摘された宇都宮氏の資質、旧宇都宮選対とその中心メンバ−の資質・理性と道義に関わる品性、選挙資金収支の透明性、適法性にも強い関心を持った。
こうした問題点について納得できる状況に至らなかったので私は宇都宮氏の出馬を前提にした政策立案のための委員に加わることを辞退した。
市民運動全般に通じる悪弊の氷山の一角
辞退の返答を思案する過程で私が入手した旧宇都宮選対の体質に関わる情報、それを正すために宇都宮氏がどのように対応したかを示す情報は、私自身が近年、市民運動に係わる中で体験したいわゆる革新陣営(個人か団体かを問わない)の中に少なからず存在する言動の内外落差――対峙する陣営に対して向けるのと同じ反民主主義的体質、個の自立の欠如、身内の弱点を自浄する相互批判を回避・抑制する悪弊に染まっている弱点――を感じた。
これは宇都宮氏の再出馬にどう向き合うかを考えるうえでゆるがせにできない問題であると同時に、それを超えた日本の革新陣営と市民運動全体に再考を迫る問題と思えるので、問題が具体的に表面化した実態を題材として私の見解を明らかにすることにした。日本の市民運動に民主主義的理性を根付かせるためにこの連載記事がオープンな議論の一助となれば幸いである。また、告示日ぎりぎりまで最善の革新統一の都知事候補を選考する努力の一助になることを願っている。
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