39. 2014年1月06日 21:26:43
: esmsVHFkrM
>>24、「で爺」、署名はないが、IDからそうと判断する。 早速、ご紹介いただいた日本駐英大使の反論を読んだ。 この件については、君と別スレにおいてすでに議論したところであるが、わたしの予想通りで最悪の反論がでーリー・テレグラフに掲載されてしまった。ほら、言ったとおりだろう。 これはもう大人と子供でまったく勝負にならない。 中国大使の論文 http://www.telegraph.co.uk/comment/10546442/Liu-Xiaoming-China-and-Britain-won-the-war-together.html 日本大使の反論 http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/asia/japan/10552351/China-risks-becoming-Asias-Voldemort.html 比較すれば一目瞭然で、勝敗どころか、日本大使の反論がおよそ高等教育を受け駐英大使を務めるインテリのレベルではないことが歴然だ。中国大使はこれを読んでさぞかし大笑いしたことだろう。わたしも官僚利権政府=安倍自民党=右翼保守が大嫌いだしどうせ安倍自民党政府の外務官僚のレベルはこの程度だからと(そうはっきり別スレに書いたのは君も知っているだろう)、大笑いしてやろうと思っていたが、ここまでひどいとさすがに恥ずかしさが勝ってとても笑えない。 どこがダメか読めば一目瞭然で解説するのも野暮だが、君は依然として遅いことだけを問題にしているみたいだから、念のために書いておこう。 まず、君の言うとおり遅いのが致命的だ。こんなもの即反論できなければそれだけで弱いと判断される。反論が遅くなれば遅くなるほどハードルが高くなるのにその反論の文章がお粗末過ぎる。これなら、即反論していたって負けだ。 文章が''Japanese English''だ。明らかに日本語の原文をを日本人が英訳している。だからそのため乗じる典型的な日本人表現(''squarely faces this history''は「この歴史を真摯に直視し」だろう、''squarely''なんて「真摯に」が乱発される日本役所/大企業の英文書以外に出現することは稀だ)がてんこ盛りだ。 これはネイティブ・スピーカーのチェックを一切受けていない。誇り高い外務官僚は外部の外人のチェックなど受け入れないということだ。 イントロが最悪だ。論争文書はイントロが命だ。読者が読む読まないはここで決まる。忍耐深い読者だってその後の読みにおけるバイアスはここで決定される。それなのにこの日本大使のイントロはこの始末だ。 ''Everyone knows that relations between Japan and China are strained, especially in the East China Sea. Japan has been exercising utmost restraint. When a Chinese destroyer directed its fire-control radar at a Japanese destroyer last year, which in normal naval practice might be regarded as an act of war, the Japanese vessel made an evasive manoeuvre rather than risk further endangering the situation. Chinese ships repeatedly intrude into Japanese territorial waters surrounding the Senkaku Islands, which have been peacefully under Japan’s sovereignty for 120 years.'' 前説(中国大使ではあのハリー・ポッターの例のヴォルデモートのくだり)もなくいきなり、 ''Everyone knows that relations between Japan and China are strained''と来て(''Everyone knows''は馬鹿っぽい)''especially in the East China Sea''(''especially''も馬鹿っぽい)と畳み掛けられちゃ、読んでるイギリス人は、「いきなり不愉快な揉め事(領海紛争)の話でその一方の当事者の言い分かよ」とうんざりすることだろう。中国側はもめてるなんて一言も言わず、したがってその主張が揉め事の一方の当事者の言い分だという印象を巧妙に避けているのに、こっちは無邪気にいきなりこうだ。 それで、さらに事件そのものの説明もなくいきなり例のレーダー照準事件の話の細部に渡る日本側言い分の長文となる。またまたうんざりだ。ほとんどのデーリー・テレグラフの読者はもうここで読むのを止めちゃったんじゃないのか。 その後も非常に読みにくい。言い足りないことを後からくっつけるために関係代名詞節を乱用するという日本人英語の悪いくせが頻出して、概して一文が長すぎてしかもリズムが悪いと言うかないというか。読者は何度も前を読み返すことを強いられる。これに比べると中国大使の文章は、一文が短くまた英語固有のリズムにしたがっていて、読みやすくまた読んでいて軽快だ。 論理が明瞭でない。細かい話(中国の悪口か日本がいかに正しいかという話)ばかりが脈絡もなく次々に出てくる感じで、論理が見えないし追えない。だから、イントロの印象もあいまって、紛争の一方の当事者が自分の言い分を子供のように次から次から思いつくまま言い立てている印象になっている。ここも、中国大使の整理された単純な論理の自然な展開にしたがって論拠や例証が整然と出てくる構築的な論文と著しい差がある。 またレトリックがお粗末だ。中国側が使ったヴォルデモートを出してきて中国こそヴォルデモートになるのかとやったって、読んでる方は二番煎じだしヴォルデモートがどうしたという感じだ。とても英国人に親しみを感じさせるようにはならない。 最悪は例の''The Railway Man''の同じく中国の二番煎じでこうだ。 ''As in the case of the Japan-UK relationship, exemplified in the meeting between Eric Lomax and Takashi Nagase described in the book The Railway Man, the only way to heal the wounds of the past is through the pursuit of reconciliation. But, critically, it takes two for this to be achieved.'' そもそも中国側は、泰緬鉄道建設における英軍捕虜虐待を日本の軍国主義の暴虐とそれが復活する脅威のイメージに使っているのに、その泰緬鉄道の小説本で日英双方の主人公が結局和解したからと言って、それと同じで中国は和解に向けて歩み寄るべきだと言うのは無理がある。日本の駐英大使が泰緬鉄道建設ついて書いているのにそれにおける英軍捕虜虐待については一言もなく「過去の傷を癒す唯一の方法は和解に努めることだ」なんて言えば、ふつうのイギリス人は怒るだろう。傷つけた側がその蛮行についての反省の言葉なくのうのうと傷つけられた側に言えることではないからだ(スターリニズムへの復帰を唱導するロシア政府の駐日大使が、日本人に向けて「小説ではシベリア強制収容所で出会った看守(通訳でもいいが)のロシア人と抑留捕虜の日本人も結局和解したんだから、そんな過去の傷を癒す唯一の方法は双方で和解に努めることだ」と書いたのを産経新聞で読むことを想像すると感じが出るんじゃないのか)。 これに加えてイギリス人が怒りそうなところがもう一箇所ある。 ''Following the great sacrifices made during the Second World War by the United Kingdom, among others, our two countries are now close allies in the pursuit of peace, sharing the fundamental values of liberal democracy.'' これは、「英国が払ってくれた多大の犠牲のお陰で日本は民主主義国になれて」と言っているつもりかもしれないが、その旧敵国に''Following the great sacrifices made during the Second World War by the United Kingdom''とぬけぬけと書かれちゃふつうのイギリス人はムッとするだろう。よりによってどうして''Following''なんだろうね。''Thanks to''とあったのをやたら大使が感謝しちゃいかんと誰かが言い出して無味乾燥の''Following''に替えられたのかもしれない。 もう切りがないのでここら辺で止めるが、とにかく日本大使の反論はとんでもないしろものだ。 おそらく、担当者が書いた原案がお粗末な上に(どうせ上からここ直せそこ直せと言われてズタズタになるからと通り一遍で月並みな原案を書いたはずだ)、それが大使館内ラインや本省関係部局を回る間に時間が空費され、これも入れろあれも入れろとどんどん膨らんだ挙句にそれじゃ長すぎるから縮めろとやったから、やたらいろんなことが入っているがが一つ一つが生煮えで(論証もなくレトリックもなく脈絡もなく論理もなく)雑然と並んでいるという文章になったに違いない。 これは、外務省に限らず日本の官庁や大会社の病理だ。担当者は俺は使われているだけで責任はないと思い、ラインの上長は俺は追加修正して通しただけで責任はないと思い、大使は俺は上がってきたものにサインしただけで実質の責任はないと思っているから、誰にも責任がなくそれゆえに中国と本気で必死に論争しようという人間が一人もいないということになる。まさに''A camel is a horse designed by a committee''ということだ。 結局、中国大使が「安倍靖国参拝はあの敗れたはずの日本軍国主義が復活している現れでこれは戦後平和と国連体制への挑戦だ。この脅威に対して旧同盟国の中英は共同して対処しなければならない」と書いたのに対し日本大使は「日中は対立しているが、日本はこんなにいい子なのに中国はこんなに悪い子だ。中国の言う靖国参拝と軍国主義復活は間違いだ。日本が対話を求めているのだから中国はそれに応じて和解に努めなければならない」(論理が曖昧でまとめにくいが)と返したわけだ。 まさにわたしが別スレで危惧した阿修羅でのネトウヨのやり方を駐英日本大使が実際にやったわけで、相手の論点に構わずこっちが言いたいことを並べてとにかく言い返しておけば反論になるとそれを推奨していた君にはさぞかし本望じゃないのか。 これで英国と英語圏の世論はかなり安倍自民党政府にネガティブになるんだろう。安倍自民党政府とそれに支配される日本の国際的孤立化が一層深まるのは確実だ。 夜明けは案外近いのかもしれないと思う正月だ。 あ、それから、君の間違った論拠による主張はわたしが知る限り(正月2日以来)今日6日までの5日間でもう2件だ。 |