http://www.asyura2.com/14/senkyo159/msg/110.html
Tweet |
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2014/01/tpp-c756.html
2014年1月 6日
民主党政権時代に農水相を務めた山田正彦氏が書き下ろしの新著
『TPP秘密交渉の正体』(竹書房新書)
を出版された。
山田氏は2010年の農水相在任時からTPPに反対の姿勢を貫いてきた。
山田氏は新著のまえがきに、
「米国の言いなりになってはならない」
と記す。
この言葉は反米感情から来るものではない。
TPPの内容を精査し、その本質を見抜いた結果として表出される言葉である。
本書の37ページには次の記述がある。
「石橋湛山も米国により失脚させられたが、当時、岸信介と総裁選挙を争って辛勝した時に「米国の言いなりになってはならない」と野太い声で語ったのをテレビの映像で見て、感動した。」
山田正彦氏はいま、石橋湛山の言葉に思いを重ねている。
山田氏が新著冒頭に、
「「TPPは農業と経済の問題ではないのか。よくわからないからひと言で説明してほしい。」とよく聞かれる。TPP(環太平洋経済連携協定)は医療、介護、教育、公共事業など、あまりにも多岐に及んでおり、かつ秘密交渉されているので、簡単に説明するのは困難だ。」
と記されているように、TPPの内容は複雑で、ひと言で説明するのは困難である。
それでも、マスメディアの情報操作によって、TPPが自由貿易を推進するもの、国民に利益を提供するものであるとの刷り込みが行われているために、TPPの本質、TPPの危険がほとんど国民には知らされていない。
山田氏は、
「強いて言えば、すべてを弱肉強食の市場原理のもとにおこうとしているのだ。巨大なモンスターのような多国籍企業のために。」
と記している。
日本社会、さらに言えば日本の国全体を、根底から変質させるマグニチュードを持つのがTPPである。
日本がこの枠組みに組み込まれてしまえば、もはや引き返すことは極めて困難になり、日本は根底から変質させられてしまうことになるだろう。
すべての国民がTPPの正体を知り、その是非を判断し、手遅れにならぬように対処することが必要である。
山田氏の新著は、TPPが持つ危険な側面を、網羅的に捉え、具体的な記述をもって私たちに示すものである。
中野剛志氏が著した『TPP亡国論』(集英社新書)
が、TPPの本質を日本国民に伝える先駆者としての役割を果たしたが、日本がいよいよTPPの入り口に差しかかろうとするいま、全国民が山田氏の
『TPP秘密交渉の正体』
を熟読する必要があると思う。
TPPは関税と農業の問題ではない。
農業問題は極めて重大であるが、それ以外に、医療、食料、保険、労働、社会構造などの多面にわたって、決定的な影響力を発揮することになる問題である。
本ブログ、メルマガでも紹介してきたが、
元農水官僚で現在は東京大学教授を務める鈴木宣弘教授の著書
『食の戦争 米国の罠に落ちる日本』(文春新書)
と、
「食政策センター ビジョン21」を主宰する安田節子氏による2009年刊行の著書
『自殺する種子‐アグロバイオ企業が食を支配する』(平凡社新書)
を合わせて、すべての国民が熟読するべきである。
食料と農業は人間の生存にとって、根源的に重要なテーマである。
遺伝子組み換え食品や成長ホルモン満載の輸入牛肉を大量摂取していることにより、知らぬ間に私たちの肉体が蝕まれてゆく危険があることを、私たちは事前に知っておく必要がある。
マスメディアが真実の情報を提供しないいまの日本の現状のなかで、私たちが真実の情報を入手できる限られた媒体が、インターネットの情報と単行本の世界なのである。
TPPの怖さは、秘密協定という点にある。
秘密協定であり、締結後も4年間秘密保持義務がある。
このことと特定秘密保護法が直接にリンクする。
安倍晋三政権は特定秘密保護法を強行制定し、その対象に外交機密、TPPの内容を指定し、TPPの内実を一切国民に知らせぬ考えである。
TPPがあるからこそ、安倍政権は無茶苦茶な国会運営を実行して、現代版治安維持法と呼ばれる特定秘密保護法を制定したのである。
テレビが見せる絵は、農家が鉢巻きを巻いてTPP粉砕を叫び、こぶしを上げる姿である。
関税が撤廃されれば、消費者の手元に安価な海外製品、海外農産物が提供される。
日本の輸出産業は輸出を増大させて日本経済にプラスの恩恵がもたらされる。
しかし、輸入農林水産物に押されてしまう農林漁業関係者が、自分たちの利益のために反対しているのがTPP。
これが、メディアが説明するTPPである。
詳しいことを知らない国民は、この説明に騙されてしまう。
安倍晋三氏は昨年3月15日に、TPP交渉に参加することを表明した記者会見で次のように述べた。
「今、日本は大きな壁にぶつかっています。少子高齢化。長引くデフレ。
我が国もいつしか内向き志向が強まってしまったのではないでしょうか。
その間に、世界の国々は、海外の成長を取り込むべく、開放経済へとダイナミックに舵を切っています。
アメリカと欧州は、お互いの経済連携協定の交渉に向けて動き出しました。韓国もアメリカやEUと自由貿易協定を結ぶなど、
アジアの新興国も次々と開放経済へと転換をしています。
日本だけが内向きになってしまったら、成長の可能性もありません。
企業もそんな日本に投資することはないでしょう。優秀な人材も集まりません。
TPPはアジア・太平洋の「未来の繁栄」を約束する枠組みです。」
この説明だけを聞けば、日本がTPPに参加することは良いことだとの感想が生まれてきてしまうかも知れない。
しかし、TPPは「内向き」とか「外向き」とかの言葉で示される、日本の姿勢を示すものではない。
日本の諸制度を米国化するか、それともしないか、という問題でしかない。
日本の市場は関税率などの各種指標で評価してみて、十分に開かれた市場である。
TPPに参加しないから閉鎖的だと批判されるいわれは皆無である。
つまり、現状で日本はまったく「内向き」ではないのである。
TPPは単に、米国が日本を米国化しようとするものであり、それは米国の利益であって、日本の利益ではない。
山田氏の著書は14の章によって構成されている。
各章に、
食の安全、農業、医療・介護、雇用、軽自動車、地方自治、ISD条項、インターネット規制
の各論の核心が記述されている。
同時に、
TPPの原型であるNAFTAの真実、
米韓FTAを発効させた韓国の現実
経済のグローバル化、
秘密協定の本質
という重要テーマが掘り下げられている。
TPPの現実を知る格好の教科書になっている。
米国の合衆国憲法では連邦議会に外交交渉権があることとされている。
TPA法により、議会が大統領に一括して交渉権限を委任しない限り、大統領が外交交渉権を振るえない。
TPA法は2007年に期限が切れて、現在は失効中である。
この法律が議会を通過しなければ、大統領権限によるTPP調印は得られない。
2014年は中間選挙の年であり、時間が経過するに従い、大統領によるTPP調印は困難な情勢になる。
山田氏は2013年11月のインドネシア・バリ島でのAPEC総会でのTPP大筋合意が不成立になったことで、
TPP妥結が困難になっているとの状況判断を示す。
しかし、これと同時並行で日米協議が行われている。
すでに日本は並行協議で、米国に全面譲歩を繰り返しており、安倍政権が並行協議で、
TPPで求められている以上のものを実現してしまう可能性がある。
山田氏はこれを最悪の事態と警戒している。
山田氏は、
「一人一人は小さな声でも、皆で力を合わせて、何としても、秘密裏に進められているTPP交渉を阻止しよう。私は闘う。」
の言葉で本文を締め括っている。
山田氏が述べるように、日本の主権者が力を合わせて、このTPPを阻止しなければならないと思う。
そのためには、一人でも多くの国民が、TPPの正体を知らなければならない。
その正体を知れば、恐らくはほぼ全員がTPP反対の意思を確認できると思う。
日本の国を守るのは、一人一人の主権者国民である。
そのことを忘れてはならない。
山田氏が記述する各論について、重要と思われる点だけ列挙しておきたい。
1.TPPの原型と見られるNAFTAの真実を知ること
メキシコでは、NAFTAによって、メキシコの農業が栄えると期待されたが、結果は完全に逆であった。
メキシコ農業は米国巨大資本の支配下に組み込まれ、農家は壊滅し、多くが低賃金無産労働者として米国資本に搾取される存在に転落した。
2.日米事前協議の惨憺たる結果
米国の自動車輸入関税撤廃は、日本の輸入関税撤廃後にまで先送りされることが確定した。
郵政株式の売却が前倒しされ、郵便局でアフラックの生命保険商品を販売させられることになった。
3.遺伝子組み換え食品の表示義務が排除される
食の安全を確保することが事実上不可能になる。
成長ホルモン満載の牛肉が野放しになる。
4.米国は食糧を外交上の武器とする政策を採用
食糧を支配することで国家を支配下に置くことが可能になる。
日本の農業もメキシコ同様に、米国巨大資本の支配下に組み込まれる。
5.公的医療保険制度が崩壊
貧乏人の低レベル公的医療保険制度と金持ちの医療サービスの並立制に移行する。
6.安価な外国人労働力が日本国民の賃金水準を引き下げる。
TPPは人に移動の自由化を含む。解雇の自由化が促進され、日本国民の労働賃金が一気に引き下げられることになる。
7.ISD条項で国家の主権は失われる
世銀傘下の裁定は秘密、非公開の仲裁で、不服申し立ても不可能
8.インターネットの自由が奪われる
ACTA法が実質審議もなく可決成立され、インターネット上の著作権侵害事案に刑事罰が科せられることになった。
つまり、公権力が刑事罰を根拠に、インターネット上の情報発信に対して介入する根拠が創設されたのである。
すべては、グローバルに活動する巨大資本の利益追求のためである。
1%の利益のために99%の利益を無視する、侵害する方向に、歯車が回転している。
それを全面支援しているのがいまの日本の安倍晋三政権であることは言うまでもない。
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK159掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。