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検察が刑事裁判で行っている「証人テスト」って、どんなもの?
http://bylines.news.yahoo.co.jp/maedatsunehiko/20140106-00031283/
2014年1月6日 7時0分 前田恒彦 | 元特捜部主任検事
【証人テストの根拠】
刑事訴訟規則には、「証人の尋問を請求した検察官又は弁護人は、証人その他の関係者に事実を確かめる等の方法によつて、適切な尋問をすることができるように準備しなければならない」との規定がある(第191条の3)。
その準備の一環として証人尋問の前に行われるのが、「証人テスト」と呼ばれる証人との打ち合わせだ。
法廷での証言が不慣れな証人から限られた尋問時間内で十分な証言を引き出すべく、検察側のみならず弁護側も現に行っており、かつ、行うべき手続と言える。
【検察が行ってきた証人テストの実態】
検察は、自らの尋問事項をあらかじめ書面で用意するばかりでなく、弁護側や裁判所から出されるであろう尋問の内容まで想定した上で、証人と複数回にわたって入念な打ち合わせを行う。
多くは「問い」と「答え」という形で用意している尋問事項を順次尋ね、その返答を求めて内容を確認していくといったやり方だ。
尋問事項書は、ワープロソフト「一太郎」や表計算ソフト「エクセル」などを使って作成している。
その中で、検察にとってプラスの返答につながる尋問をいかにクローズアップさせるか、どのような設問の順序や組立て、山場の作り方が最も効果的かなどを検討する。
また、被告人の有罪立証や悪性立証に向けてマイナスの返答につながる尋問をいかに公判に出さないようにするか、仮に弁護側の尋問によって出さざるを得ないとしても、あらかじめ検察の尋問の中で何らかの合理的な説明を付けさせることでマイナスを少しでも減殺できないかといった点を検討し、尋問事項書の改訂を進める。
場合によっては証人に対して「その点は、こちらから尋ねることはない。弁護側から尋ねられた場合には答えてもらうことになろうが、弁護人の質問をよく聞き、聞かれたことに限って答えるように注意されたい」といった指示を与えることもある。
捜査段階の供述調書と食い違った証言をする証人については、その理由を吟味した上で、調書の内容に従って記憶喚起を図ったり、再び「自白」を迫るといった対応をする。
ただ、実質的には供述調書や他の証拠に基づく新たな記憶の刷り込みに近い。
それでも証言を変えそうにない証人の場合には、法廷での証言態度や証言内容が信用できないものであることを強調する一方、いかにして供述調書の方をより信用性のある証拠として裁判所に採用させるべきかを検討・準備する。
事案によっては尋問事項書のドラフトを幹部に上げる必要もあるし、証人ともども「問い」と「答え」の内容を覚えこむくらいまでリハーサルを繰り返す場合もある。
【検察による証人テストの問題】
問題の根底にあるのは、実質的には「取調ベ」と同様のやり取りが行われている上、捜査段階の取調ベ以上に証人に与える影響が大であるにもかかわらず、証人との具体的なやり取りが外部から見える形で記録として残されていないという点だ。
証人が証人テストの中で新たに思い出した事実を供述し始めた場合、確かに検察にとってプラスに働くものであれば、証人尋問の中に盛り込んだり、別に供述調書を作成して証拠化を図るはずだ。
しかし、それがマイナスに働くものであれば、よほどの重要証言(と検察が考えるもの)でもない限り、往々にしてそのまま「黙殺」されてしまうだろう。
検察は、わざわざマイナス事実を自らの尋問の中に盛り込まないし、弁護側や裁判所が問題に気づかず、彼らの尋問にその話題が出てこなければ、真相はそのまま闇から闇だ。
【問題の抜本的解決策】
現在、裁判員裁判対象事件や特捜事件など一部の事件の取調べで全面可視化が試行されているが、基本的には逮捕勾留された被疑者に限られている。
しかし、事件の中身や被疑者・参考人といった対象者を問わず、任意・強制段階や起訴前・後といった時期を限定せず、証人に対する証人テストも含め、およそ検察官が誰かを取り調べる手続については、その全過程を録音録画し、証拠として保全しておくべきだろう。
これにより、事件関係者の供述の中から都合のよい部分のみを切り取って供述調書にしたり、証言させたりするといった恣意を防止するとともに、供述の押し付けなどを防ぐこともできる。
本当に任意の供述がなされているのであれば、こうした全面可視化の実施により、不当な言いがかりから現場の第一線に立つ捜査官らを守ることもできる。
特に証人テストの場合、既に捜査当局が十分に捜査を尽くして起訴した後の話であるし、公開の法廷で証言することが前提となっている手続である以上、捜査段階の取調べに比べると、全面可視化による弊害もないはずだ。
前田恒彦
元特捜部主任検事
1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。獄中経験もあり、刑事司法の実態や問題点などを独自の視点でささやく。
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