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『ニューズウィーク日本版』2015−2・3
P.15
「オバマ一般教書が象徴するアメリカ外交の混沌
大統領が有終の美を飾るために必要なのは原則論だけでなく実効ある政策だ
先週、オバマ米大統領にとっては最後から2番目となる一般教書演説が行われた。4分の3もの時間が割かれたのは国民の関心が高く、争点のはっきりした内政問題。特に格差是正への取り組みをオバマは強調した。
対照的に、外交問題の扱いは随分軽かった。無理もない。昨今の国際政治は混乱を極め、世界におけるアメリカの役割や影響力、国益の定義もはっきりしない。「アフガニスタンにおける戦闘任務は終わり」と言いながら、同国やイラクでの米軍駐留が続いていることや、その最終的な使命や目的については触れずじまいだった。
冷戦終結後のアメリカ外交の原則についての説明はよくできていた。「情報に振り回された性急な判断」を慎み、「問題が発生してもすぐには」派兵せず、「軍事力を背景に外交努力を重ね」「他国との協調体制をテコにする」と言う。
だが、オバマがアメリカの国力と外交力、結束力を総動員して対処したはずの紛争では、思わしい結果は出ていない。確かにアメリカは空爆を先導し、イスラム教スンこニ派テロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)のジハーディスト(聖戦士)がイラクやシリアで勢力を拡大していくのを「食い止めつつある」。しかし、これらの国々について最終的に何を目標としているのかは見えない。
シリアでは敵の敵も敵?
オバマはISISと戦う一方、同じくISISと戦うシリアのアサド政権とは対立している。
「シリアの穏健な反体制派への支援」も表明しているが、経験の浅い反体制派兵士が殺戮されるのは傍観していた。そこには明確な戦略は存在せず、引き延ばし戦術があるだけだ。
「幅広い協調体制にはアラブ諸国も含む」とオバマは言うが、それも心もとない。アメリカと国益が著しく異なる国々もあり、足並みはそろわないのだから。
さらに「大国の小国いじめは許さない」という原則から、ロシアの軍事介入に抵抗するウクライナへの支持を表明。欧米が一致団結して行っている制裁の効果もあってプーチン大統領は孤立し、ロシア経済は窮地に立たされているとした(実は原油安の影響が大きいのだが)。
しかし世界に目を向ければ、勇ましい言葉もむなしく響く。シリアやエジプトやアフリカの国々で続く暴力や弾圧にアメリカはほとんど打つ手がない。
筋が通った外交政策もある。キューバに対する制裁解除は当然だろう。イランとの核交渉には大きな進展があり、「核開発計画を中止させ、核物質保有量を削減させた」とオバマは述べた。その上で、もし議会で追加利裁法案が可決される事態になれば「外交努力は確実に水泡に帰す」とし、拒否権を行使すると明言した。
「世界中から非難を浴び、テロリストの勢力拡大の口実になっている」グアンタナモ米海軍基地のテロ容疑者収容所の閉鎖に触れると、議場には不気味な静寂が広がった。プッシュ前政権で行われていた拷問を禁止すると宣言した際にも、拍手はまばらだった。
ここがアメリカ外交の情けないところだ。特定の重要な課題、特に予算が絡むとなると、議会が進展を阻む。最近の議会は極めて偏狭でタカ派的だ。オバマが演説であまり外交問題に触れないのも不思議ではない。
しかし、好むと好まざるとにかかわらず、アメリカは今後も世界に関わっていかなければならない。
フレッド・カプラン
(スレート誌コラムニスト)」
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『ニューズウィーク日本版』2015−2・3
P.15
「失業率改善の幻想が雇用の深刻さを覆い促す
アメリカ経済は「成長している」―そんな頼もしい発言が飛び出したオバマ米大統額の一般教書演説。だがその根拠となった数々の指標は、実態を反映していないかもしれない。
演説では失業率が5.6%に低下したと強調されたが、経済政策研究所によれば、職が見つからないために職探しを諦めたいわゆる「脱落者」を含めると、この数字は9.1%に上昇するとみられる。彼らは求職者とは見なされないため、失業率の統計に含まれない。
「現在の労働市場では、表向きは好調な失業率の陰で雇用の弱さがかなり過小評価されている」と、同研究所は今月発表した。「その背後には、雇用統計から外れた脱落者が大量に積み上がっている。彼らは雇用か著しく改善しない限り就職も職探しもしようとしないだろう」
オバマが政権に就いた09年以降で経済は改善しているものの、状況はいまだ厳しい。一般教書では富裕層増税や2年制公立大学無料化など格差是正構想が語られたが、失業者のセーフティーネットに関する言及はなかった。「脱落者」たちの存在も、忘れられたままになりそうだ。
ハワード・コプロウイッツ」
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