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『ニューズウィーク日本版』2015−2・3
P.37〜39
「ロシアと欧州極右の蜜月
ヨーロッパの極右政党が 次々とロシアを訪問
彼らと緊密な関係を結ぶプーチンの狙いは
昨年11月、ドイツの新興極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の幹部2人が駐独ロシア大使館に招かれた。地元メディアの報道によれば、ロシアのウラジーミル・グリニン大使が2人に戦略的助言を与えたとされる。
この件について、大使館側はノーコメントだが、招かれた側のAfD報道官クリスチャン・ルースは雄弁だ。彼によれば、伏線は大衆紙ビルトの報道にある。そこではロシア大統領ウラジーミル・プーチンが、資金や金塊の提供を通じてAfDに影響力を行使しようとしている、とされていた。
「われわれはそうした動きは把握していなかったし、党の金庫を確認してもロシアから提供されたものはなかった。そこでグリニン大使に連絡すると、報道にはコメントしないが、面会は歓迎するとのことだった」とルースは言う。「会談ではさまざまな問題について互いの見解を話した。それはいろんな国の大使とやっていることだ」。同じようなことは他の政党もやっている、とルースは付け加えた。
それでも欧州各国は神経をとがらせている。この数カ月前にも、グリニンはAfDの政治家2人と会談していた。昨秋にはロシア系のファースト・チェコ・ロシア銀行がフランスの極右政党「国民戦線」に940万ユーロの融資を提供。同党のマリーヌ・ルペン党首はモスクワを訪問し、ロシア政府高官と協議を行っている。
オーストリア自由党のハインツクリスティアン・シュトラッヘ党首も「信頼醸成のため」と称してモスクワを訪問。昨年10月にはイタリアの極右政党「北部同盟」のマッテオ・サルビニ党首がクリミアとモスクワを訪れ、「ロシアは対話を望んでいる」と発言している。
ハンガリーの第3党である「ヨッビク」はロシア政府と特に緊密な関係を維持している。
同党を率いるガボール・ボナは昨年5月にモスクワで行った演説で、アメリカを「ヨーロッパの奇形の子孫」と呼んだ。また同党の外交政策を仕切るベラ・コバクスは「ロシアのスパイ」とされている。
そのコバクスは欧州議会議員(MEP)だ。ヨツビタからはほかに2人がMEPに選ばれている。またイタリアの北部同盟は5人、オーストリア自由党は4人、ギリシャ「黄金の夜明け」は3人、スウェーデン民主党は2人、ベルギーの「フラームス・ベラング」は1人、そしてフランスの国民戦線は24人を欧州議会に送り込んでいる。
彼らに加えて、現在の欧州議会にはロシアに対して柔軟な姿勢を示すポーランドの「ノワ・プラウィカ」やイギリス独立党の議員もいる。今の欧州議会ほど「ロシアの友人」が集まる場所はほかにない。
欧州を内側から揺さぶる
「今ではMEPの5人に1人が急進的で少数派、非主流の政党に属している」と言うのは、政治資本研究所(ブダペスト)所長で欧州における急進派勢力とロシアのつながりに詳しいペーター・クレコだ。「これらの政党と緊密なつながりを維持することで、ロシアはヨーロッパを内側から不安定化させることができる」
両者の「友情」は、聞き心地のいい言葉だけではない。昨春には主として急進的政党に属するMEPや政治家たちがクリミアに招かれ、ロシア編入をめぐる住民投票の監視に当たり、投票は「自由で公平」に実施されたと宣言している。
イタリアの中道右派政党に所属するMEPのファブリツィオ・ベルトットに至っては、西側諸国はロシアへの批判をやめ、対話を始めるべきだとも主張している(制裁でイタリア産チーズの輸出が打撃を受けているという事情もある)。
クリミアの監視団にはヨッビクのコバクスやフランス国民戦線のエイメリック・ショーブレード、オーストリアのエワルト・スタッドラー、さらにはドイツ左翼党やオーストリア自由党のメンバー、北部同盟その他の極右・極左政党の複数のメンバーも含まれていた。
「ウクライナ東部の人々は、ウクライナにとどまることを受け入れたロシア人だ」とベルトツトは言う。「彼らはウクライナ政府がEUとより強力な関係を結びたいと考えているのを知り、『ロシアと一緒になるほうがいい』と声を上げたのだ」
欧州議会の5分の1といえば、過半数には程遠いが、支持者を増やす急進政党は各国の世論を動かしている。「私たち主流派は動きが取れなくなっている」とエストニアのMEPで大統領候補になつたこともあるインドレク・タランドは言う。「もっとカリスマ性のあるリーダーがいたら、急進政党と討論して打ち負かすこともできるが」
昨年秋、欧州会議がロシアの議決権を停止した際、ハンガリーのヨッビクやドイツ左翼党に属する議員はこれに反対した。
設立間もない頃は資金不足に苦しんだヨッビクは、ロシアを利用したのかもしれないとクレコは指摘する。それに、極右も極左もプーチンのロシアに共感を持っている。いずれにせよ、双方が得をする関係だ。
欧州議会や欧州会議における親ロシア派の増加がヨーロッパの結束を揺るがす一方、各国レベルではさらに明白に親ロシアの立場を取る急進政党もある。ブルガリアの極右政党アタカ国民連合は、政府がロシアへの制裁を支持するなら政府を転覆させると誓っている。今年行われた世論調査では、国民の40%がEUを支持したのに対し、22%がロシア主導のユーラシア連合支持を表明している。
ヨーロッパ各国の極右政党はどこも東欧からの移民を嫌っているから、ブルガリアがユーラシア連合に接近するのも不思議ではない。EU加盟を申請しながら受け入れられないセルビアもロシアの友情を求めている。
「政府は口先だけEUに賛同している。そうすることで政権にとどまれるからだ」と首都ベオグラードのシンクタンク、ヨーロッパ大西洋研究センターのイエレナ・ミリチは言う。
「セルビアのEU加盟の手続きは行われているが、われわれの政策がEUと一致しないという否定的なメッセージをEUは出している。そこでロシアが魅力的な選択肢になっている」とミリチは言う。プーチンは昨年秋にセルビアを訪問し、コソボ問題でセルビアを支持すると表明した。
ミロシェビッチ政権時代の与党だったセルビア社会党(SPS)の党首イピッァ・ダチッチは、表向きはEU寄りだが頻紫にモスクワを訪れている。12月の訪問直後には、ロシア外務省が「ロシア政府は以前からの盟友セルビアとの安全保障協力関係を強化する」と発表した。
プーチンは「反主流の星」
その一方で、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、ロシアがセルビアに圧力をかけているというEU各国の懸念を「新植民地主義的な表現だ」とはねつけている。だがミリチは「SPSが権力の座にいられるのは(ロシアの巨大国営企業ガスプロムの)後ろ盾があるから」で、その「SPSがロシアを擁護するのは当然だ」と言う。
各国の急進政党の中には、戦略的にモスクワに接近する党もある。ヨーロッパ統合の夢がぼろぼろになる一方で、ロシアの多岐にわたる友好戦略は一定の成功を収めている。
違法な方法でない限り、反主流の弱小政党がロシアと友好を築くことに問題はない。外国の政治勢力に影響力を行使するのは、アメリカや中国もやっていることだ。
「アメリカとロシア、どっちの金が汚いと決めることはできない。だから、エストニアでは外国からの政治資金を一律に禁止している」と、エストニアのMEPであるタランドは言う。フランス国民戦線のルペンも、ロシアから資金を借りたのはフランスの銀行が貸してくれないからだと言う。AfDのルースは、同党はロシアから資金も助言も受けていないと断言する。「私たちは国民戦線ほど過激ではないし、資金援助も不要だ」
それでも彼らがロシアになびくのは、プーチンのロシアが「反主流の星」に見えるからか。
エリーサーベト・フラウ
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『ニューズウィーク日本版』2015−2・10
P.11
「ギリシャ新政権はプーチンの味方か
先月行われたギリシャ総選挙で緊縮財政に反対する野党・急進左派連合(SYRIZA)が勝利すると、ユーロ危機の再燃を懸念する声がヨーロッパ各国に広がった。だが、この事態を歓迎している指導者が少なくとも1人はいる。ロシアのプーチン大統領だ。
ウクライナ問題をめぐって世界から孤立しているプーチンにとって、ギリシャの新政権誕生は新たな「友人」を手に入れるチャンスかもしれない。両国は共にキリスト教正教会の流れをくんでおり、歴史的、文化的、宗教的な絆が強い。
政治の面でも、SYRIZAはプーチンが目の敵にしているNATOの有用性に公然と疑問を投げ掛けてきた。
SYRIZAが今後どこまでロシアに接近するかはまだ不透明だが、ツィプラス新首相が初の外遊先としてロシアを選ぶ可能性も浮上している。
タン・ベレシュク」
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