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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42625
ブラジルの年の差婚の甘い汁にメス
ルセフ大統領、緊縮措置の一環として年金支給額を削減
2015年01月09日（Fri） Financial Times
（2015年1月6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙）
ブラジル大統領選、ルセフ氏が再選 接戦の決選投票制す
2期目に入ったジルマ・ルセフ大統領〔AFPBB News〕
過度な負担を負ったブラジルの年金制度は長年、ある特定の問題に苦しんできた。すなわち「シュガーダディ」。もっと正確に言えば、相手が死んだ時にその年金給付金を請求できるよう、若い女性が祖父でもおかしくない年齢の男性と結婚する状況だ。
つい先週まで、ブラジルは世界で最も寛大な年金規則を擁し、労働者の死後、残された配偶者が、たとえその後再婚しても、相手の年金を死ぬまでほぼ全額受給することができた。
この制度は年配の男性との結婚を非常に魅力的なものにしていたことから、政府関係者はこれを「バイアグラ効果」と呼んだ。
「パパ」の死後、その年金をずっと受け取れた手厚い制度に終止符
しかし、ジルマ・ルセフ大統領が先週、政権2期目の始動にあたり、緊縮措置パッケージの一環として失業手当と年金給付を年間180億レアル（67億ドル）削減した後、状況が一変する可能性がある。新しい規則では、残された配偶者は亡くなった伴侶の年金の50％だけ受給でき、44歳未満の人は3年間だけ年金給付を受けられる。
失業手当と年金給付の減額は、元左翼ゲリラのルセフ氏が、悪化する財政収支を是正し、成長率を高め、信用格付けがジャンク級に格下げされる可能性を回避するために打ち出した一連の市場志向の対策の最新策だ。
エコノミストらは、ルセフ政権1期目の人気取りの税制優遇と国家干渉主義の有害な組み合わせの結果、ブラジルは2014年に暦年で史上初のプライマリーバランス（利払い前の基礎的財政収支）の赤字に陥ったと発表する可能性があると話している。2010年に7.5％成長したブラジル経済は昨年、成長率が恐らく0.1％にとどまった。
「ブラジルが再び成長する必要があることは、私が誰より分かっている」。企業寄りのブラジル社会民主党（PSDB）のアエシオ・ ネベス氏を下し、昨年10月の大統領選挙で勝利したルセフ氏は、先週の就任演説でこう語った。「財政収支の是正、国内貯蓄の増加、投資の拡大、生産性向上が第一歩となる」
給付金の削減のほかにも、ルセフ氏は財務相に銀行出身のジョアキン・レビ氏を指名し、金利を引き上げ、ブラジル経済に歪みを生んだ原因として非難されてきた中央銀行の大規模な為替介入プログラムを半分に縮小して投資家を呼び込もうとしてきた。
先月、ルセフ氏は社会福祉事業ボルサ・ファミリア（貧困層向け家族手当）の運営責任を負う国営のブラジル連邦貯蓄銀行の一部株式を市場に売却することまで約束し、敵対勢力と支持者に一様に衝撃を与えた。
ルセフ氏の労働党（PT）は選挙戦を通して、徹底的に銀行家を悪者扱いし、銀行セクターで国の管理からの独立性を高めると、ブラジルの一般市民が貧しくなるとさえ言った。
野党からは「嘘で勝ち取られた選挙」との声
「新しい対策が発表されるたびに、最近の選挙は嘘で勝ち取られたものだということが一段と明らかになる」。ネベス氏はフェイスブックにこう書き込んだ。一連の対策はPT内でも不人気で、地元メディアによると、ブラジリアで行われたルセフ氏の就任式を見に来た人は、PTの予想が3万人だったのに対して6000人にとどまった。
アナリストらは、政治的にリスクのある施策と、ルセフ氏が一見してこれまでの異端な政策を放棄する意欲を見せていることを歓迎しつつ、1期目のダメージを修復するには数年かかる可能性があると述べている。
また、多くのアナリストは、必要となる政策調整が失業者増加を招く恐れがある場合は特に、ルセフ氏に今後4年間政策をやり遂げる信念があるかどうか疑っている。
「全般的には、2015年は恐らく、5年連続の期待外れの成長と5.5％を上回るヘッドラインインフレ（消費者物価の総合指数）を記録することになるだろう」。ゴールドマン・サックスのエコノミスト、アルベルト・ラモス氏はこう話し、コモディティー（商品）価格の下落などの外部要因がブラジルの課題をさらに難しくする恐れがあると付け加えた。
また、ユーラシア・グループのジョアン・アウグスト・デ・カストロ・ネベス氏は、ルセフ氏は最も不人気な政策を推し進めるために必要な議会の支持を得るのに苦労すると指摘する。
PTが分裂し、PTにとって一番大事な盟友であるブラジル民主運動党（PMDB）から反対されていることから、ルセフ氏は、前任者で人気の高かったルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ氏が2003年に同様の削減案を提案した時に持っていたような政治的資本がない。
「この政治的な不利益は、景気減速が大統領の支持率に影響を及ぼしているだろう2015年後半に特に深刻になる」とカストロ・ネベス氏は言う。
ルセフ氏は、いわゆる暫定措置――緊急時のために設けられた物議を醸す法的手段で、大統領が議会から事前に承認を得ずに即時の変更を強制できる――を使うことでやっと先週の給付金と年金の削減を実施することができた。
しかし、今後2カ月でブラジル議会は新しい規則に反対票を投じ、規則が法制化されるのを阻止することができる。
多くのPT支持者と大勢の高齢独身男性は議会がまさにそうすることを望むだろうが、エコノミストらは、改革とその他の財政調整は戦う価値があると述べている。「これは容易な政策課題ではない・・・だが、経済のリバランスに貢献し、閉じ込められている経済の大きな成長ポテンシャルを解き放つ政策課題だ」とラモス氏は言う。
By Samantha Pearson in Sao Paulo
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