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2014年12月22日
古村治彦です。
今回は、アメリカとキューバとの国交正常化交渉の過程についての記事をご紹介します。南米出身初のローマ法王フランシスの役割、オバマ大統領の側近による交渉、オバマ大統領の決意について書かれています。
(地図)
こんなに近いアメリカとキューバ
こうしたものが外交なのだということを改めて考えさせられます。翻って日本について考えてみると暗澹たる気持ちになってしまいます。
(写真)
ラウル・カストロ大統領(議長)と電話で話すオバマ大統領
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アメリカとキューバとの間の秘密の外交交渉は拘留者交換の合意に達し、将来の国交正常化に結び付いた
キャロル・モレロ、カレン・デヤング筆
2014年12月17日
ワシントン・ポスト紙
アメリカとキューバとの間で50年以上も続いた敵対関係に終止符を打った。アメリカとキューバとの間で続けられた1年半に及ぶ秘密の外交交渉によってそれは成し遂げられた。
オバマ政権のある高官は取材に対して、両国間の秘密交渉はアメリカからキューバに申し入れがあった時点から始まり、2013年6月にカナダ国内で直接交渉が始められ、それは9回にも及んだ、と述べている。
外交交渉過程においては、異例なことであるが、ローマ法王フランシスの関与もあった。ローマ法王フランシスは、両国の交渉が合意に達するのを助けるために、ヴァチカンの利用を許可し、オバマ大統領とキューバのラウル・カストロ議長(大統領)にそれぞれ親書を送り、拘留者の交換と外交関係の復活を求めた。
(写真)
ローマ法王フランシス
スパイの定義を巡って交渉が一時ストップすることもあったが、結局は3機の飛行機が両国間に拘留されていた人々を同時に交換することで、喜びに包まれる結果になった。
秘密交渉は外交官たちではなく、オバマ大統領の国家安全保障問題担当補佐官2名が行った。これは、キューバ側に対して、アメリカ側が外交交渉と国交正常化はホワイトハウスが直接行うことだということを明確に示すためであった。
交渉の過程で、ジョン・F・ケリー国務長官をはじめとする政権の幹部たちは機会を捉えて、アメリカとキューバとの関係の未来は、アメリカ人の建設業者アラン・グロスの釈放にかかっていると表明していた。グロスはキューバに5年間も拘留され、肉体的、精神的な衰えが進んでいた。
キューバの外相ブルーノ・ロドリゲス・パリラとケリーとの間でこの夏に4階の階段が持たれた。ケリーは会談の度に、グロスがキューバの刑務所に拘留されている限り、二国関係が改善されることは「決して、決して」ないと語った、とある国務省の高官は証言している。この高官は他の交換と同様に匿名を条件としてきたが、私的な会話の内容について取材に答えてくれた。
水曜日に、キューバとアメリカは国交の正常化に動くと発表された。これは、オバマ政権が長年にわたり実行したいと考えていた政策変更であった。
オバマ大統領はキューバ系アメリカ人の親戚への少額の送金や訪問を容易にするための女権の緩和を行ったが、一期目ではそれ以上の劇的な政策変更はできなかった。しかし、オバマ大統領は、二国間の断絶はいつまでも継続すべきではないと確信していた、とある政府高官は語っている。2012年に開催された南北アメリカ大陸諸国サミットの期間中、オバマ大統領は、南米諸国の指導者たちから、アメリカはキューバについて妄想に取りつかれていると激しく批判された。
2013年初頭、オバマ大統領の大統領としての二期目がスタートした直後、大統領はキューバとの間で国交正常化に向けた交渉を行うことを許可した。
アメリカとキューバは双方ともに伝統的な外交チャンネルを使わずに、双方の大統領に近い人々同士で交渉を行うと決めた。ホワイトハウスは、オバマ大統領の信任が厚い国家安全保障問題担当次席大統領補佐官ベンジャミン・J・ローズ(Benjamin J. Rhodes)と国家安全保障会議南米部長リカルド・ズニガ(Ricardo Zúñiga)を代表として選んだ。ズニガは、ハヴァナでアメリカの利益代表部で働いた経験を持っている。キューバ政府も彼らに相当する役職の人々を出してきた。
(写真)
ベンジャミン・ローズとオバマ大統領
交渉に参加したある政府高官は次のように述べている。「双方がそれぞれの大統領の意向を受けて交渉しているということが分かっていることが何よりも重要なことでした」
アメリカ、キューバ双方の交渉チームの人数はかなり制限されたと前述の政府高官は述べている。
「私たちはとても団結していました。キューバ側も恐らくそうであっただろうと思います。私たちは、アラン・グロスの釈放という目標の達成を難しくするようなことをするつもりはありませんでした。」
2013年6月、カナダの首都オタワで初めて2つのチームが直接顔を合わせた。双方は友好的な雰囲気で話し合いを行った。それから18カ月、2つのチームはカナダの首都で複数回にわたり話し合いを行った。
キューバ側はまずスパイの交換を提案してきた。キューバに拘留中のグロスと、マイアミの反カストロ活動を行っていたキューバ人の情報をハヴァナに送っていた5名のキューバ人スパイのうちアメリカに拘留中の3名の交換を提案してきた。アメリカ側はこの提案を拒否した。アメリカ側は、グロスが、米国国際開発庁(U.S. Agency for International Development、USAID)と契約を結んだ建設業者に過ぎず、彼は正当に仕事を遂行していただけだと主張した。しかし、話し合いはすぐに二国間の外交関係の復活に何が必要かというテーマに移っていった。
その前にオバマ大統領はヴァチカンを訪問し、ローマ法王フランシスと会談を持った。彼らの話題がキューバに移った時、史上初の南米出身の法王は、両国間に存在する困難な諸問題を解決する手助けをしたいと申し出を行い、その後、オバマとカストロにそれぞれ親書を送った。
今年に入って、アメリカ側は、キューバ側に拘束されている本物のスパイとアメリカ国内で服役中の3名のキューバ人スパイの交換を提案した。
2014年10月、アメリカとキューバ双方の交渉チームがローマを訪問し、ヴァチカンの幹部たちと会談を持った。そこで、拘留の人たちの交換が最終決定された。そして11月までカナダのオタワで交渉は続けられた。
キューバとアメリカとの間で国交正常化に向けた話し合いを行うという決定を受けてそれに祝意を示すヴァチカンの声明には次のような一節がある。「ヴァチカン(The Holy See)はアメリカとキューバ両国が二国間関係を強化し、それぞれの市民たちの福利を向上させるという試みをこれからも支援し続ける」
この決定に至るまで、オバマ大統領は全くぶれなかった。中間選挙の後、彼は、彼の行政府の長としての力を使って、単独で行動をすることができると感じていると語った。
グロスの退潮が悪化しているという報告も入っていた。グロスは訪問者たちに対して、このままでは新年を迎えることはできないだろうと語っていた。彼の外見は報告ほどに弱っているようには見えなかったが、長期にわたる拘留で肉体的に弱っていくことが懸念されていた。
しかしそのような懸念も今週払拭された。火曜日、オバマ大統領は密かに1時間近くにわたり、カストロと電話で話をした。これは1959年にキューバで革命が起きて以来、初めての大統領級の首脳同士の会話となった。そして、水曜日、オバマ大統領はホワイトハウスからテレビを通じて、アメリカ国民に語りかけた。
オバマ大統領は演説の中で、自分が生まれたのはフィデル・カストロが政権を掌握してから2年後のことであったと述べた。そして、次のように語った。「変化することは難しいことです。私たちの人生においても、そして国家にとっても。特に歴史の重荷を背負っている場合には変化はより困難となります。しかし、今日、私たちは変化を起こそうとしています。それはそうすることが正しいことだからです」
彼は続けて次のように語った。「本日、アメリカは過去からの足枷を断ち切る選択をします。それは、キューバの人々、アメリカの人々、西半球全体、そして世界にとってより良いことを成すことになるのです」
この発表からほんの2、3時間前、3機の飛行機が朝もやの中を飛んでいた。
一機はマイアミを飛び立ってハヴァナに向かった。この飛行機には2011年にスパイ容疑で有罪判決を受けた3名のキューバ人が乗っていた。
もう一機は全く逆のコースを取った。この飛行機には名前が公表されていないアメリカのスパイが乗せられていた。彼はアメリカ国内にいるキューバ側のスパイ情報をアメリカ政府に提供したとして約20年にわたり拘留されていた。
三機目の飛行機はアンドリュース空軍基地を飛び立ち、ハヴァナ近郊の軍事施設に着陸した。そこでアメリカの利益代表部の代表が、夫の帰還を待ちわびた妻ジュディの前へグロスを伴って姿を現した。
ジェフ・フレイク連邦上院議員(共和党、アリゾナ州選出)は次のように語っている。「グロス夫妻にとって最高の瞬間でした。とても感動的な光景でしたよ」。フレイク議員は拘留中のグロスの許を何回も訪問し、水曜日の解放にも立ち会った。
アメリカへの途上、パイロットが、飛行機がアメリカの領空内に入ったとアナウンスをした時、グロスは両手を挙げて喜びを表現した。
パトリック・J・リーフィー連邦上院議員(民主党、ヴァーモント州選出)はグロスに「あなたは自由の身ですよ」と語りかけたという。
「どうやら本当に自由になったようですね」とグロスは答えた。
(終わり)
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