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年に1度の記者会見に臨んだプーチン大統領。記者会見では国民に辛抱を呼びかけた(代表撮影/AP/アフロ)
ロシアの没落は、もう止まらない プーチン政権の基盤が脅かされている
http://toyokeizai.net/articles/-/56428
2014年12月20日 中原 圭介:経営コンサルタント、経済アナリスト 東洋経済
アメリカ発のシェール革命によって、資源国経済が厳しい状況に立たされています。原油価格の下落の構図については、12月2日のコラム「アベノミクスのせいで庶民は豊かになれない」http://urx2.nu/fpgFにおいて、すでに説明をさせていただきましたが、今回の原油価格急落で大きなダメージを受けているのがロシアです。
■すでに凋落の傾向は2013年にあった
ロシアは原油、天然ガスの生産量で世界1位、2位を争う資源大国で、GDPの約3割、輸出の約7割を石油ガス産業が稼ぎ出しています。国家の歳入の約5割がエネルギー収入によって賄われており、輸出の面においても約70%を原油や天然ガスといったエネルギー関連品に依存しています。
そのため、シェール革命によって原油価格が急落している今となっては、ロシアは国家財政が大きな打撃を受けるばかりか、経済成長の大きな押し下げ要因にもなってしまうのは避けられないでしょう。
それでは、今後のロシアはどのようになっていくのでしょうか。
ロシア国民が、2000年から続くプーチン体制を消極的であれ支持してきたのは、1998年に起きたルーブル暴落と国債デフォルトによって、ロシア経済がどん底まで落ちたトラウマから逃れられないからです。当時の貧乏な生活を耐えた苦しみを考えれば、国民の自由が強権で抑圧されるような政治でも、経済さえうまくいけばそれでいいと我慢してきたのです。
しかしながら、資源輸出に頼るロシア経済にはすでに2013年の時点で暗雲が垂れこめてきていました。詳しくは2013年6月20日のコラム「シェール革命に翻弄される国々」http://urx2.nu/fpgKを参考にしていただきたいのですが、シェール革命を発端としたアメリカのエネルギー供給増加によって、世界中でエネルギー玉突き現象が起こり、ロシア産のエネルギーが市場から弾き出されるケースが散見されていたからです。
そういった影響もあってか、2013年の前半ではすでに実質GDPの成長率が陰りを見せ始めていましたし、国内の景気を見るうえで重要な目安となる自動車販売も低迷していたのです。ロシア国内の自動車販売は2010年から前年同月比で平均10%超の伸びをみせていたのですが、2013年3月以降は、前年同月比でマイナス続きのトレンドとなっています。
このまま原油や天然ガスの価格が低位で恒常化し、ロシア経済がなし崩し的に失速するならば、抑圧された国民の不満は徐々にプーチン体制に向かう可能性があるのではないでしょうか。大都市の中間層が起こした反プーチン運動が再燃し、それが広範な大衆を巻き込んで全国規模の民主化デモへと発展するならば、プーチンの政権基盤は一気に揺らいでしまいかねないのです。
従来のロシアは資源外交を展開し、とくに中東欧諸国に対して政治的圧力を加えてきたのですが、2013年の段階からシェール革命の余波により、その影響力は明らかに弱まってきていました。そして、それを決定的に、そして不可逆的にしたのが、クリミア内戦のどさくさでロシアが行った「クリミア併合」であったと言えるでしょう。
■資源外交は風前の灯、世界への影響力は確実に低下
クリミア併合を機に欧米とロシアで経済制裁合戦が始まった時に、私は「プーチンはここまで愚かな指導者であったのか」と驚かざるをえませんでした。というのも、その時の私の脳裏には、将来の原油価格の下落と相まって通貨ルーブルの暴落が起きて、ロシア国民の生活がインフレでひどく疲弊するだろう、という光景が思い浮かんだからでした。
ところが誤算だったのは、WTI原油価格が70ドルまで下落してきても、OPECによる減産の対応がなされなかったということです。そのために、下落のペースが予想していた以上に速くなり、ルーブルの暴落までもがこんなにも早く起こってしまったわけです。
いずれにしても、プーチンの資源外交はもはや風前のともし火となっています。中東欧での影響力の低下を補うため、このところ急接近しているベネズエラ、ボリビア、イラン、イラクなどの国々も原油価格の急落によって経済がガタガタになってしまっているからです。これらの国々もまた、ロシアと同じ境遇にある資源輸出国であり、世界で競争力を持つ産業を育てることができていないという点で共通しています。
世界的なエネルギー資源の高騰で、思いがけない繁栄を謳歌してきたロシアですが、それに安住しすぎた結果として、兵器産業以外には競争力のある産業が育っていません。ロシアの、世界に対する政治的かつ経済的な影響力は、長い目で見ると確実に低下していくことになるでしょう。
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