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2014年12月18日
古村治彦です。
昨日、2014年12月18日深夜にツイッター上で「アメリカ政府がキューバ政策について重要な発表をする」というニュースが流れました。そして、アメリカがキューバとの間に国交正常化に向けた交渉を行うと正式に発表されました。
キューバとアメリカは1961年に断行して以降、アメリカが一方的に経済制裁を科してきました。キューバはそれ以降、この経済制裁に苦しみながらも、フィデル・カストロ議長の下、独自の政策を行ってきました。現在、西半球に残る最後の共産主義政権が統治する国となりました。
私がアメリカの大学でアメリカ政治の勉強をしていた時、人種と政治が重要なテーマだったのですが、キューバ系アメリカ人の研究についても触れることができました。キューバ系アメリカ人は他のヒスパニックと同じくスペイン語を母語にしています。しかし、キューバ革命時に難民としてアメリカにやって来たのは、お金持ちが多く、フロリダ州のマイアミに定住した後もキューバ社会における階層を維持していたということです。また、他のヒスパニックと違い(マイノリティは民主党支持が多い)、共和党支持が多いのも特徴です。また、お金持ちは私立のフロリダ・インターナショナル大学へ、庶民で勉強ができる人は、州立のフロリダ大学に進学するということでした。
しかし、世代を超えていくにつれて、キューバ系アメリカ人たちの反カストロ意識も薄れてきたでしょうし、キューバ側も豊かな生活を望んでいるでしょう。キューバは教育水準が高く、質の高い労働力になりますし、治安も良いので、魅力的な投資先となるでしょう。フロリダ州にいるキューバ系アメリカ人たちが、華僑のように「玖僑」(キューバは日本式では玖瑪、中文では古巴と書くと先輩にご教示いただきました)となっていくでしょう。
私は、今回のアメリカとキューバの国交正常化交渉の開始は、現在のアメリカの外交・安全保障分野における「内戦」を象徴しているものと考えます。チャック・ヘーゲルを泣く泣く解任しなければならなかったオバマ派ですが、巻き返しの一手として、キューバとの国交正常化を持ってきたのだ、と私は考えました。それは、このニュースが流れる半日ほど前に以下のニュースが流れたことがきっかけでした。
(雑誌記事転載貼り付けはじめ)
●「USAID Administrator Rajiv Shah to Step Down」
BY JOHN HUDSON
フォーリン・ポリシー誌 DECEMBER 16, 2014 - 11:46 PM
http://foreignpolicy.com/2014/12/16/usaid-administrator-rajiv-shah-to-step-down/?utm_content=bufferab042&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer
After five years of heading the United States Agency for International Development, one of the Obama administration’s most charismatic and well-liked bureaucrats is leaving his job next month, Foreign Policy has learned.
Rajiv Shah, a Detroit native and a 42-year-old son of Indian immigrants, will inform his entire staff on Wednesday morning of his decision to step down as USAID administrator on January 30. His next move remains a mystery, though many have speculated at a run for Congress or a jump to private sector development work.
“I’m not prepared now to talk about my next steps,” Shah told FP in a phone call on Tuesday. “I will continue to stay focused during the transition in ensuring that USAID remains a results-oriented, evidence-based humanitarian enterprise.”
Known for his bouncy demeanor and boundless enthusiasm, Shah’s tenure has been most notable for the dramatic changes made in how USAID delivers foreign aid — particularly in weaning Washington off of its dependence on large development contractors.
“Instead of simply doling out assistance, which has been the USAID model from day one, he tried to change it,” said Peter Pham, director of the Atlantic Council’s Africa Center.
At the same time, Shah managed the agency’s $20 billion budget when accountability, corruption, and waste continued to plague U.S. efforts in Afghanistan and a number of embarrassing and poorly-designed democracy-building programs in Cuba jeopardized the aid agency’s reputation.
Through it all, Shah managed to maintain a glowing reputation on Capitol Hill, even among the most ardently conservative Republicans.
“What I like most about Raj is he makes it easy for people of different political backgrounds to support him,” Sen. Lindsey Graham, a hawkish Republican from South Carolina, said last week.
Speaking at a dinner organized by the U.S. Global Leadership Coalition (USGLC), a group that advocates for a strong foreign aid budget, Graham marveled at Shah’s ability to defend USAID’s budget at time of heightened partisanship and ever-tightening fiscal constraints. “If you can convince Tom Coburn [that foreign aid] is a good deal, you should open up your own shop,” Graham said, referring to the famously conservative Oklahoma senator.
Over the years, the structural changes Shah implemented at the agency have had a dramatic ripple effect on the recipients of foreign aid spending.
Rather than dropping billions of taxpayer dollars into sprawling programs designed to reduce poverty, USAID pivoted to directly funding foreign development groups, offering loan guarantees to local banks and launching contests aimed at solving specific global challenges.
“I give him a lot of credit for that, especially in launching science contests that provide seed money for innovation,” said Pham.
One particular example of this is the Ebola Grand Challenge, an idea Shah cultivated at his old job at the Bill and Melinda Gates Foundation. The contest challenged inventors to develop medical equipment and technology for front-line medical workers in West Africa and recently distributed $1.7 million to three contestants. One of the winners — a team from John Hopkins University — designed a new protective suit that has a battery-powered cooling system and is easier to take off — both innovations that are said to greatly reduce the risk of transmission to the medical worker.
“Shah steered USAID through important reforms, bringing an effective evidence-based approach to the agency,” said USGLC president Liz Shrayer.
Still, Shah has struggled to defend the agency’s disastrous projects in Cuba, which include launching a now-defunct social media site to encourage Cuban youths to revolt against the Castro regime, attempting to co-opt Cuba’s vibrant hip-hop scene and an HIV prevention workshop that served as a front to recruit political activists — all activities that many aid experts say compromised the global perception of USAID as a humanitarian arm of the U.S. government.
“This is dumb, dumb, dumb,” said Sen. Patrick Leahy, chairman of the Senate Appropriations subcommittee that oversees USAID. “It’s not something that should be done through USAID. They do a lot of great things around the world. … This is not one of them.”
Despite those criticisms, Shah maintained that USAID was fulfilling its dual role of fighting extreme poverty and supporting “resilient democratic societies” around the world.
“As you know, our focus has been on supporting civil society in Cuba and other closed spaces around the world,” he told FP. “It’s difficult to support civil society in places where societies are closed.”
(雑誌記事転載貼り付け終わり)
ラジブ・シャー(インド系アメリカ人)
任命式の様子(左がヒラリー)
アメリカ国務省(外務省に相当)の参加にありながら予算規模では肩を並べる機関である、米国国際開発庁(United States Agency for International Development、USAID)のラジブ・シャー(Rajiv Shah)長官が辞任を発表したのが、国交正常化交渉開始の半日ほど前でした。
拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、2012年)で書いた通り、このUSAIDという組織は、アメリカの「世界民主化政策」の尖兵です。このUSAIDの長官を5年間も務めたのがラジブ・シャーです。シャーを長官に任命したのが当時のヒラリー・クリントン国務長官です。ヒラリーの国務長官在任時に起きたのが「アラブの春」です。このアラブの春に大きく関与したのがUSAIDです。
USAIDはキューバにも関与していました。私は昨日、2つのニュースを聞いて、咄嗟に次の記事のことを思い出しました。
(新聞記事転載貼り付けはじめ)
●「米政府、SNSで対キューバ工作」
By JOSÉ DE CÓRDOBA AND DAVID LUHNOW
原文(英語)
ウォールストリート・ジャーナル日本版 2014 年 4 月 6 日 09:38 JST 更新
米国がキューバ政府の弱体化を狙ってミニブログサイト「ツイッター」に似たソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)をキューバ向けに秘密裏に立ち上げていたことがわかった。AP通信が報じた。
AP通信の3日の報道によると、SNSを立ち上げたのは国際開発庁(USAID)。年間数十億ドルに上る対外支援を実施する米国の政府機関だ。
米政府高官は3日、このSNSの存在を認めたものの、社会的な混乱を扇動する工作であることは否定した。
USAIDはメキシコの司法改革推進やハイチ向けの災害援助に取り組むなどさまざまな援助活動を行っている。しかし、工作活動が発覚したことで、UNAIDの今後の援助活動に支障が出る恐れがあるとの見方が出ている。
バージニア州アレクサンドリアの非営利シンクタンク、キューバ・リサーチ・センターの代表、フィリップ ・ピーターズ氏は「こういうことが起きれば、USAIDが実施している優れた経済援助や開発援助に疑念が生じる。USAIDにとってダメージは大きい」と述べた。
ロシアは2012年、野党グループを支援しているとしてUSAIDを追放。翌年にはボリビアも同様の措置を取った。
キューバはインターネットの利用を制限しているが、米国は「スンスネオ」というSNSを立ち上げて規制をかいくぐった。キューバ国民は国営の電話網を使ってこのSNSにアクセスし、メッセージを書くことができる。立ち上げ当初は利用者数を確保するため、スポーツや天気、雑学などの情報を送信していた。
AP通信はUSAIDの内部文書を引用。それによると、SNSを立ち上げた目的は、「国家と社会の間の力のバランスを見直す」ために、政治関連のコンテンツを徐々に紹介して利用者を結集させることだった。
USAIDは3日、声明を発表し、「スンスネオの目的はキューバ国民同士が自由に話せる場を作ることだった。それ以上は何もなく、われわれはこれを誇りに思っている」と述べた。
USAIDの広報担当者は、スンスネオの存在が公になったことでUSAIDの今後の活動に支障が出るとの見方は否定した。
ホワイトハウスのカーニー報道官は3日、スンスネオについて、秘密工作ではなく慎重に人権促進の活動を行っていたと述べた。連邦政府機関が秘密工作を行う場合、大統領の承認を得なければならない。
キューバ政府の公式新聞グランマ(電子版)は3日、米国がキューバの若者と政府の対立を画策しているというラウル・カストロ大統領の主張が裏付けられたと報じた。
AP通信によると、スンスネオの利用者は2010年時点で約4万人に達していたが、米国が同サービスに関与していたことを全く知らなかったという。また、米国は政治的なメッセージに反応する可能性がある人物を特定するために利用者に関する情報の収集を行っていたが、利用者はこれも承知していなかった。
(新聞記事転載貼り付け終わり)
キューバとの国交正常化にはUSAIDの最高責任者シャー長官の首が必要であったということでしょう。そして、これは、ヒラリー系に大きなダメージとなることでしょう。
私がこの状況を「内戦」と書きましたのは、オバマとヒラリーとの関係が相当悪化している、と考えたからです。キューバ系アメリカ人が多く住むフロリダ州は大統領選挙の激戦州です。ここでキューバ系アメリカ人たちのエリート層を怒らせることをすればどうなるでしょうか。フロリダ州は共和党が取ることになります。現在、2016年の米大統領選挙の共和党の有力候補として、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事、マルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州選出)の2名のフロリダ州にゆかりの深い人物の名前が挙がっています。
私は、オバマ大統領がヒラリーの米大統領選当選阻止のための一手としても今回のアメリカとキューバの国交正常化交渉を利用しているのだろうと考えています。
キューバ系アメリカ人の歌姫グロリア・エステファン
(終わり)
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