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http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NFCWS76JTSEL01.html
11月20日(ブルームバーグ):
世界は安価なエネルギーが潤沢に供給される新たな時代に入り、地政学上の地図を塗り替えつつある。国家の正当性が脅かされかねない国もあれば、逆に力を増強する国もある。
すでに鮮明な変化もみられるようになった。米国での石油生産が急増したことで、欧米諸国は中東原油の供給途絶をさほど心配せずにイランに対して厳しい制裁を科すことができた。一方プーチン大統領が国産原油の価格急落を「最悪だ」と嘆くロシアでは、ウクライナへの関与を理由に受けた制裁で経済が苦境に立たされている。
米国のシェール革命で「価格低下の新時代が幕を開けた」と現状を表現するのは、シティグループ(ニューヨーク)の商品調査グローバル責任者、エド・モース氏。同氏は電子メールで、「こうした地政学的変化の中には極めて重大なものがあると考えて間違いない」と指摘する。
四半世紀前もそうだった。1980年代後半の原油価格急落はソビエト連邦が存続するのに必要な収入源の多くを奪い、ソ連崩壊につながった。90年代にイラクのサダム・フセイン大統領がクウェート侵攻を決定した背景にも、原油市場の不調があったと考えられる。
そしてロシアは今も石油市場の軟調に苦しんでいる。イランやベネズエラも同様だ。一方の米国と中国は恩恵を享受している。
アドバイザリー企業のストラットフォー(テキサス州オースティン)のグローバルアナリシス担当バイスプレジデント、リーバ・バーラ氏は石油こそ「地政学的に最も重要な商品だ」と語る。「世界の経済を動かす」原油が埋蔵される国には、「非常に不安定な地域」があると指摘した。
中国が決定していた過去10年
ニューヨーク原油先物価格はこの5カ月間で30%以上値下がりし、1バレル=75ドル付近にある。ノースダコタ州とテキサス州のシェールブームで米国の原油生産は約30年ぶりの高水準に増えた。
「これまでの10年を振り返ると、原油市場を左右していた決定的要因は中国の経済成長、および同国の石油需要だった」と分析するのはコンサルタント会社、IHS(コロラド州イングルウッド)のダニエル・ヤーギン副会長だ。著書「探究−−エネルギーの世紀」でピュリッツァー賞を受賞した同氏は、「今、価格を決定するのは目覚ましく成長する米国の石油生産だ」と述べた。
こうした状況に対してサウジアラビアとクウェートは市場シェアを守ろうと、エネルギーエコノミストのフィリップ・バーレジャー氏が呼ぶところの「必要に迫られての価格戦争」を始めた。しかし米企業は石油輸出国機構(OPEC)よりも自分たちに価格決定力があるとみて、これにひるむ姿勢を見せていない。
サウジの大ばくち
「サウジがやろうとしているのは、まさに大ばくちだ」と、オクラホマシティーでシェールオイルを生産するチェサピーク・エナジーのアーチー・ダナム会長は語る。「バレル当たり60ドル、あるいは70ドルに下げるなら、米国での生産も減速するだろうが、状況は変わりそうにない」と述べた。
問題は原油安に対する産油国の反応であり、協調的になるのか、それとも対決姿勢をとるのか分からないと、IHSのバイスプレジデント、ジェイムズ・ブルクハルト氏は指摘する。「今後数カ月、あるいは1年かけて事態は展開するだろう。不透明感とボラティリティーが高まり、ネガティブなサプライズが生じることも多々ありそうだ」と述べた。
先週のブルームバーグ・グローバル調査によれば、負け組の筆頭はロシアになるとみられている。同国予算の半分近くは石油と天然ガスの収入で賄われている。
欧米からの経済制裁と原油安の挟み撃ちで、プーチン政権下のロシア経済は1964年から82年にかけてのブレジネフ時代に匹敵する長期低迷を経験するかもしれない。キャピタル・エコノミクス(ロンドン)の主任新興市場エコノミスト、ニール・シアリング氏が述べた。
イランの核プログラム
イランでは石油輸出による収入が30%程度落ち込んだと、ロウハニ大統領が議会での演説で述べた。石油省のシャナ通信が10月に伝えた。ブルームバーグのデータによると、同国が財政均衡を維持するには、採算レベルの1バレル143ドルを今年実現するしかない。
ロシアと同様、イラン経済も経済制裁によって力を失った。この10年間、同国の石油・ガス設備への投資は絶たれ、増産のためのテクノロジーも導入されていない。
経済制裁の前提である核開発問題は、今月24日までに合意しなくてはならない。原油安とともにロウハニ大統領にプレッシャーを与えている。
核プログラムをめぐる合意が成立し、制裁が解除されれば、原油価格にはさらに下押し圧力がかかりかねない。その場合ロンドンの北海ブレント原油は1バレル当たり65−70バレルに下落すると、ヘッジファンドマネジャーのピエール・アンドュラン氏は11日付の投資家向け書簡で予想した。
米国と中国
一方の勝ち組の筆頭は米国になると、ブルームバーグの端末ユーザーらはみていることが今月11−12日に実施された調査で分かった。
エネルギーでの独立性を高めることは国外での供給障害による影響を受けにくくなることだと、キッシンジャー・アソシエーツ(ニューヨーク)の副会長を務めるロバート・ホーマッツ氏(元国務次官)は指摘する。独立性は外国との交渉でのレバレッジを高め、核プログラムをめぐるイランとの交渉であろうと、ウクライナをめぐるロシアとの交渉であろうと、米国を有利にするという。
もう一つの勝利国は原油の輸入依存率が60%に近い中国だと、廈門大学エネルギー経済調査センターのディレクター、林伯強氏は分析する。
同氏によると、世界2位の経済大国である中国は原油安による歳出削減分を防衛や環境などの予算増に向けるのではなく、戦略的準備を積み増す可能性が高い。
原油安によって、中国もロシアとの交渉において有利になる。両国は今年の5月、規模4000億ドル、期間30年のガス供給協定に調印。今月も両国間で2番目となるパイプライン敷設に向けて暫定合意に至るなど、エネルギーでの関係を深めている。
「原油価格が安い限り、中国は常にロシアに対して有利に交渉できる」と林氏。「ロシアはとにかくエネルギー収入が必要だからだ」と述べた。
原題:Cheap-Oil Era Tilts Geopolitical Power to U.S., Away From Russia(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ワシントン Rich Miller rmiller28@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Chris Wellisz cwellisz@bloomberg.net Melinda Grenier, Scott Lanman
更新日時: 2014/11/21 07:28 JST
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