02. 2014年11月18日 07:34:50
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緊縮に耐えてきたアイルランド、水道料金に怒り爆発 2014年11月18日(Tue) Financial Times (2014年11月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)旅行時の節水法コンテスト、国連がツイッターで開催 アイルランドはこれまでOECD加盟国で唯一、水道に課金していない国だった〔AFPBB News〕 「一体やつらはどこにいるんだ?」 ダブリン北郊外の町ドナミードのトンレジー通りを車で走るデレク・バーンズさんは、どうやら獲物を見失ったようだ。獲物とは、水道メーターを設置するバン1台分の技術者だ。20分経ち、多くの袋小路に遭遇した後、探すのを諦めた。 「もういなくなったんだろう」。紛れもない勝利感を漂わせながら、彼はこう言った。「今日は戻ってこないさ」 2人の子を持つ36歳のシングルファーザーのバーンズさんは、11月半ば、小雨の降る、風の強いある朝にエアフィールド住宅地の入り口に集まった一握りの抗議者の1人だ。 彼らにとって、技術者と忌まわしい水道メーターが去ったことは、アイルランド国民は水にお金を払い始めるべきだという考え――今や正式な政府方針――に対する激しい反対運動におけるもう1つの小さな勝利だ。 水道がタダだったアイルランド、「水にお金は払わない!」 「ここはまっとうな労働者階級の住宅地、ケルトの虎が1度も来なかった地域だ」。ドナミードの代わり映えのしない通りを案内してくれたバーンズさんは、もう過去となったアイルランドの好況期に触れてこう語った。「この辺では誰も水にお金を払いませんよ」 この誓いの言葉は、アイルランドの老朽化した水道インフラの運営を地方自治体から引き継ぎ、数十億ユーロの費用がかかる近代化プログラムを監督する水道公社アイリッシュ・ウオーターの設立に反対するアイルランド各地の大勢の国民の共感を呼んでいる。 抗議活動にはダブリンやその他の場所での大規模デモも含まれ、水道料金の徴収を支持しているか否かにかかわらず、すべての政党が守勢に立たされることになった。 2008年以降、アイルランド国民は6年間の緊縮策に耐えてきた。公共支出の削減、最大13%に上る実質賃金のカット、増税、固定資産税、年金税、その他諸々の金銭的な罰――。その間、大した抗議はなかった。政治家にとって不可解なのは、なぜ水が国民をバリケード構築へ導く問題なのか、ということだ。 「こんなことは今まで見たことがない」。労働組合ユナイトの幹部で、10月1日に発効した、一般家庭の水の利用に課金する政策に抗議するイベントを組織化する上部団体「ライト2ウオーター」を立ち上げたブレンダン・オーグル氏はこう語る。 「労組主導でもなければ政党主導でもない。この動きには、どこか違うところがある」 アイルランド総選挙、与党大敗で政権交代へ エンダ・ケニー首相は今週中に、水道料金について最終的な決断を下す〔AFPBB News〕 アイルランドのティーショク(首相)、エンダ・ケニー氏にとって、水を巡る物議は、閉めることのできない蛇口だ。 同氏は国民が年間支払わねばならない金額について、今週中に「最終的で明確な決定」を行うと約束した。 アイルランド政府は今春、「アイルランドの平均的な世帯」では、水道料金が年間240ユーロ以下になると述べた。だが、ラジオのトーク番組には、世帯規模に基づくと最高で800ユーロの支払いを迫られる可能性があると訴える電話が殺到した。 アイルランドは経済協力開発機構(OECD)加盟国で唯一、水道に課金していない国であり、政府が政策転換のコストを明確にできていないことが、大きな失敗なのかもしれない。 だが、それが唯一の失敗ではない。アラン・ケリー環境相が今月議会で認めた通り、「スケジュール、課金構造の複雑さ、アイリッシュ・ウオーターのコミュニケーション不足」が野党に「めちゃくちゃ」とのレッテルを張られた問題の一因となった。 トロイカによる救済の代償 アイリッシュ・ウオーターは、一定の距離を置いた公益事業の構造によって水道事業の将来の借り入れを国のバランスシートから切り離しておくために設立された。 公社設立は、アイルランドに金融支援を行った「トロイカ」への誓約の結果だった。アイルランドの銀行、不動産セクターが崩壊した後、国際通貨基金(IMF)と欧州機関は2010年に同国に670億ユーロの救済を提供した。トロイカの代表団は今週、ダブリンを訪問する予定で、水が議題となると言われている。 アイリッシュ・ウオーターは47万5000個の水道メーターを設置し終え、すでに稼働し始めている。 しかし、野党は、公社が必要な理由を立証しようとする政府の取り組みを弱めた。「政府は、国民が水にお金を支払うべき理由について、思ったほど効果的に正当な主張を展開できていない」とユニバーシティ・カレッジ・ダブリンの政治学者、ニアフ・ハーディマン氏は言う。 緊縮疲れがあからさまな敵意に 前出のオーグル氏は、抗議活動は緊縮疲れがついにあからさまな敵意に発展したことを物語っていると言う。 「国民は自尊心を取り戻した」とオーグル氏。「彼らは冬の真っただ中に(抗議のために)街頭に出て、『ああ、我々はついに行動に出ている。自分たちは信念を取り戻した。もう、なめた真似は許さない』と叫んでいる」 By Vincent Boland in Dublin
スキャンダルに揺れるメキシコ、抗議行動に火 2014年11月18日(Tue) Financial Times (2014年11月15/16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) ニワトリが何の気なしに歩道をくちばしでつついている。工務店や自動車修理工場が立ち並ぶうらぶれた通りは、夜になると麻薬の売人がうろついて物騒だ。 メキシコシティの、1968年に警官隊が抗議行動の参加者を300人も銃で虐殺したトラテロルコ広場にほど近い、人々から無視されているこの界隈にはあきらめの雰囲気が漂っている。 うんざりしている国民、43人の学生殺害事件に激怒 「約束じゃ生きていけないよ」。タクシー運転手のファン・ロペスさんはこう語る。「また1968年みたいなことになる。あのときと同じ感じがする・・・みんなもう、うんざりしてるんだ」 9月26日に西部のゲレロ州イグアラ市で43人の学生が殺害されたと言われる事件――犯罪組織とつながりのある市長の指揮下にあって腐敗している警察が、学生たちを麻薬密売組織に引き渡して殺害させたとして非難を浴びている――のために、メキシコは暴力的な抗議行動が今にも広がりかねない状況になっている。 「学生43人の遺体を焼いて川に」容疑者供述におののくメキシコ メキシコ南西部ゲレロ州の州都チルパンシンゴの州政府庁舎の前で、燃える車から離れる同州アヨツィナパの教員養成大学の学生ら〔AFPBB News〕 ろうそくの明かりで穏やかに死を悼むだけではもう済まなくなっている。 ここ数日は、教職員組合がアカプルコの道路や空港を封鎖したり、デモの参加者がゲレロ州政府や同州議会の建物、さらには連邦政府があるメキシコシティの国立宮殿の門に火を放ったりしている。 2年前に成立したエンリケ・ペニャニエト大統領の政権はこれまで、多方面から称賛された改革プログラムを自分の髪型と同じくらい完璧に実行してきたが、ここに来てスキャンダルに見舞われ、事態が政権の手に負えなくなりつつあるとの印象が強まっている。 大統領と中国企業の癒着疑惑も浮上 大統領は先日、中国企業主導の企業連合が唯一の応札者として先週落札した高速鉄道建設プロジェクトを巡る批判に屈し、36億ドルに達するこの契約を取り消した。間の悪いことに、大統領はこの決断を中国訪問の直前に下すこととなった。 また、この大失態の直後には、その企業連合のメンバーで有利な扱いを受けていた企業が建てた600万ドルの邸宅を、大統領夫人が所有していることも明るみに出た。 「メキシカン・モーメント」ともてはやされるほど好調だったメキシコが「メキシカン・メス(メキシコの窮地の意)」に陥ってしまった、とホルヘ・カスタニエダ元外相は指摘する。 治安が改善し、抜本的な改革も進んでいる新しいメキシコというイメージが、国家を後ろ盾にした暴力や縁故資本主義、手際の悪い政府という悪いイメージの陰に隠れてしまったというわけだ。 「政権はこの2年間、野党勢力を一歩リードしてきた。何を協議するかを決めてきた」。メキシコ競争力研究所のトップ、ファン・パルディナス氏はそう語る。「今では、こうして話している間にも主導権を失いつつある」 イグアラ市の事件や、今年6月にメヒコ州トラトラヤでメキシコ軍が民間人を虐殺したとされる事件に対し、大統領は感情を伴った反応を示していない。首脳20カ国・地域(G20)首脳会議から帰国する際には、厳しい非難に直面するだろう。 あるコンサルタントによれば「もう1つのメキシコでは改革が進行中」で、そちらが現在の状況から打撃を被る公算は小さいそうだが、ペニャニエト政権の国防相であるサルバドール・シエンフエゴス大将でさえ「国家の発展と進歩が危機に瀕している」と警告を発している。 ペニャニエト大統領の遺産を決する対応 メキシコのペニャニエト新大統領就任、治安回復に決意表明 改革を賞賛されてきたエンリケ・ペニャニエト大統領〔AFPBB News〕 「ペニャニエトの遺産は、向こう4〜6週間における彼の行動をベースに築かれることになる」。通商交渉に携わったこともある著名なエコノミスト、ルイス・デラカイエ氏はそう指摘する。 「大統領には、一連の出来事に向き合ってこれを乗り切り、その結果を近代的な国を建設するために用いる時間が1カ月ある・・・大統領がそのために費やすコストは、まさに日を追って大きくなっていく」 ヒューマン・ライツ・ウォッチのホセ・ミゲル・ビバンコ氏によれば、メキシコ政府は治安の問題を「有毒な」ものと見なして避けてきた。 だが、この治安を企業は最も懸念するようになっており、国際通貨基金(IMF)も11月半ば、「(来年のエネルギー改革入札プロセスが)比較的スムーズに行われること、そして(同プロセスには)透明性があると見なされて投資家や政治家からの信認が維持されることが非常に重要だ」との見解を明らかにしている。 では、大統領は何をすべきなのか。デラカイエ氏は、既得権益や法の支配、そして司法制度の改革にもエネルギー産業や通信産業の改革と同じくらい真剣に取り組んでいることを、この機をとらえて示す必要があると述べている。 大統領は、制度強化のための超党派の協約を結ぶという曖昧な約束はしている。だがデラカイエ氏は、政府幹部に確定申告書の公表を義務づけることで透明性の確保に本気であることを示したり、選挙運動が犯罪の温床になるのを防ぐために選挙運動の経費削減や期間短縮を進めたり、連邦レベルの口頭審問制度の早急な導入に取り組むことで司法改革に弾みをつけたりする必要があると主張している。 お咎めなしで済ませてはならない。2009年にミチョアカン州で38人の職員を逮捕した「ミチョアカナソ」のような汚職摘発があれば強いシグナルを発することになるのだろうが、あのときは結局ほとんどの逮捕者が後に釈放された。 司教たちからも「もうたくさんだ」の声 数人の現職閣僚が来年の州知事選挙や国会議員選挙に出馬したいとしているため、ペニャニエト大統領は近々内閣を改造せざるを得ないだろうが、すぐにというわけではないかもしれない。急を要するのは、国民がどんな気持ちでいるのかということに改めて向き合うことだ。 「バスタ(もうたくさんだ)」。メキシコの司教たちは声明を出してそう叫んだ。「抵抗から提案に移行することが必要だ。この国がだめになるのをハゲタカのように待っていてはいけない・・・我々全員が解決策の一部なのだ」 By Jude Webber in Mexico City http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42232
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