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2014年11月15日
古村治彦です。
今回は、2016年のアメリカ大統領選挙と政治思想の関係について書きたいと思います。2年後の他国の政治ショーについて書くのは鬼も笑わずに、呆れてしまうことでしょうが、ここが一つ争点になって欲しいという願いも込めて書きたいと思います。ただ、これは希望であり、実際にはそうならずに世界はもっと酷い状況になっていくんだろうと考えています。
2014年の中間選挙が終わって、次はいよいよ2016年の大統領選挙です。現職のバラク・オバマ大統領はこの選挙には出馬できないので、全く新しいリーダーを選ぶことになります。あれだけ清新なイメージで、人々の圧倒的な支持を得て登場したオバマ大統領でしたが、6年を過ぎてぼろ雑巾のようになっています。しかし、2期を何とか務め上げることができるでしょうから、それだけでも大したものです。
現在のところ、民主党ではヒラリー・クリントン前国務長官が次の大統領選挙の候補者として有力視されています。他にはいないような状況です。かろうじて現職のジョー・バイデン副大統領の名前も挙がっていますが、厳しい状況です。
一方の共和党は、色々な名前が挙がっています。クリス・クリスティニュージャージー州知事、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事、マルコ・ルビオ連邦上院議員、ポール・ライアン連邦下院議員、ランド・ポール連邦上院議員などの名前が取りざたされています。人材が豊富そうに見えますが、帯に短し襷に長しで、2016年の大統領選挙でホワイトハウス奪還を目論む共和党としては、強力な敵手となるヒラリーに勝てる力を持つのは誰かを見極めかねているというのが現状だと思います。
このブログの右側にある「カテゴリー」という欄に「アメリカ政治」というタイトルがあります。そこを押していただくと、このブログでご紹介したアメリカ政治関連の記事が出てきます。こちらをお読みいただけると、アメリカ政治についてより詳しくなることができます。
私がこのブログでご紹介してきたアメリカ政治の記事をまとめ、自分なりに考えたことをこれから書きたいと思います。
私が2012年に出しました『アメリカ政治の秘密 日本人が知らない世界支配の構造』(PHP研究所)で描き出しましたように、アメリカの外交政策の潮流には、「ネオコン派・人道的介入主義派(Neoconservatives/Humanitarian Interventionism)」と「現実主義派(Realists)」があります。ネオコン派は共和党、人道的介入主義派は民主党、現実主義派は民主、共和両党にまたがります。それぞれについて簡単に言うと、ネオコン派と人道的介入主義派は、「アメリカの理想を実現するために世界中に積極的に介入していく」と考える人たちであり、現実主義派は「無理をしないで、世界に出来るだけ介入しない」と考える人たちです。ネオコン派はイラク戦争時のジョージ・W・ブッシュ政権にたくさんの人々が参画していたので有名になりました。
オバマ大統領とバイデン副大統領は現実主義派です。一方、ヒラリー・クリントンは人道的介入主義派です。ヒラリーは、「世界中で苦しんでいる人々のためにアメリカは軍事力を使ってでも積極的に介入すべきだ」と考える訳です。党派は異なりますが、ネオコン派も積極的介入=軍事介入という点で共通です。
ジョージ・W・ブッシュ大統領のアフガニスタン侵攻とイラク戦争のせいで、2008年の選挙で、共和党はオバマの当選を許し、連邦上下両院選挙でも惨敗を喫しました。その結果、イラク戦争などを主導したネオコン派の人々は表舞台から姿を消すことを余儀なくされました。しかし、理由は違えど彼らと同じような結論に至るように考えるヒラリーがオバマ大統領の下、国務長官となりました。そして、アラブの春が起きました。しかし、リビアのベンガジでアメリカの大使が殺害されるという事件が起きました。これは揺り戻し、吹き戻し、ブローバックと呼ばれる現象です。それによってヒラリーは退任することになりました。
現在のアメリカの外交姿勢は「弱腰」のように見えますが、話し合いを重視し、難しい相手でも単純に「敵認定」せずに、国際社会に迎え入れて問題を解決しようとしています。これが現実主義派のやり方なのです。しかし、華々しい結果をすぐに得られないので、人気は出ません。オバマ大統領も「リーダーシップの欠如」などと言われています。それに対して、ヒラリーにはリーダーシップと経験があると見なされているのです。
しかし、ヒラリーが大統領になったらどうでしょう。ネオコン派と同じ結論になる彼女のことです、アメリカ軍をより積極的に中東に派遣するでしょう。それだけで済むでしょうか。東アジアも不安定要因が多い中で、更に緊張が高まる可能性があります。
これに対して、民主党リベラルの一部では、民主党のバイデン大統領を何とか勝たせて、現実主義を継続させようという動きがあるようです。しかし、あくまで一部、少数派のことですから、これがうまくいくかどうか分かりません。そうなると、ヒラリーを大統領にさせないためには、共和党のネオコン派とは違う考えを持つ人物を対抗馬にすべきだという考えが出てきます。
そのための候補がランド・ポールです。彼の父ロン・ポールが共和党所属の連邦下院議員でした。ロン・ポールはリバータリアンとして一貫した政治姿勢を貫きました。リバータリアニズムとは「政府は余計ないことをしないで最低限の機能だけを果たし、個人の自由と権利を最大限に尊重すべきだ」という思想です。リバータリアンたちは、軍隊についても「アメリカが世界の警察などしなくてよい、可哀そうな人たちがいるのは分かるがそれは彼らが解決すべき問題だ、アメリカ軍はアメリカに帰ってくれば良い」と主張します。ランド・ポールもそうした主張を穏健に行っています。
ここに、民主党のリベラル派と共和党内の穏健なリバータリアンの連合ができる可能性があるのです。いや、既にできていて、リベラル・リバータリアニズム連合(Liberal-Libertarianism Alliance)について学術的な研究も進められているということです。リベラル・リバータリアン連合の戦略は、ヒラリーに対して、民主党の予備選ではバイデンをぶつけ、本選挙では共和党のランド・ポールをぶつけるという二段構えのものです。しかし、残念なことに、民主党リベラル派も共和党リバータリアンも少数派であるため、恐らくこの戦略がうまくいくことはなく、ヒラリーが大統領になってしまうでしょう。
アメリカの財政赤字や経済状況が悪化すれば、アメリカ軍が世界に出ていくお金はなくなるのですが、アメリカには日本とサウジアラビアという2つのATMがあり、特に日本の場合は「無尽くん」です。従って、ヒラリーが大統領になれば、日本が貢ぐべきお金が増えていくことになります。
こうしたことも考えながら、これから2年間の動きを注意深く見ていく必要があると思います。
(終わり)
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