03. 2014年11月10日 07:42:53
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中間選挙後の米国:ワシントンへの帰還 政治の行き詰まりにうんざりする有権者、いまこそ必要な妥協と改革 2014年11月10日(Mon) The Economist (英エコノミスト誌 2014年11月8日号)共和党は大きな勝利を収めた。次は妥協することを学ばなければならない。 危ぶまれる米暫定予算成立、政府機関閉鎖の影響は 中間選挙では共和党が圧勝し、上下両院の過半数を獲得した〔AFPBB News〕 11月4日の米国中間選挙前の世論調査では、バラク・オバマ大統領率いる民主党が痛い目に遭うことが示唆されていた。だが、実際の結果は、痛い目どころか大敗だった。 共和党はやすやすと上院を制し、下院の獲得議席数は、ほとんどの米国民が生まれて以来最大となった。ニューヨークの選挙区で立候補した共和党候補は、20件の詐欺容疑で起訴されているにもかかわらず当選した。 詳しく見ると、この結果は民主党にとってさらに悪いものだ。民主党の目論見では、減税を進めて労働組合を叩く共和党の州知事たちを追い落とせるはずだったが、ほぼ全員が再選された。それどころか、メリーランドやマサチューセッツといった民主党の支持基盤の州の知事選も、共和党の候補が制した。 オバマ氏は、自身の仕事ぶりに下された屈辱的な審判から逃げられない。大統領が遊説に訪れた地元イリノイ州の知事選では、民主党の現職と、入会金が10万ドル以上するワインクラブに所属する共和党候補が争っていたが、5ポイント差でワイン愛好家が勝利した。 とはいえ、祝杯を挙げている共和党も、今回の勝利を拡大解釈しないように気をつけなければならない。 選挙戦中、共和党は、前向きな政策を有権者にあまり提示しなかった。共和党が主に力を注いだのは、世界で起きているあらゆる問題について、オバマ氏を責めるよう有権者に訴えることだった。その戦略は勝利を収めるには十分だったが、共和党が望む保守的な政策を推し進める信認を得たことにはならない。 米国では、党派意識を持つ国民がこれまでになく増えているものの、政治の行き詰まり状態にうんざりしている人はそれよりも多い。そうした人たちは自ら選んだ議員に対して、むしろ妥協してしっかり成果を出してほしいと望んでいる。有権者を満足させるには、米国は新たな政治手法を見つけ出さなければならない。 穏健派に対する信認 他国の多くの人々は、今回の選挙結果に当惑するはずだ。米国は、ほかの先進国に比べて良い状態にある。経済は成長し、株式市場には活気があり、失業率は低下し、財政は少なくとも欧州の基準からすれば健全だ。激戦州の民主党候補に「応援に来るな」と言われるほどオバマ大統領が嫌われているのを、不思議に思う人もいるだろう。 その答えは、米国経済が表面的には良さそうに見えても、有権者がそれを実感していないことにある。所得のメジアン(中央値)は低迷し、多くの世帯は将来に大きな不安を抱いている。米国民の3分の2という圧倒的に多くの人が、子供の世代の暮らしは今の自分たちよりも悪くなると予想している。 しかも、政治家たちは何をしているのかと首都に目をやれば、繰り広げられているのは騒々しい中傷合戦と無責任な行動だ。2013年には、下院を支配する共和党とオバマ大統領のにらみ合いが政府機関の一時閉鎖を招き、危うく国債デフォルト(債務不履行)という大惨事を引き起こすところだった。 まもなく会期を終える現議会は、1947年以降で最も成立法案が少なかった。議会を信頼する国民の割合は、7%という惨憺たる数字だ。酷なことかもしれないが、自国が誤った方向に進んでいると有権者が考えているときには、大統領とその党が責められるものだ。 共和党の中には、オバマケアの撤回という無益な試みに没頭し、共和党の考える大統領の「権力乱用」についての調査をテレビで流すことだけに今後2年を費やすことを何より願う派閥がある。その一派が優勢になれば、米国は今以上の機能不全に陥りかねない。その場合、共和党が2016年の大統領選で敗北してしかるべきだ。 楽観主義者たちは、新たな議会はそれほど愚かではないと確信している。共和党が主導権を握った今、有権者は共和党に対して、単なる妨害ではなく、きちんとした政治運営を期待するはずだ。ミッチ・マコーネル上院院内総務やジョン・ベイナー下院議長といった共和党の指導者たちは、党内派閥の多少の小競り合いはあっても、恐らくなすべき仕事をしようとするだろう。それは、オバマ大統領と協力することを意味する。 イスラム国の脅威を「過小評価」、米大統領が認める 厳しい立場に立たされたバラク・オバマ大統領だが、共和党と協力できる分野はたくさんある〔AFPBB News〕 オバマ大統領の任期は2017年1月まであり、新議会がどんな法案を通過させても拒否できる。したがって、双方が合意点を見つける必要がある。まず歩み寄るべきは大統領側だろう。 双方が合意できそうな分野は数多くある。共和党が自由貿易を支持する一方で、オバマ大統領は貿易協定について交渉する権限を求めている(民主党がその権限を与えていない)。 どちらの側も、法人税法の改正や粗悪なインフラへの投資拡大を望んでいる。また、双方の穏健派は、米国に役立つ才能ある人材の流入を妨げている移民法の改正を求めている。 権力には責任が伴う だが、仮にそうした楽観論が正しいとしても、米国が抱える多くの病は、現在の政治では力が及ばないもののように見える。 個人所得税法の簡素化は、中間層の抜け穴を塞がなければ実現できない。高齢化が進む中、医療費と年金を抑制し、年金支給開始年齢を引き上げなければ、いずれこれらの費用に予算が飲みこまれてしまうだろう。どちらのケースでも、持続的な改革をすれば、多くの有権者に痛みを強いることになる。 民主・共和両党がそろって関与しなければ、改革は実現しない――片方だけで試みれば、他方がそれを「高齢者の切り捨て」と非難するだろう。どちらの党にしても、冷静な思考の持ち主なら、自動的に支給総額が膨らんでいく巨大な給付金制度を是正する必要があることは分かっている。 だが、議会がどれほど協調的な状態であっても、どちらの党もこの問題を避け、毎年再承認が必要な予算のわずか15%(国防費を除く)を巡って言い争いをする方を優先するのが常だ。 米国は、ロナルド・レーガンやビル・クリントンの時代とは変わっている。選挙運動に膨大な資金が注ぎこまれ、それが立法府を腐敗させていると指摘する声も多い。両党の二極化が一段と進み、ますます互いを信用しなくなっている。 問題の一部となっているのが、米国の政治構造だ。それには2つの理由がある。1つは、選挙制度が極端な見解を持つ候補に有利に働いているという点だ。下院議員の多くは、所属政党が絶対に負けることのできない、意図的に区割りされた選挙区で選ばれている。 彼らが恐れるのは、党内の対立候補に「敵に対して手ぬるい」と非難されて予備選で敗れることだけだ。そのため、予備選で投票する熱狂的支持者におもねり、妥協の機会をまるで星条旗を燃やす誘いであるかのように扱う。 第2の理由は、連邦政府にあまりにも多くの「チェック・アンド・バランス」があり、ほとんど麻痺していることだ。上院のフィリバスター(議事妨害)制度は、100人中41人の議員に予算を除くあらゆる議決を妨げる力を与えている(この人数は理論上、人口の11%を代表しているにすぎない)。 米国の政治を良くするための3つの提案 選挙資金に上限を設ける試みは、大抵失敗に終わり、言論の自由を保証する合衆国憲法に違反することになる。せいぜい期待できるのは、資金提供者の身元開示を義務づけることくらいだ。だが、中道勢力に力を与え、障害を取り除くような改革を遂行すれば、合衆国憲法を改正しなくても、もっと大きな効果が得られるはずだ。ここで、3つの方法を提案する。 1つ目は、上院のフィリバスター制度を廃止すること。2つ目は、党に都合の良い区割りにするゲリマンダリングをやめることだ。4つの州では、すでに区割り再編の権限が第三者機関に委ねられている。カリフォルニア州では2010年にこの制度が実施された。2002年から2010年にかけて、同州選出の下院議員の再選率は99.6%だった。だが2012年には、4分の1が引退するか落選した。 こうした改革により、カリフォルニア州議会も中道寄りになった。かつては強硬派の民主党議員に支配されていたが、2013年には、商工会議所が「雇用をつぶす」と指摘した40の法案のうち、39件が否決された。うまくいけば、いつの日か、党の都合を考慮せずにコンピューターで選挙区が設定されるようになるだろう。 第3の提案は、カリフォルニア州のオープンな予備選をほかの州も導入することだ。ほかの州では、登録した共和党員が共和党の候補を、民主党員が民主党の候補を選ぶが、カリフォルニア州では、誰でも投票できる予備選が実施されるようになった。 予備選の上位2人が、その後の一般選挙に進む。上位2人が同じ党に所属する場合でも、それは変わらない。この仕組みは、候補者がはじめから中道の有権者に訴える動機の1つになる。 こうした改革は、どれもすぐには実現しないだろう。実施するには、各州で忍耐強く世論を喚起する必要があるからだ。だが、米国民がより良い政治を望むなら――先の中間選挙では、それを求めて票を投じたはずだ――まずは国の指導者たちを選ぶ方法を変えなければならない。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42161 |