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「税逃れ」規制を欧米が強化 多国籍企業、漂う海外戦略 アップル、スタバ、ファイザーなど 買収・立地、再考迫る
米国に本拠を置く医薬やハイテク関連の多国籍企業が海外でのM&A(合併・買収)や立地選択の戦略の修正を迫られている。企業誘致を目的とする各国の課税優遇措置を利用した事業展開が「税逃れ」だとの批判が強まり、欧米当局が相次ぎ規制強化の方針を打ち出したためだ。既に租税回避を目的とする買収が撤回に追い込まれるケースが出ており、影響が広がる公算が大きい。
米製薬大手アッヴィは15日、アイルランドの同業シャイアーとの買収合意を撤回した。買収後は本社を英領ジャージー島に置き、低い法人税や特許収入への優遇措置のある「英国企業」に転身する予定だった。誤算は米オバマ政権の対応の変化だ。ルー財務長官は「この問題への対応はもう待てない」と9月下旬に規制強化の方針を決めた。
「タックス・インバージョン」(納税地変換)と呼ばれるこの手法は、必ずしも新しい方法ではない。ただ経営実態は米国企業でありながら、本来徴収すべき税収を漏らしていることに米国がしびれを切らした。米国の法人税率(連邦政府)は35%で主要国で最高水準だ。特に米国を代表する製薬大手ファイザーまでがこうした手法に手を染めようとしたことが規制強化の決定打となった。
■「抜け道」廃止
欧米で法人税の租税回避問題への追及が厳しくなったのは今年6月だ。欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会が、アイルランドの米アップル向けの特別な税優遇などについてEUの規定に違反する疑いがあるとして正式調査を始めた。調査対象は、インターネット通販大手の米アマゾン・ドット・コムを優遇してきたルクセンブルク、米コーヒーチェーン大手のスターバックスが拠点を置くオランダにも及ぶ。
低税率や優遇策で多国籍企業の誘致を進めてきた国も対応を迫られている。アイルランドは今月14日に発表した2015年度予算案で、「ダブルアイリッシュ」と呼ばれる租税回避の抜け道を廃止することを決めた。
多国籍企業はアイルランドに営業実態のない会社と、事業会社の2つの法人を設立する。オランダの別法人を経由して商品販売などの利益を特許使用料として事業会社から営業実態のない法人へ移転する。両国間の租税条約で特許料のやりとりは非課税扱いになる。
営業実態のないアイルランドの法人を英領バミューダ諸島などの租税回避地から経営するとアイルランドの法人税を免れることができるため利益はこの法人に集約する。一連の取引で企業は大幅な節税が可能だった。
間にオランダの法人を挟むため「ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ」とも呼ばれる。
グーグルのパトリック・ピシェット最高財務責任者(CFO)は16日の決算会見で、アイルランドの優遇見直しについて「政治家が法律を作り、企業はそれに従うだけ」と述べた。同社はダブリンに欧州全域と中東・アフリカの統括本部を置き2千人以上を雇用する。
■大きい海外収益
多国籍企業にとって海外事業収益の全体への影響は大きい。アップルの場合、12年度の海外事業の法人税率は2%に満たない。海外で保有する現金などは13年9月末時点で1113億ドル(約12兆円)と、グループ全体の7割以上を占める。
スターバックスは欧州の本社機能をオランダから事業上の拠点である英国へと移転する計画を進めている。移転は租税回避の追及をかわす狙いもあるとされる。多国籍企業は強まる取り締まりにいかに即応するかが課題となっている。
ただ租税回避を巡る問題は容易に解決しそうにない。優遇措置廃止を決めたアイルランドだが現在対象の企業は20年末まで優遇を受けられ、「6年以上の猶予期間は長い」との声もある。さらに特許使用料など知的財産権から生じる所得への課税を優遇する制度を欧州委の判断を待って16年にも導入するとされる。南カリフォルニア大学のエドワード・クラインバード教授は新たな優遇策が導入されれば「今回の優遇措置廃止と相殺されるため、進出企業への実質的な影響はほとんどないだろう」と指摘する。
ロンドン=黄田和宏、シリコンバレー=小川義也
[日経新聞10月21日朝刊P.6]
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