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オバマの書かれない歴史(Obama’s Unwritten History)
ジェフリー・フランク(Jeffrey Frank)筆
2014年7月15日
ニューヨーカー(New Yorker)誌
アメリカの有権者たちは怒りを持っている。しかし、キュニピアック大学による最新の世論調査の結果は驚きをもって迎えられた。バラク・オバマ大統領は戦後の歴代大統領12名の中で最低の支持率を記録した。12人中12番目であった。オバマ大統領の支持率は40%の辺りを上下しており、これが救いになるかもしれないが、オバマ大統領の支持率は急激に低下している。現在はテキサスで絵画にいそしんでいるジョージ・W・ブッシュ大統領(35%)よりはましだし、ウォーターゲイと事件の時のリチャード・ニクソン大統領(27%)よりはかなりましだ。更には、大統領の任期末期のハリー・トルーマン大統領(23%で最低記録)の2倍はある。それでも、ブッシュ、ニクソン、トルーマンはそれぞれ最新の調査で11番目、10番目、1番目を記録している。世論調査員たちの質問が回答を導き出すとすると、オバマ大統領についての数字は、人々がオバマ大統領は自分の仕事をきちんと果たしていないと考えていることを反映しているようだ。
国家の団結が必要とされる時期、特に戦争や悲劇的な出来事の発生時を除き、大統領の支持率が高いのは珍しいのである。平時の政権の場合、国民の心理や社会空間を占める問題の数は多すぎるのだ。大統領だった人物がその地位を去って長い時間が経過してはじめて私たちはその人のことを好きになるというのが普通だ。トルーマンの場合がそうだ。また、任期途中で殺害されてもそうだ。ジョン・F・ケネディ大統領がそうだ。誰が大統領になっても、大統領職の興奮は収まっていくものだし、ある程度、大統領の周辺がそのようにする場合もある。現在のバラク・オバマ大統領が置かれている状況がまさにそれだ。力が使い尽くされていながら、同時に人々を苛立たせている。; 国内外の彼に対する敵対者たちの注意はオバマ大統領から離れていくものだ。そして、任期の残り30カ月は、トルーマンが「野心と名声の白色の巨大な墳墓」と呼んだ状態になる。
しかし、物事を正さないということと物事を間違った方向に進めるということは全く違ったものである。これは、戦後4代目の大統領であったリンドン・ジョンソンが語っていた言葉だ。リンドン・ジョンソンは最新の世論調査で歴代4番目にランクされている。しかし、彼がヴェトナムでやったことは、ヴェトナムにおける米軍将兵の数を50万以上に増やした。それから10年前にはフランス軍がヴェトミンと植民地戦争を戦い、植民地戦争に勝利できないということを明らかにした後の愚行であった。ジョージ・W・ブッシュ大統領は、アメリカを気軽に2つの戦争に引きずり込んだ。アフガニスタンでの戦争は計画が杜撰だったために、オサマ・ビン・ラディンと彼の部下たちを取り逃がした。イラクでの戦争は泥沼化した。ブッシュにしても、ディック・チェイニー副大統領にしても、そして政権内の誰も中東地域を全く理解しないままに戦争に突き進んだ。ここのような状況は再び繰り返されるのだろうか?
オバマ大統領を批判する人々は、「オバマ大統領のせいでアメリカの威光、影響力、尊敬、国力が減退している」と批判している。この前提を正しいとすると、彼らが主張する解決策はどれも同じだ。地球上の真の超大国(この考えが示しているのは、アメリカの力が衰えていないということだ)は、状況が悪くなりつつある地域にアメリカが関与すべきだということだ。それは、「穏健派」や「反体制派」に武器を供与したり、空爆を行ったり、「民主化」勢力を支援したりということを意味する。
現代の歴史は理解されていない。国際貿易センタービルとペンタゴンに対する攻撃とその余波が、アメリカが戦った2つの悲惨な戦争に向かうターニング・ポイントになったと人々が考えるのだろうかまだ分からない。そして、「世界規模でのテロリズムとの戦い」は、2001年9月11日に起きた出来事と私たちの対応が生み出した人々やグループとの間の衝突(現実のもしくは非現実の)を意味するのかということもまだ分かっていない。それでも、タリバンやヴェトナムのゲリラと同様、彼らは戦い、逃げ、姿を消し、アメリカの衰退というイメージを際限なく強化し続けることだろう。
65年以上前の冷戦初期、ウォルター・リップマンは世界規模での「封じ込め」政策に狙いを定めた一連のコラムを執筆した。封じ込め政策は、ジョージ・ケナンが生み出したもので、歴史家のジョン・ルイス・ギャディスは「戦後のソ連の行動を説明する上で最も影響力を持った理論」と呼んだ。リップマンは、「ソ連はアメリカの力に対峙するところまで力を膨張させるだろう」と考えた。そして、現実主義的な彼は、「アメリカの軍事力は、ソ連の封じ込めという政策を実行するほどの力ではない。封じ込めは、休みなく長期間にわたって行われなければならないが、それに見合うだけの力はない」と主張した。ヴェトナム戦争やアフガニスタンにおけるムジャヒディンへの武器供与によって数十億ドルが支出される数十年前、リップマンは、世界規模で行われた封じ込め政策を「戦略的な怪物」と呼んだ。現在、テロリズムの脅威に対して疑問を持つ人はほとんどいないだろう。しかし、「テロリズムに対する世界規模での戦争」には内戦や冷酷な政権に対する対応も含まれている。人々の苦しみが見ていられないほどの場所にまで介入するにしても、それの目的と結果は不確かなものだ。
オバマ政権は言葉遣いが一定しなかったために、敵対者と支持者たちが誤解する危険性を排除することができなかった。例えば、2011年8月、オバマ政権は「シリアの人々のために、アサド大統領は退陣すべき時が来た」と発表したり、2014年3月、ロシアはクリミア半島を併合したことの「代償を支払うことになる」と述べたりした。しかし、このような間違いを犯しながらも、オバマ政権は、現実的に軍事力を用いる前に正しく自問自答することができた。彼らは次のような疑問について考え続けた。「私たちが実際に軍事力を用いるとして、いったいどういう結果になるだろうか?現在の悪い状況をさらに悪化させることにならないか?軍事力を用いるとして、それをどのように停止するか?リップマンの言葉遣いにならうなら、私たちの実力と権威を浪費することになるのではないか?」ジョージ・W・ブッシュ政権の人々は短期間でアメリカの国力と名声を浪費してしまった。
回避された戦争や発射されなかった巡航ミサイルについては多くのことは書かれない。しかし、書かれない歴史こそがオバマ大統領の達成した偉大な業績なのである。最新の世論調査での低評価も、時間と共に変化して、順番も上がっていくことだろう。
※ジェフリー・フランク:ニューヨーカー誌の上級編集者。著書に『アイクとディック:奇妙な政治的結婚の肖像(ke and Dick: Portrait of a Strange Political Marriage)』がある
(終わり)
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