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住民投票で否決も、欧州随一の経済大国となりうるスコットランドの実質的勝利だった?(週プレNEWS)
http://www.asyura2.com/14/kokusai9/msg/442.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 9 月 23 日 07:34:26: igsppGRN/E9PQ
 

住民投票で否決も、欧州随一の経済大国となりうるスコットランドの実質的勝利だった?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140923-00036142-playboyz-pol
週プレNEWS 9月23日(火)6時0分配信


80%以上の極めて高い投票率のなか、「独立には反対」という結果で終わったスコットランドの住民投票。しかし、日本人には一連の報道に「そもそも、なんでこんなことになっているの?」という素朴な疑問を感じた人が少なくないだろう。

普段、われわれが「イギリス」と呼ぶ国の正式名称は「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」といって、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つで構成された「連合王国」だ。

このうち、スコットランドがイングランドに「統合」されたのは1707年のこと。以来、300年以上にわたってスコットランドは「連合王国」の一部となってきたわけだが、それ以前は独立した「スコットランド王国」として長年、イングランドの侵略と戦ってきた歴史がある。

こうした歴史的な背景に加え、独自の文化と、強い民族意識を持つスコットランドでは以前から「独立」を訴える声が存在した。そして、1960年代に入り、ヨーロッパ随一の規模を誇る「北海油田」の開発が始まると、この「石油資源」の存在を背景に独立の機運が一気に過熱することになる。

1979年にはスコットランド議会の設立を求める最初の住民投票が行なわれ、その後の地道な運動によって、1999年には300年ぶりにスコットランド議会が復活し、自治政府を設置……と、この30年ほどで着実に自治権の拡大を続けてきた。

そして2012年、与党「スコットランド国民党(SNP)」が過半数を占めるスコットランド議会が、イギリスからの独立の是非を問う住民投票を行なうことを決定。イギリスの議会もこれを認めたことから、9月18日、いよいよ「運命の日」を迎えたというわけである。

「とはいえ、ほんの2ヵ月前までは誰も心配していませんでした。ほかならぬイギリスのキャメロン首相もスコットランドの独立なんてあり得ないだろうと、タカをくくっていたのです」

そう語るのは、元産経新聞ロンドン支局長で、イギリスを拠点に活躍する国際ジャーナリストの木村正人氏だ。

「住民投票の実施が決まって以来、独立賛成派(YES)と反対派(NO)の両陣営が、それぞれ1年以上にわたってキャンペーンを続けてきたわけですが、賛成派の顔である与党SNPの党首、アレックス・サモンドは政治家としての資質が高く、政策力もあるし有権者の気持ちが読める人。そのサモンドが8月25日に開かれた2回目のテレビ討論会で70%という高い支持を得たあたりから、流れが大きく変わりましたね。

その後、サンデータイムズが行なった世論調査では賛成派が初めて反対派をリード。投票直前の各紙の調査では、再び反対派が賛成派を上回っていたようですが、その差はごくわずか。1992年以来、選挙で予想を的中させてきた調査機関のプロも今回ばかりは『予想不可能』と白旗を揚げるぐらいの大接戦になっていました」(木村氏)

それにしても、投票前、わずか2ヵ月ほどで、これほどの接戦になった原因はなんなのだろう? 木村氏が続ける。

「もともと油断していたことに加えて、イギリス政府など『独立NO』の陣営が『独立したらポンドは使わせないが、通貨はどうするんだ? 独立したら福祉のレベルを維持できないぞ』といった感じで、独立賛成派の不安をあおったり、脅したりするようなキャンペーンを張ったことも大きいと思います。

夫婦の離婚にたとえるなら、夫であるイギリスが、その夫との離婚を望む妻(スコットランド)に『おまえなんて俺と離婚したら自立できないクセに何バカなコト言っているんだ』と言うようなモノ。これが逆に、スコットランド人の反感を招くことになったのです」(木村氏)

また、もうひとつ大きかったのが、政府が長年にわたって存在を隠し続けてきた、ある報告書の存在が2005年に明らかになったこと。

「1970年代に作られたその報告書には、なんと、『北海油田の権利を抱えてスコットランドが独立すれば、(欧州随一の経済大国となって)欧州最強の自国通貨を手に入れることができる』と書かれていたのです。

イギリス政府はこの報告書の存在を隠すことで、ずっとスコットランドにウソをつき続けていた。それを知ったスコットランド人は『独立を本当に恐れているのは、むしろイギリスのほうなのだ』と感じているのだと思います」(木村氏)

実際、住民投票の結果、スコットランド独立賛成派が一票でも反対派を上回れば、イギリスにとってその影響の大きさは計り知れなかった。

まず、北海油田の権益をめぐっては、領海を緯度で区切り「北海油田の9割近くは自国のもの」と主張するスコットランドに対して、国境線の延長線上で領海を区切り「北海油田の約半分」の権利を主張するイギリスとの間で、議論がすでに起きている。もしスコットランドの言い分が通れば、イギリス経済には大打撃だ。

また、スコットランドには現在、イギリス唯一の「核ミサイル搭載原潜」の基地があるが、スコットランド政府は「非核化」の方針のため、基地の存続は難しく、イギリス国内に移設せざるを得ない。ここでもイギリスは頭を悩ませたことだろう。

肝心の結果は反対派の勝利となったわけだが、今後、イギリス政府がスコットランドに対し、税制なども含めた大幅な自治権の拡大、権限の委譲を進めることは避けられない。投票の結果に関わらず、世界的な注目を浴びたこともあり、スコットランドにとっては実質的な「勝利」だったといえるのだ。

■週刊プレイボーイ40号「スコットランドに続くのはウイグル?カタルーニャ?沖縄!?」より(本誌では、スコットランドの影響で飛び火する各国事情も詳説)


 

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コメント
 
01. 2014年9月25日 21:35:23 : 358VeCXh4E
スウェーデン総選挙と岐路に立つ欧州政治
既成政党が支持失い、極右が躍進〜北欧・福祉社会の光と影(49)
2014年09月25日(Thu) みゆき ポアチャ
 9月14日に実施されたスウェーデン総選挙の大ざっぱな総括は、中道右派政権のフレドリック・ラインフェルト首相が交代し、社会民主労働党(以下、社民党)党首のステファン・ロベーン氏が首相を引き継ぐことになったことと、ファシズムを標榜するスウェーデン民主党が同国第3の政党となったことだ。

 さらに特徴的なことは、既成の政党が大幅に支持を失い、いわゆる新興政党が票を伸ばしたことと言える。社民党の勝因を一言で言うと、「政権党である穏健党の支持票が大量に極右党に流れた」からだ。

スウェーデン国民の消極的選択


 予想通り社民党が第1党となり、連立を形成して政権を引き継ぐことになったが、同党が獲得した投票は31%だ(上図参照*1)。これは、前回2010年の総選挙時の得票結果からわずか0.4%増えただけなので、国民が喜んで「次期政権を任せたい!」という強力な支持を送った結果、というわけでもなさそうだ。

 社民党の得票に、環境党6.8%、左翼党5.7%を合わせても、得票率は半数に満たない43.7%である。つまりこの3党連合は、議会投票で過半数を占めるために必要な175席には15議席ほど足りないことになる。

 これまで2期にわたって政権に就いてきた、穏健党が率いる中道右派連合も悲惨な結果だ。穏健党は、前回選挙から得票率を6.7%減らし、23.2%という低率となった。同党と連立してきた3小党、自由党、中央党とキリスト教民主党も、前回から支持を減らしている。

 この2大連合の得票差は4.4%と、それほどの大差ではない。有権者にとっては、「どっちに投票しても大した違いはない」ということなのだろう。

「次なるスーパーモデル」も今は昔、急拡大する格差に有権者がノー


保守・穏健党党首のラインフェルト氏は選挙ポスターで「さあ、スウェーデンを建設しよう!」と呼びかけたが、敗北を喫した
 敗北が確定した後、ラインフェルト氏と財務大臣のアンダース・ボリ氏は辞任を発表した。ボリ氏は政界からも引退すると宣言した。

 昨年、英エコノミスト誌のカバーストーリーで、「世界が学ぶべき北欧諸国: 次なるスーパーモデル」として彼らも賞賛されていたが、それももう「今は昔」だ。

 この8年間にわたり政権を率いてきた中道右派は、就任した2006年以降、スウェーデン史上最大の規模で国有資産を売却し、公共部門の民営化、規制緩和、社会福祉の削減と減税を推進してきた。

*1=http://www.dn.se/valet-2014/se-2014-ars-valresultat/

 この結果、社会の不平等が極端に深化した。経済協力開発機構(OECD)の調査では、スウェーデンは社会的不平等が最も急速に拡大している国となっている。

 このコラムでも触れてきたが、教育制度のスタンダードは劣悪化し、学校生徒の成績低下が止まらない。重病患者の病院での待ち時間の長さも、加盟国中ほぼ最高レベルだ。失業率は約7.9%だが、25歳以下の若者と移民、および一部の地域では20%を超えている。

移民・難民の排斥を唱える極右スウェーデン民主党の躍進


極右スウェーデン民主党の選挙ポスターは「組織的な物乞いをストップせよ」と謳っていた
 票を確実に伸ばした唯一の党は、13%と得票を倍増させた極右スウェーデン民主党だ。これにより同党はスウェーデン第3党という大勢力となり、議会にこれまでの20人から、49人に膨張した議員団を送ろうとしている。

 同党は、福祉国家を濫用し、国が現在直面している社会・経済的な問題を生成している諸悪の根源は移民・難民であるとして、増大する社会への不満を吸収して肥大してきた。

 そして政権が交代するとはいえ、新政府を担う社民党とその同盟2党は、恐らくこれまでの路線を大きく変更しようとはしないだろう。

 実際には、2006年まで首相のヨーラン・ペーション氏が率いた社民党が、教育など公共部門の重要な分野を民営化するなどの改革の多くの基礎を築いてきた。これがラインフェルト氏に継承され、政権交代した後、さらに深化され実行されてきた。野党として反対はするものの、社民党は政府の右派政策の多くに暗黙の支持を提供してきたと言える。

 そしてこのたびの選挙後に明らかになった、スウェーデン国民を驚かせた事実は、社民党はこれまでのように環境党と左翼党との3党連立を形成せず、環境党はそのまま政権に受け入れるが左翼党は連立から外し、自由党や中央党と連立しようとしているということだ。

 新政府は、政策路線を右傾化していくということを明確に宣言したということだ。やはり「どっちの陣営に投票しても大した違いはない」ということが実証された格好だ。

 社民党にも、スウェーデンの北欧社会モデルを崩壊させてきた責任は大いにあり、それは政権継承後も継続させるということのようだ。そして今、新たに政権に就くことにはなったが議会で過半数に満たない弱小政府は、前政権と同様、「バランス・オブ・パワー」、拮抗のバランスを決定する勢力となった極右党にも結局は頼らざるを得ないことになる。

 長期にわたって、住みよい社会のモデルとされてきたはずのスウェーデンは、実は国民からも信任を失っており、これが今回の選挙で如実に露呈する結果になったと言える。

欧州極右の伸長、極端な未来を先取りするフランス

 欧州の政界は、大揺れだ。欧州が進むかもしれない極端な未来を先取りしているのはフランスだ。

 極右の伸張という点で言えば、フランスのネオファシスト政党である国民戦線(FN)の党首マリーヌ・ルペン氏が、次期のフランス大統領になりそうな勢いだ。同党は今春の欧州選挙で25%の支持を得、欧州議会ではすでにフランスの第1党となっている。


 9月5日付の仏フィガロ紙によると、9月中に実施された世論調査で「次の日曜日に大統領選挙が実施された場合、あなたはどの候補に投票しますか」という問いに「マリーヌ・ルペン」と回答した人が30%を超えた(上図参照*2)。現職大統領のフランソワ・オランド氏の支持率は、半数の17%だ 。

 フランスでは、8月末に社会党政権が大揺れし、公に政府政策を批判した経済相と教育相を更迭して内閣改造を実施するなど、政治情勢が極端に不安定化している。政府の支持率は20%以下という歴史的な低率だ。

 内閣改造の数日後にルペン氏は、仏フィガロ紙のインタビューで、「この政府はフランソワ・オランドの最後のチャンスであり、純粋に危機に直面するだけだ」と言い、大統領はすぐに新たな議会選挙を行うことを余儀なくされるだろうとして、こう言った。 「私たちが選挙で過半数を得た場合、私たちはフランス人が私たちに委ねた責任を直視します」

 つまり、自分たちはフランスを支配する準備はできていると宣言したということだろう*3。

国民戦線が勝利すれば、EUとユーロ圏から脱退か

フランス極右「国民戦線」、ルペン氏3女が党首に
勢力を伸ばすフランス極右政党、国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首〔AFPBB News〕

 彼女はこのインタビューで、フランス通貨の競争的切り下げを主要な経済戦略とする意図をほのめかしている。つまり欧州連合(EU)とユーロ圏から脱退するということだ。

 ルペン氏は、仏ルモンド紙のインタビューでは批判の矛先をEUに向け、こう発言している。

 「ウクライナ危機を引き起こしたのはすべてEUの責任である。EUの指導者たちはウクライナに欧州とロシアのどちらかを選択することを強制し、現在の危機を引き起こした」「EUの外交は問題を作り出すか、状況を悪化させるかのどちらかだ。EUは破局的な大惨事を引き起こしている」*4

 そして、これに同意する圧倒的な多数が同党へ支持を集中させているということなのだろう。

*2=http://www.lefigaro.fr/politique/2014/09/05/01002-20140905ARTFIG00167-sondage-marine-le-pen-en-tete-de-la-presidentielle-dans-tous-les-cas-de-figure.php

*3=http://www.lefigaro.fr/politique/2014/08/29/01002-20140829ARTFIG00286-marine-le-pen-nous-sommes-prets-a-gouverner.php

*4=http://rt.com/news/185616-eu-pen-crisis-ukraine/

 とはいえ極右政党の党首を大統領に迎えることは、真にフランス国民の総意なのだろうか。

 既成政党への支持の失墜、右派勢力の拡大に関しては、他の欧州国でも似たような現象が起きている。

既存の体制が揺らぎ始めた欧州

 スウェーデン総選挙と同日に行われたドイツ地方選挙でも、既成政党が大幅に支持と権威を失墜させ、昨年結党された新政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が大きく票を伸ばした。こちらもEUとユーロからの脱退とドイツマルクの復活、外国人の入国審査の厳格化などを党是としている。

 同党は設立から7週間で党員数が1万人に達したと報道された。現在も伸張を続け、勢力の増大が与党を脅かしている。

スコットランド住民投票、投票率およそ9割 過去最高
スコットランドの住民投票では、独立反対派が勝ったが、独立支持の得票も45%に達した〔AFPBB News〕

 英国でも、スコットランドで独立を問う住民投票が行われたが、これも体制を揺るがすに十分な大事件だ。

 スコットランドは独立には至らなかったが、投票前には307年にわたるスコットランドとイングランドの連合の解体は「リーマン・ショック」に匹敵するほどの体制の激変と弱体化をもたらすといった懸念が政治家や企業者、軍部などから警告されてきた。

 このように現在の欧州は、過度の政治的緊張状態にある。

 つまり欧州全土で、EUも含め、既存の政治・支配体制が根底から揺らぎ、瓦解を開始している。体制の崩壊は時間の問題と言えるのかもしれない。

議論なく膨張する国防費

 話をスウェーデンに戻すと、総選挙前の討論で大いに議論されたのは教育と福祉、移民問題などだ。筆者が引っかかっていたのは、どの党もメディアも識者も、急激に増大する軍事費に関して一切触れていなかったことだ。

 4月に、国防費が今後10年間にわたって10%以上増加されることが公表されたが、選挙前にこのことにはほとんど言及されていない。国防相によると、防衛費増強により主に空軍を強化し、バルト地域の防衛に焦点を当てるとしている。つまりスウェーデンは米国・北大西洋条約機構(NATO)とともに、ロシア封じ込めの一翼を担うということだ。

 米国とスウェーデンの諜報機関の緊密な連携も、これに伴う国家の監視権限の拡大も、何ら議題には上らなかった。

 スウェーデンはNATO加盟国ではないのだが、米国に追随しNATOの作戦行動に参加し大きく貢献していくというコンセンサスが、少なくとも政党間では暗黙裡に出来上がっているようだ。

 現在、地域で焦点化しているウクライナ情勢は、筆者の私見では、全く沈静化する兆しは見えない。状況の悪化に応じて、国防費はほとんど議論されないまま、今後も膨れ続けるのだろうか。ウクライナの状況は、軍事のみならず経済的にも社会的にも、欧州に大きく影響する。

ますます緊迫するウクライナ情勢

 ウクライナをめぐる情勢はますます緊迫している。9月5日、ベラルーシの首都ミンスクで両者間の停戦がサインされ、「ウクライナは安定に向かう」とメディアは報道したが、その後も東部ウクライナの分離独立派に対するウクライナ政府軍の砲撃が継続している。

 報道では9月17日に市街が銃撃され、市民2人が死亡した。ドネツク当局のアンドレイ・プルギン氏は、「重火器が激しく使用されており、ドネツクの4つの区域が常に爆撃されている」と言い、その2日前にも市民を乗せたバスが砲撃され、現場には6メートル幅の巨大なクレーターが残ったと話している*5。

 同17日、ウクライナ首相アルセニー・ヤツェニュク氏は、分離独立派に対する完全な戦闘準備に入るようキエフ軍に命じたと報道されている*6。同首相はNATOに対し、ロシアとの全面戦争になればウクライナを支持するよう呼びかけた。

 核を持つ超大国との「全面戦争」が、現実的にはどういったことを意味するのだろうか。

ウクライナ大統領、米議会で演説「ロシアは世界の脅威」
9月18日、米連邦議会で開かれた上下両院合同会議で演説するウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領〔AFPBB News〕

 18日には、ウクライナ大統領のペトロ・ポロシェンコ氏が米国議会で演説し、東部の独立派を抑圧するための軍事支援を増加するよう求めた。

 議会の広報紙「The Hill」は、「(ポロシェンコ大統領の演説は)ウクライナの夢を守るために我々に呼びかける、非常に熱心な訴えだった」とし、ウクライナに対戦車兵器、地対空ミサイルや弾薬などを送るべきだとする、民主党議員で上院軍事委員会委員長のカール・レビン氏の声を載せている*7。

 同議員はウクライナへの武器援助を、何週間にもわたって表明し続けている*8。

 米国がウクライナに殺傷兵器を直接供給するようになるのは時間の問題だろう。

*5=http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/europe/ukraine/11102111/Ukraine-rebels-say-ceasefire-has-broken-down.html

*6=http://www.dw.de/fighting-in-donetsk-as-eastern-ukraine-granted-more-autonomy/a-17927705

*7=http://thehill.com/policy/defense/218186-levin-arming-ukraine-up-to-obama

*8=http://thehill.com/policy/international/216457-democrats-push-obama-to-send-arms-to-ukraine

 この翌19日から、ウクライナ軍は本格的な攻撃を開始し、ドネツクで分離独立派が掌握していた兵器工場を爆破し、破壊した。22日の報道によると、ウクライナ軍の広報担当者アンドリー・ルイセンコ氏は、ドネツク空港周辺での「防衛」攻撃により、分離独立派の戦闘員40人を殺害したと言っている*9。

 停戦条項は2週間も持たずに失効し、和平協定は事実上無効化したと言える。

 というより、そもそもこの「停戦協定」の目的は、ウクライナの東部国境に沿って西側軍の非常線を設置し、その間にウクライナ部隊を再編成しNATOがロシア封じ込めを準備するための時間を稼ぐことだったようだ。

 21日にはリトアニアで、米空軍将軍とNATOの上級司令官らの会議が行われ、ロシアと国境を接する国家群にNATOの地上軍と空軍が駐留する、いわゆる準備行動計画が具体化した。発表された声明によると、バルト諸国およびポーランド、ルーマニアなどロシア周辺国でのNATO軍の展開は10月に開始する予定のようだ*10。

 この会議が行われていた全く同時刻に、15カ国から派遣された1300の軍隊は、ウクライナ内で米国とウクライナ軍の連携を伴うラピッド・トライデント作戦の一部である軍事演習を開始した。この演習は9月26日まで続くことになっている*11。

失われていく「スウェーデンらしさ」

 「平和を愛し、200年にわたる中立を維持してきた」スウェーデンは、この情勢の中で、西側勢力の一員として、この戦争にも深々と加担していくのだろうか。

 結局、スウェーデンはこの選挙以降も、政権交代前と全く変わらず、これまでスウェーデンをスウェーデンたらしめてきた「高度な福祉国家」とか「中立を守ってきた平和主義国」「移民に寛容な国民性」とかいったユニークさを失っていくのだろう。

 つまり、他の国家と何ら変わりない国づくりを着々と進めていくということだ。

 そして世界はますます不安定になりそうだ。

*9=http://www.cbc.ca/news/world/ukraine-crisis-casualties-climb-despite-ceasefire-1.2773245

*10=http://news.xinhuanet.com/english/euruope/2014-09/19/c_133656933.htm

*11=http://www.reuters.com/article/2014/09/02/us-ukraine-crisis-exercises-idUSKBN0GX23Q20140902, http://www.stripes.com/news/us-army-to-proceed-with-planned-exercise-in-ukraine-1.272551
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/41783


02. 2014年9月25日 21:49:44 : 358VeCXh4E

現状のままでは欧州の未来はかなり暗いな


http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/41793
冬が近づく欧州:ロシアがガス供給を止めたら・・・
2014年09月25日(Thu) The Economist
(英エコノミスト誌 2014年9月20日号)

欧州はロシア産天然ガスの供給停止を乗り切れるが、短期的な停止にしか耐えられない。

ロシアがウクライナへのガス供給停止
ウクライナ西部ウシュゴロド近郊を走る天然ガスパイプライン〔AFPBB News〕

 ナポレオンもヒトラーも、欧州での領土拡大を目指し、ロシアの厳しい冬に屈することになった。

 そして今、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、自分に有利になるよう欧州の国境を動かす戦略の一環として、ロシアの寒さをいくらか輸出しているように見える。

 最近、ロシアの国営企業ガスプロムがポーランド、オーストリア、スロバキアに供給する天然ガスが、きちんと説明されないまま削減された。恐らくは、これらの国がロシア産ガスをウクライナに再輸出しないようにするための措置だろう。

 ロシアは、欧州諸国が住宅の暖房や発電、産業向けの動力供給を賄ううえで依存しているガスの3分の1を供給している。

 今のところ、西欧諸国の政府やガスの法人需要家は、たとえロシアとの関係が一段と悪化したとしても、ガス供給が完全かつ長期的に停止されるリスクはほとんどないと考えている。ロシア政府がガス輸出から得られる収入に大きく依存しているというのが、その理由だ。

 だが、冬が訪れる今後数カ月間で短期的な供給中断が起きることは、それほど考えられない事態ではない。

欧州のガス備蓄は潤沢だが・・・

 幸い、欧州の大半の国は何とか切り抜けられるだろう。昨冬は寒さがさほど厳しくなく、今夏に備蓄を多少積み増したため、欧州諸国のガス貯蔵施設は現在、ほぼ90%満たされている。

 欧州は昨年、155bcm(1bcm=10億立方メートル)のロシア産ガスを輸入した。現在の在庫水準は75bcmだ。このため、欧州のエネルギー流通業者が代わりの調達先を探すのに数カ月の猶予期間がある。

 主要ガス生産国のノルウェーは、生産量を多少増やせるかもしれない。また、中国の景気減速と日本の一部の原発再稼働は、値段が高いとはいえ、スポット市場に出回る液化天然ガス(LNG)が増えることを意味している。

 欧州は年間200bcm以上のLNGを輸入する能力を持ち、現在は、そのうち20%しか利用されていない。欧州連合(EU)が作成している非常事態対処計画には、家庭の暖房と発電向けのガス供給を確保しておくために、産業向けのガス供給を削減する計画も含まれていると言われる。

ガス紛争で露・ウクライナ両首相が合意、EUが発表
2009年にロシアがウクライナ向けのガス供給を停止した時には、ブルガリアなどにも影響が出た(写真はブルガリアのバーでまきストーブで暖をとる男性)〔AFPBB News〕

 欧州のガス輸入の半分はウクライナを横断するパイプラインを経由しており、ロシアは2006年以降、ウクライナとの価格論争を巡って数回ガス供給を停止している。

 もしロシアが再びウクライナ経由のガス供給を停止すれば、ウクライナを迂回するパイプライン経由の供給を増やすかもしれない。

 問題は、こうしたガス供給が、ハンガリー、ブルガリア、バルト諸国、フィンランドなど、ロシア産ガスに特に大きく依存している国々に届かないことだ。

 フィンランドでは、ロシア製原子炉の購入計画を巡って緑の同盟が政権離脱をちらつかせているため、連立政権が崩壊の危機にさらされている。緑の同盟は、原子炉購入はロシアへの依存度を下げるどころか、逆に高めることになると主張している。

長期的なロシア依存は手つかずのまま

 EU諸国は短期的なガス供給停止に向けて多少の準備を進めているが、ロシアへの長期的な依存度を引き下げるための対策はほとんど何も講じていない。

 取れる対策はたくさんある。各国政府は、十分に活用されていないLNG輸入基地を含め、供給源と顧客を結ぶ越境パイプラインの増設を奨励することができるはずだ。貯蔵設備を増やすこともできるだろうし、シェールが埋蔵されている国はフラッキング(水圧破砕法)で採掘し始めることもできる。

 これまでに生み出されたのは騒々しいたわ言ばかりで、役に立つ類の熱気ではない。

 

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41792
ユーロ圏の成否を分かつイタリアの債務負担
2014年09月25日(Thu) Financial Times
(2014年9月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 恐らく、欧州の経済的安定が直面している最大の問題は、イタリアがここ15年間と同様に停滞し続けたら何が起きるか、ということだろう。すべてが現状と変わらず、ただ今より少しだけ落ち込んだ状態が続くのか?

 単刀直入に言えば、イタリア経済の破綻はどんな結果をもたらすのか? イタリアの経済状態は持続不能であり、同国の経済成長に急激かつ永続的な変化がない限り、いずれはデフォルト(債務不履行)に行き着く。

債務デフレに苦しむイタリア

ピサの斜塔の修復完了、20年ぶりに足場撤去
経済成長に急激かつ永続的な変化がなければ、イタリアはいずれ破綻する・・・〔AFPBB News〕

 その時点で、ユーロ圏におけるイタリアの将来も疑わしくなる。実際、ユーロそのものの将来に疑念が生じることになる。

 我々がイタリアで目にしているのは、物価水準の下落が債務の実質価値を高めていく、容赦ない債務デフレの力学だ。

 欧州連合(EU)統計局ユーロスタットのデータによると、2007年から2013年にかけて、イタリアの国内総生産(GDP)に対する公的債務の比率は103.3%から132.6%に上昇した。

 経済協力開発機構(OECD)は、今年の債務比率が137.5%に上昇すると見込んでいる。イタリアが2015年、2016年にかけて停滞を続ければ、対GDP債務比率は150%に近づく。問題は数字ではなく、そのトレンドだ。

 最近ある読者が、イタリアはどの時点で支払い能力を失うのかと質問してきた。誰にも分からない、というのがその答えだ。

債務比率が200%を超えている日本との違い

 日本は対GDP債務比率が200%を超えていながら、いまだに支払い能力がある。だが、日本はイタリアと異なり、独自の中央銀行を持っている。投資家は、債務者が任意の水準で債務比率を安定させられると判断すれば、債務の借り換えに応じ続ける。安定させられると考えなければ、借り換えに応じない。

 イタリアの債務比率が急上昇している主な原因は、名目GDP(つまり、ユーロで見た経済生産の絶対価値)が減少していることだ。名目GDPが減少すると、対GDP債務比率が上昇する。国が新たな債務を負わなくても、債務比率は上昇するのだ。

建設会社経営者、資金難で銀行強盗に「転身」 スペイン
ユーロという共通通貨を持つために、イタリアには独自の政策手段がない〔AFPBB News〕

 この罠から抜け出す唯一の方法は、名目GDPが債務を上回るペースで拡大することだ。

 しかし、イタリアはその政策手段を持たない。引き下げられる国内金利は存在しないし、債務をマネタイズ(貨幣化)できる中央銀行もない。切り下げることのできる為替レートも持たない。

 ユーロ圏には、これらに匹敵する政策手段が存在する。だが、ユーロ圏の金利はすでにゼロだ。欧州中央銀行(ECB)は(まだ)イタリアの政府債務を購入していない。

 また、イタリアが、イタリアリラが一時的に欧州為替相場メカニズム(ERM)から離脱した1992年当時と同じような規模の通貨切り下げを達成するためには、ユーロはざっと60%下落しなければならない。

経済改革は長期的に有効だが・・・

 経済改革はどうか? 改革は長期的には、ある程度の成長を生み出す助けになるかもしれない。だが、ひとたび企業が従業員を解雇できるようになれば、イタリア経済が奇跡的に成長し始めると考えるのは、いささか甘いだろう。

 イタリアに必要な経済調整は、一握りの構造改革をはるかに上回る。イタリアは法制度の改革を必要としている。税率をユーロ圏平均に引き下げ、公的部門の質と効率を改善する必要もある。言い換えれば、イタリアは政治システム全体を変える必要があるのだ。

 これでもまだ十分でないかもしれない。日本には、柔軟な労働市場と円滑に機能する法制度、比較的低い税率があることを思い出すといい。それでも日本経済は20年以上にわたって期待を裏切ってきた。

 では、現実的な選択肢は何か? 最も期待できるのは、欧州のインフレ率が正常な水準に戻り、ユーロ圏経済が上向き、イタリア政府が少なくともいくつかの改革を実施するまで時間を稼いでくれるECBの資産購入プログラムだろう。

 筆者は、すでに発表されたように資産担保証券(ABS)とカバードボンド(担保付き債券)を皮切りに、ECBが幅広い債券を購入することを想像できる。

 加えて、ECBはユーロ圏の救済基金である欧州安定メカニズム(ESM)や欧州投資銀行(EIB)から債券を買い取るなど、他の種類の金融証券を購入することもできるだろう。また、欧州委員会はEIBを利用して、インフラ債の大型プログラムを立ち上げることができるはずだ。

 イタリアが持てる最善の希望は、そうした資金の一部が実体経済へと徐々に浸透していくことだ。

ユーロ圏レベルでの政策が不可欠

レンツィ氏を伊首相に指名、EUで最年少の首相に
抜本改革を約束したマッテオ・レンツィ首相〔AFPBB News〕

 我々は今、イタリアが成長し、債務を返済し、最終的にユーロ圏にとどまることを可能にするために、急進的で協調された政策をたくさん必要とする状況に置かれている。

 だが、これまでの政策は、急進的でもなければ協調的でもない。イタリアのマッテオ・レンツィ首相は抜本的な改革を約束したが、まだ実現していない。

 しかし、これでは不十分だ。イタリアが債務の持続可能性を確保するためには、これまで退けられてきたユーロ圏レベルでの政策が必要だ。ユーロ圏の成否はここで決まるのだ。

By Wolfgang Münchau


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