01. 2014年9月17日 18:59:41
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コラム:スコットランドの独立機運が世界に鳴らす警鐘 2014年 09月 17日 17:07 JST Mark Leonard[16日 ロイター] - スコットランドの独立機運について、多くの人は政治的な先祖返りだとみているが、実際にはむしろ、未来の政治について多くを物語っている。 今週実施されるスコットランド独立の是非を問う住民投票。複数の世論調査からは接戦が予想されており、最終的に独立反対派が勝利する可能性もまだある。筆者はスコットランドにとっても、英国にとっても、その方がいいと思っている。 しかしながら、住民投票の結果がどうであれ、独立反対派より賛成派の方がスコットランドの政治課題の形成に影響力をもたらしたことは認識しなくてはならない。独立機運の高まりは、世界中の政治にも変化をもたらし得る。 これまでのスコットランド独立をめぐる解説では、スペインのカタルーニャやベルギーのフランドル、カナダのケベック州などにも独立機運が波及するかどうかに焦点があてられている。 だが実際には、スコットランドの政治的傾向は、独立機運が特に高まっていない多くの国々の変化にもかかわっている。 特に4つの政治的傾向を指摘したい。 1)経済より自治を重視 スコットランド独立反対派は、通貨の問題や欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)への加盟の問題、英国の一部であることの経済的恩恵について訴えている。今週に入ると、独立によってもたらされるスコットランド金融業界へのリスクについての話題で持ちきりだった(いくつかの銀行は、もし独立するならロンドンに拠点を移すと発表した)。英財務省の推計によると、スコットランドは英国の他地域に比べて、人口1人当たりの公共支出が14─16%多いという。 しかし、こうした議論の多くは、スコットランドが1935年以降、保守党政権を支持していないにもかかわらず、前世紀の半分以上は保守党に支配されていたという独立賛成派の主張に比べると色あせて見える(先の総選挙では、キャメロン首相率いる保守党はスコットランド選挙区からの59議席のうち、わずか1議席を獲得しただけだった)。 こうした風潮は世界各地で強まっている。たとえ投票が行われても、自分たちの声は届かないと感じている。欧州の選挙では、フランスの国民戦線やギリシャの急進左派連合といったポピュリスト政党は、国民は自国政府を変えることはできても、より大きな政策を変えることはできないと主張する。選挙は身近で有効な手段かもしれないが、コントロール不可能な世界的な力には勝てないと感じている国々は共感を覚えるだろう。 2)進歩的ナショナリズム 独立賛成派のキャンペーンビデオは、極右的な考えを称賛するというより、社会主義的なユートピアとしてスコットランドの未来を描いている。ビデオのなかで、スコットランドの公正さと英国の拡大する不平等を、英国の緊縮財政とスコットランドの公共支出などを対比させている。賛成派にとって、1票を投じることは保守党政権からの自由を意味するだけではなく、社会主義的楽園へのいざないでもあるのだ。 歴史的な憤りや、映画「ブレイブハート」に描かれているようなスコットランドへのノスタルジアは、ナショナリズムの原動力の一部でしかないが、これもまた、勢力拡大を狙って再生をはかる欧州のナショナリスト政党の多くがたどる道である。調査機関ユーガブのピーター・ケルナー社長によれば、こうしたキャンペーンの成功は、経済動向の政治的表現にあるという。 3)説得力を失ったエリート層 多くの人は当初、英国の主要政党やほとんどの英企業が独立に反対しているという事実が、独立反対派にプラスに働くと考えていた。保守党、自由民主党、そして野党の労働党も結託して、スコットランドの独立機運に水を差し、スコットランド国民党が取り得る政治的な選択の幅を狭めた。3党の首脳はスコットランドの通貨としてポンドの使用は認めないとする共同声明を出し、英国残留を訴えるためスコットランドにそろって出向いたりした。 しかし、住民投票をめぐる動きが活発になるにつれ、賛成派はこうしたエリート層の考えに反対することで求心力を高めていった。賛成派は、反対派が不安を拡大させ、スコットランドを黙らせるために既得権益と手を組んでいると主張している。 スコットランド国民党のサモンド党首は、英国のエリート層に対するスコットランド人の擁護者としてのイメージを打ち出すことに成功している。成功したスコットランド人の多くが仕事の場としてロンドンを選んでいるため、残された者たちの代弁者となることはサモンド氏にさらなる説得力を与える。 スコットランド独立運動の原動力は、国民の擁護者を標榜する政治勢力から現在の秩序を守ろうと、既存政党が結託するような多くの民主主義国家にも当てはまっている。 4)「1つの国家」の終焉 住民投票の法的判断がどうであれ、スコットランドはすでに事実上独立していると言える。驚くべきことに、スコットランドでは、英主要政党の(イングランドの)指導者たちは、誰一人として正当な代弁者として見られていない。 だがこれは、スコットランドが長い間、英国の他地域とは異なったメディアを持ち、政治的議論にも独自性があったことを考えればさほど驚きではない。 多くの点で、スコットランドの文化的、知的な分離は何年にもわたり続いてきた。そしてこれは、同じような考えを持つグループに集約され、自分たちの先入観と好みを強めるだけのメディアを持つ多くの民主主義国家に暮らす人たちの共感を呼ぶだろう。 英国は世界有数の多民族からなる民主主義国家だが、18日の住民投票で約300年に及ぶ共存の歴史に終止符が打たれるかもしれない。投票結果がどうであれ、かつては結束を尊んだ世界中の人々が、今度は独立を夢見るようになることを筆者は危惧している。 *筆者は、シンクタンク「欧州外交評議会(ECFR)」の所長を務め、著書「Why Europe will run the 21st Century(原題)」や「What does China think?(原題)」は15カ国語以上で出版された。 http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0HC0K320140917
コラム:企業分割理論で考えるスコットランド独立問題 2014年 09月 17日 16:05 JST Rob Cox [ニューヨーク 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 規模拡大によって非効率化した企業を分割するのは良いことであるというのが、ウォール街の通念だ。分割によって企業運営はより容易になり、透明性が高まって、多くの関係者にとって事業価値は増す。 スコットランドの独立を賭けた歴史的住民投票を前に、同じ論理が国にも当てはまるかどうかを考えてみる価値はある。 スコットランドでは18日、英国からの独立の是非を問う住民投票が実施される。スペインのカタルーニャ地方でも11月に同様の投票が計画されているが、こちらは法的拘束力を持たない。いずれの投票でも独立賛成派が勝利するようなら、他の欧州諸国もいずれ、より小さな政治単位へと分裂して行く可能性がある。 少なくとも先進国世界において、手本となるような前例は乏しい。しかしコーポレートファイナンスの歴史を見ると、いくらか有用な洞察が得られるかもしれない。無論、世界のどこであれ、ウォール街の論理に自らの将来を託せと有権者に奨励するような政治家がいるとは想像し難い。しかし分割の背後にある哲学的根拠には、企業と国とで多くの類似性が存在する。 企業の世界においては、分割は何はさておき株主を利するという前提が論理の出発点となる。利点とは例えば、経営陣が最適の事項に集中できるようになったり、顧客や市場のニーズに対する組織の対応能力が向上するといったことだ。こうした利点は、企業が往々にして期待する規模のメリットをしのぐ可能性がある。 米巨大石油会社コノコフィリップスは製油部門と開発・生産部門に2分割した後、より多様な事業を抱えるライバル企業に比べて株価が堅調に推移した。米フォーチュン・ブランズは複合企業から3つの事業会社に分割し、株価が急騰した。 トムソン・ロイターのデータによると、こうした企業分割は過去5年間だけで1000件近くに上る。スピンオフ後の企業の多くは、より大きなライバル企業による買収の標的になってしまった。しかしこれらの企業は全般的に、比較優位な分野に集中し、株主に対する経営陣の説明責任を高め、経営陣により有効な成功インセンティブを与えることにより、自社の価値を証明している。 現在、米最高裁判所から見れば企業は人に相当するかもしれないが、断じて国ではない。国は企業と異なる義務を負っており、構成員の定義はもっと広い。しかし運営の手法となると、類似点がある。 米大統領選に出馬した米ベイン・キャピタルのミット・ロムニー氏から、カリフォルニア州知事選に出馬したヒューレット・パッカード(HP)のメグ・ホイットマン最高経営責任者(CEO)に至るまで、政界に打って出ようとした共和党員の企業リーダーらの宣伝文句が正にこれだった。 企業の本部であれ中央政府であれ、官僚主義という道具に浸ると、いつの間にか奉仕の相手である国民あるいは顧客との距離が隔たってしまう傾向がある。企業の文脈で考えるなら、「物言う株主」はわがままな経営者に規律を課すことによって、革命家の役割を果たし得る。パーシング・スクエアのビル・アックマン氏がフォーチュン・ブランズの株主に加わり、平和裏に企業分割をもたらしたのを思い起こそう。 政府には株主ではなく有権者と納税者がいる。これらステークホルダーが政府機関のサービスにどの程度愛想を尽かすかが、分割、あるいは独立を支持する度合いを左右するだろう。スコットランドとカタルーニャの独立にはこの他にも長きにわたる歴史的・文化的背景があり、これは経済上の理由をしのいでいるのかもしれない。 しかしスコットランドとカタルーニャが独立を遂げ、繁栄する独立国家を築けることを証明して見せたなら、他の先進国でも分離の皮算用をする機運が高まるだろう。いずれにせよ米国の分離主義者らはそう見ている。彼らの中の一群は数年前に「モントピリア宣言」を発表。この文書にはワシントンの中央政府に対する不平と、彼らの自決権が盛り込まれている。 バーモント州の州都モントピリアの名を取ったこの宣言は、連邦政府は「大き過ぎ、中央集権的に過ぎ、非民主的に過ぎ、不公正に過ぎ、権限が大き過ぎ、介入し過ぎ、個々の市民の要求への対応が鈍過ぎる」と主張する。物言う株主、ダン・ローブ氏の書簡を読んでいるようではないか。 宣言に署名したカークパトリック・セール氏は、国家を企業になぞらえるのは適切だと言う。いずれも究極の目標はより良く運営され、説明責任を果たせる組織の構築にあるからだ。彼によれば、理想の国家は人口約500万人、つまりスコットランドほどで、面積は彼の住むサウスカロライナ州程度だという。 分離主義を掲げるシンクタンク、ミドルベリー・インスティチュートを経営するセール氏は「国家であれ企業であれ、規模は小さい方が迅速な変化が可能になる。人口3億1500万人の国家(米国)が、必要な変化にいかにお粗末な対応をしているかに目を向けるだけで一目瞭然だ」と語った。 http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0HC0A120140917 |