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古村治彦です。
今回から2回に分けて、中央アジアに関する面白い論稿を皆様にご紹介します。このようなやや空想的ですが、柔軟な思考は国際政治を見ていく上で大変重要だと思います。
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スタニスタンにようこそ:括目せよ!中央アジアの新しい超国家の力を
フランク・ジェイコブス(Frank Jacobs)筆
2014年7月1日
フォーリン・ポリシー(Foreign Policy)誌
2014年5月29日、カザフスタンの首都アスタナにロシア、ベラルーシ、カザフスタン各国の大統領が集まり、ユーラシア経済連合(Eurasian Economic Union、EEU)の発足調印式が挙行された。ユーラシア経済連合はヨーロッパ連合をモデルとし、初めてその結成を主張したのは、カザフスタン大統領でヌルスルタン・ナザルバエフ(Nursultan Nazarbayev 1940年〜)で、1994年のことであった。しかし、本格的に実現に向けて動き出したのは、ロシアのウラジミール・プーチン(Vladimir Putin 1952年〜)大統領が、EEUがモスクワを中心とし、アジア志向の組織として、EUに匹敵する組織となり得る可能性を持つという考えを持つようになってからだ。その基本的な枠組みは2010年に3カ国で結成された関税同盟(customs union)である。
ナザルバエフ
プーチン
2014年6月、アルメニアはユーラシア経済連合への加盟の意思を明らかにした。キルギスタンとタジキスタンンも参加への手続きを急速に進めている。カザフスタン、ベラルーシ、ロシアの3か国がユーラシア経済連合の加盟国であるが、これらの国々だけで人口は1億7000万人、GDPは27億ドルに達する。この統合(integration)は初期段階においては純粋に経済的なものであるが、プーチンが時間をかけてより政治的な組織へと進めていけば、EUのようになるであろう。
しかし、EEUが成長し、初期加盟諸国が新しい世界帝国の種を植えているのかどうか、これは注意深く観察し続ける必要がある。プーチンはロシアの栄光を復活させることを夢見ているが、これがEEUの抱える矛盾や短所を増幅させることがあるかもしれない。EEUの抱える矛盾と短所とは、加盟諸国は加盟諸国同士での貿易よりも、ヨーロッパと中国との貿易を希望していること、そして、加盟諸国を全部合わせてみても、経済力はEUやアメリカの5分の1ほどにしかならないことである。
プーチンの構想する新しいユーラシアは、ロシアの中央アジア地域における影響力の限界を再定義する以上のものとなるとすると、ロシアは東西両翼の国々を少しずつでも惹きつける必要がある。それは例えば、中国とウクライナである。公式には、EU加盟の許可を待ち続けているトルコも惹きつける必要がある。これら3カ国はEEUに加盟する意志は今のところなさそうである。しかし、トルコはカザフスタンから招請を受けている。従って、現在のところ、EEUはロシアと旧ソ連に属した共和国、つまり国境を接し、親露的な2カ国によって形成されているのである。
ベラルーシは、ロシアの自己強化(self-aggrandizement)の試みにおいて最も有効的なパートナーとなるであろう。1994年に就任したアレクサンドル・ルカシェンコ(Aleksandr Lukashenko 1954年〜)大統領の下、ベラルーシは、ヨーロッパにおける最後の独裁国家として西側から孤立し、ロシアの石油と天然ガスに依存しているが、国力は減退を続けている。そして、エネルギー資源をロシアに依存しているので、親露的である以外に地政学的な選択肢を持っていないのである。ベラルーシと同じく、カザフスタンも海に面しておらず、実質的には民主政体ではない。ナザルバエフが選挙で選ばれたのは1989年で、1991年のソ連崩壊よりも前のことであった。
ルカシェンコ
しかし、ベラルーシとは異なり、カザフスタンの主要な輸出品は天然資源である。ベラルーシの主要輸出品はトラクターや食肉である。カザフスタン国内の原油埋蔵量は300億バレルであり、これは世界で11番目の原油埋蔵量である。天然ガス、石炭、ウランもまた大量に埋蔵されている。カザフスタンは国家的目標として、豊富な天然資源を利用して世界の先進国30カ国の仲間入りをし、「ステップ地帯のシンガポール(Singapore of the steppes)」になることを表明している。
カザフスタンは貧しくもなく、不安定でもない。他の旧ソ連衛星諸国がEEUにカザフスタンが参加することを望む理由はこの2つのようである。実際、議定書に署名はしているが、カザフスタン政府はロシアの意図に懸念を持っているようであるし、自国を中心とする帝国建設のために脱退することもできる。カザフスタンが西側に近づき保険を掛けるのではなく、南に向かい、諸国家を糾合するという場合にのみ、帝国が作られることになるだろう。しかし、そうした動きは現在の指導者層の本能とは全く反対の動きということになる。
2013年2月、ナザルバエフは国名をカザフスタンからカザフ・エリに変更することを提案した。これは、国名から「スタン」を取り、南で国境を接するウズベキスタンとの差異を闡明するにすることを目的としたものであった。この変更(まだ実行されていないし、恐らく実行されることもないであろう)が示しているのは、新興富裕層たちの共通した心理であり、それが個人、国家のレベルで示されているのだ。その心理とは、貧しくて、後進的、そして暴力的な近隣諸国と自分たちを切り離したいというものだ。
しかし、カザフスタンがこれとは正反対のことをやっていたらどうだったであろうか?
(続く)
- 中央アジアに関する論稿をご紹介いたしますA (古村治彦の酔生夢死日記) 五月晴郎 2014/9/15 17:11:28
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