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『ニューズウィーク日本版』2014−9・2
P.70
「殺人ウイルスの再来に耐性が付いたアメリカ
「ウイルス性の伝染病が蔓延する条件が整ったらどうなるか。それを物語るのがエイズだ」
現在、西アフリカ諸国ではエボラ出血熱の歴史的な感染拡大が続いている。感染地域ではサッカーリーグの開催が中止され、一部の国際便は運航停止となつた。エボラ熱がマスコミをにぎわすのはこれが初めてではない。最初に発生が確認されたのは1976年だが、ザイール(現コンゴ民主共和国)で250人が死亡した95年の流行時にはニューズウィークもこのニュースを大々的に報じた。当時の致死率は81%だった。
表紙に「殺人ウイルス」という文字を躍らせた5月22日号の特集記事は、流行の発端を追跡した上で、こう宣言した。「このウイルスは恐るべき人類の敵だ」
90年代半ばのウイルスに対する人々の恐怖心は今より大きく、文化的にもその影響が表れていたようだ。映画『アウトブレイク』が封切られたのは、この特集号が発売される2カ月前のこと。アフリカ生まれのウイルスや感染したサル、封鎖されたアメリカの街などが描かれるこの作品は、外国を発生源とする疫病の恐怖を措く映画としては満点の出来だった。
特集記事では「エボラはアメリカを襲うか」を問い掛けた。世界地図でさまざまなウイルスの感染地域を紹介し、付随するコラムでは、『ホット・ゾーン』(邦訳・飛鳥新社)の著者リチャード・プレストンに「ウイルスが人々の心を捉える」理由を尋ねた。
「好奇心と恐怖心が関係している。人々が頭のどこかでエイズウイルスを気にしているせいでもある」と彼は答えた。
確かに90年代には、今よりもエイズが恐れられていた。記事にはこんな文章がある。「世界ではここ数十年問に、新種の『殺人ウイルス』が次々に発見されている。その大半はまだ、熱帯地方の一部に脅威をもたらしているにすぎない。だがウイルス性の伝染病は治療が極めて難しい。そうした伝染病が蔓延する条件が整ったらどうなるか。それを雄弁に物語っているのがエイズだ。ほんの15年前まで、エイズのような病気が広がるとは誰も予想していなかった。だが今や、HIV感染者は2000年までに全世界で4000万人に達するとみられている。しかも治療法はまだ見つかっていない」
4000万人という数字は過剰だった。2000年までの感染者は3000万人に満たず、11年の時点でのHIV・エイズ感染者は推定3400万人。近年では感染者数の増加も収束傾向にある。
もちろん今でもHIV感染の恐怖は失われていないし、最近も『コンテイジョン』『ワールド・ウォーZ』など『アウトブレイク』と同様のテーマの映画が製作されている。だが90年代当時は、遠い国からやって来たウイルスはより新しく、より恐ろしく見えたはずだ。
01年の9.11テロに加えて、SARS(重症急性呼吸器症候群)や炭痕菌の脅威を経験した今のアメリカ人は、当時より図太くなったのかもしれない。
それでもエボラやHIVは恐ろしい。エボラが自国に上陸するのをアメリカ人が恐れることは、利己的かもしれないが当然でもある。できるだけ早く今回の感染拡大が封じ込められ、これ以上犠牲者が出ないことを願うばかりだ。」
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