02. 2014年8月29日 10:19:23
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エボラはアフリカ問題の氷山の一角本丸は貧困であり、国民の無知・紛争・倫理の低さによる政治の脆弱性が、その根本原因だ http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/41607 JBpress>海外>Financial Times [Financial Times] 統計次第で一挙に撲滅される貧困 2014年08月29日(Fri) Financial Times (2014年8月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) スラム人口、10年で5千万人増加 国連ハビタット アジアの貧困者数は実際何人なのか?(写真はフィリピン・マニラのスラム街)〔AFPBB News〕 1日1.25ドルで暮らさなければならないとしたら、貧しいと感じるだろうか? 1.50ドルならどうだろう? その違いは、気にする価値がほとんどないように見えるかもしれない。本コラムを読んでいる人たちの多くは、朝のカプチーノに1.50ドル以上費やしている。 だが、どの数字を選ぶかによって、極度の貧困の中で生活していると分類される人たちの数は大きく変動する。 アジア開発銀行(ADB)は今月、高まる一方の要求に加勢する形で、貧困の新たな定義を求めた。ADBは報告書の中で、アジアでは、1.25ドルではもう暮らせないと主張している。人は、適切なカロリー摂取量を確保し、ADBが「貧困を避けるために必要な最低限ぎりぎりの生活水準」と呼ぶものに達するためには、1日1.25ドルより多くのカネが必要だという。だが、あとどれくらい必要なのだろうか? アジアの貧困層、従来の想定より10億人も多かった? ADBは、1.51ドルという疑わしいほど正確に聞こえる数字を導き出した。1.25ドルという数字は、アフリカに大きく偏り、アジアを代表する国がタジキスタンとネパールの2カ国にとどまる15カ国のサンプルに基づいているとADBは言う。さらに、過去10年間、食品価格が一般的な物価上昇を上回ってきたという事実にもっと重きが置かれる必要があると主張する。 最後に、ADBは、一律の数字は、ADBが「脆弱層(near-poor)」と呼ぶ人たち――最近の本紙(英フィナンシャル・タイムズ)の連載では「脆弱な中間層」と分類した人々――がいかに簡単に極端な貧困に逆戻りしかねないかを無視していると言う。ある月は1日3ドルだが、別の月は1日40セントで生活する人は、ひもじい思いをするかもしれない。 同様に、住居が洪水でなくなったり、労働災害で腕が引きちぎられたりした場合も、生活水準の壊滅的な低下という結果を招くことがある。 ADBはより現実的な前提を使い、2010年に貧困の中で生活していたアジア人が17億5000万人いたと推定している。これは、これまで想定されていたより丸々10億人多い。その結果、貧しいアジア人の割合は心配の種となる2割から警戒を要する5割に上昇する。 これらの新しい数字は、一部の人に衝撃を与えている。有力ビジネススクールのIMD(経営開発国際研究所)のジャン・ピエール・レマン名誉教授は、貧困の水準を計算するうえでの「このような重大な誤り」は信じがたいと腹立たしげに書いていた。新しい数字は、いわゆるアジアの台頭や、貧困を減らすグローバル化の恩恵とされてきたものに疑問を投げかけている、とレマン氏は言う。 ヨーヨーのように上下する貧困の数字 この議論に関する問題は、異なる計算が大きく異なる話を伝えるということだ。使われる方法論次第で、貧困の数字はヨーヨーのように上下する。 世界銀行が主催する国際比較プログラム(ICP)の統計学者が今年行った計算を例に取ってみよう。ICPのチームは、各国の生活費を比較する方法である購買力平価(PPP)で物価を計算し直した。その調査は、発展途上国の物価がそれまで考えられていたより全般に安いことを明らかにした。つまり、人々は1.25ドルのお金で従来想定されていたより多くものが買えるということだ。 PPPによる新たな計算を厳格に適用すると、発展途上国の非常に貧しい人々の数は半分以上減り、6億人を若干下回る。 世界銀行のチーフエコノミスト、カウシィク・バス氏はいみじくも、機械的な推定を行うことに警鐘を鳴らす。PPPによる平均物価について言えば、ほかの人に比べて所得のはるかに大きな部分を食料に費やす非常に貧しい人々に簡単に適用することはできない、とバス氏は言う。例えば、飛行機での旅行や映画のチケットがそれまで考えられていたより安いという事実は、非常に貧しい人の生活には一切関係がないかもしれない。 レマン教授が正しいのは、アジアの大部分では極度の貧困がほとんど克服されたという広く行き渡っているが誤った考え方にクギを刺した点だ。 貧困の減少における進展を過大評価することは、政府を義務から解放することになる。心配すべき貧しい人たちがいないということになれば、政府は税金を徴収したり、富を再配分したり、教育や金融サービスへの公正なアクセスを保証したりすることにあまり頭を悩ます必要がなくなるからだ。 貧困削減におけるアジアの成果が消えるわけではないが・・・ それは、2つの結論につながる。1つは統計的なもの、もう1つは政治的なものだ。数字について言えば、我々は、定義についてはもっと厳格になり、正確さを主張することについてはもっと控えめになる必要がある。 ビル&メリンダ・ゲイツ財団の開発政策ディレクター、ガージー・ゴーシュ氏は、「誤った正確さの感覚」に警鐘を鳴らす。ADBのチーフエコノミスト、魏尚进氏は、先週の報告書は、貧困を減らすことにおけるアジアの成果を無効にしたわけではないと話す。 だが、報告書は、アジアにおける極度の貧困を2030年までに撲滅するという現実的な目標のように思えたものが、2045年まで待たなければならないかもしれないことを意味している。ゴミをあさって生計を立てなければならないとしたら、こうしたことは問題だ。あるいはもしかしたら問題ではないのかもしれない。 製品ではなく人に対する助成とセーフティーネットの構築 2つ目の結論は、政策対応に関係している。魏氏は、2つのことを強調する。1つは、政府は、価格を歪める輸入や輸出の禁止ではなく、最も脆弱な人たちへの的を絞った現金配布による食品へのアクセスを優先すべきだということだ。 「我々は、製品に助成するのではなく、人々に助成すべきだ」。貧しい人たちよりも暮らし向きの良い人たちを助けることが多い、アジアの至るところで行われているいくつかの無駄な価格支援制度について魏氏はこう話す。 もう1つは、せめて人々を一気に極貧に転落させかねない壊滅的な出来事に対する手頃な価格の保険に加入するのを容易にすることによって、より良い社会的セーフティーネットを築くことだ。 公正な人たちは、貧困と闘う最善の方法について延々と議論することができる。その出発点は、問題を認識することだ。 By David Pilling
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