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北朝鮮の崩壊を恐れるな―リスクを上回る半島統一の恩恵に目を向けよ[CFR]
http://www.asyura2.com/14/kokusai9/msg/327.html
投稿者 あっしら 日時 2014 年 8 月 26 日 17:23:33: Mo7ApAlflbQ6s
 


 転載する論考は、「北朝鮮が中国の経済モデルを導入し、軍事路線を控え、ソウルとの段階的な和解策に転じるというソフトランディング・シナリオだ。これを第1のシナリオとしよう。一方、第2のシナリオは魅力的なものではなく、経済・社会的な重圧によって迷走する北朝鮮が内側から崩壊し、韓国に吸収されるというハードランディング・シナリオ。第3は、北朝鮮が韓国を攻撃し、米韓連合軍が北朝鮮を粉砕し、軍事的に半島が統一されるというより劣悪なシナリオ」としつつ、「第2の「内からの崩壊」というハードランディング・シナリオがもっとも現実味がある」と結論づけている。

 遠く離れた米国の支配層が、朝鮮半島の統一に大きなメリットがあるのだから北朝鮮の崩壊を恐れるなとの託宣を下したからといって、韓国・北朝鮮・中国・日本といった北東アジアの国々がそれに乗ることはない。

 というより、わざわざ大混乱を起こしそれを契機として朝鮮半島を統一しなくとも、アジア各国は、政治的折衝を通じて徐々にではあるが統一に向かう“智恵”を有している。メリットとされている経済的側面についていえば、政治的統一に先行するかたちで関係性を強化することができる。

 朝鮮半島の統一は、ひとえに米国支配層の意向によって達成可能な課題である。
 米国支配層が、軍事的プレゼンスの撤退含みで朝鮮半島の統一を容認すれば、南北は自ずと統一に向かい、朝鮮半島に強国が生まれる日本はイヤだろうが、歴史的現実的に自信を持っている中国は反対しない。

 米国支配層は朝鮮半島の統一を目指すようになっており、軍事・政治・経済などの細かな調整を経ながら穏やかに、そう遠くない段階で“形式的”統一は実現されるだろう。

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『フォーリン・アフェアーズ・レポート』2014 No.7
P.61〜69

「北朝鮮の崩壊を恐れるな―リスクを上回る半島統一の恩恵に目を向けよ

スー・ミ・テリー
元米中央情報局(CIA)上席分析官

朝鮮半島の統一が韓国を経済的・社会的に押しつぶすわけでも、アメリカ、中国、日本に受け入れがたいリスクを作り出すわけでもない。たしかに、朝鮮半島の統一はドイツ統一以上にコストがかかり、多くの課題を伴うだろう。例えば、北の崩壊シナリオとしてもっとも現実味があるのは北朝鮮が内破し、体制が崩れていくことで、この場合、核兵器の安全な管理をいかに確保し、人道的悲劇を回避して大規模な難民が発生しないようにすることが大きな課題となる。だからといって、半島の統一を回避すべきだと考えるのは間違っている。崩壊を経た半島統一の最大の恩恵は、北東アジアにおける主要な不安定化要因が消失することだが、特に韓国は大きな経済的恩恵を手にできる。これまで各国は、平壌が挑発的行動を前にしても、北朝鮮を不安定化させることを懸念して、経済制裁の強化や、対抗策をとることを躊躇ってきたが、今後はそのような配慮をすべきではない。統一の恩恵はリスクやコストを遥かに上回るのだから。


■統一のリスクと恩恵

 北朝鮮を建国し、支配した金日成がこの世を去った1994年、専門家の多くは「北朝鮮は建国の父の死とともに崩壊する」と予測したものだ。もちろん、そうはならなかった。彼の息子である金正日は、2011年に死亡するまで、北朝鮮の体制を何とか維持した。その息子である金正恩が父の後を継いでこの国の支配者になったときも、多くの朝鮮半島問題の専門家が北朝鮮の崩壊を予測したが、これまでのところその予測は現実になっていない。極端な貧困のなかにあるとはいえ、北朝鮮はいまも存続し、韓国に大きな脅威を与え続けている。
 だが、北朝鮮の体制には裂け目が生じている。2013年12月、金正恩は自分の義理の叔父で、北朝鮮における事実上のナンバー2だった張成沢を公開処刑にするという異例の措置をとった。
 処刑は金正恩の支配体制を短期的には強化するかもしれないが、長期的には反動が生じる。北朝鮮のエリートたちは、31歳の権力後継者はあまりに短気すぎて信頼できないと考えるようになるはずだ。

 北朝鮮の体制を支える事実上のパトロンである中国も、北朝鮮のナンバー2が処刑されるという事態に不安を感じている。張成沢は北京にとつて北朝鮮の窓口の役割を果たし、中国流の改革の導入を支持してきた人物だった。
 とはいえ、近い将来に、中国が平壌に大きな圧力をかけそうな気配はない。北京の指導者たちは現在の平壌の体制を快く思っていないかもしれないが、体制崩壊というシナリオはもっと厄介な帰結を伴うと考えているからだ。北朝鮮の崩壊は大規模な難民を中国国境へと向かわせるだけでなく、アメリカの軍事介入に道を開き、韓国とアメリカの軍事力が中国国境近くに配備される事態になりかねないと懸念している。こうして、とりあえず金正恩体制を支えるのが、もっとも無難な策とみている。一方ソウルも中国と似たような理由から、伝統的に平壌を不安定化させかねない行動を控えてきた。韓国の指導者にとって、朝鮮半島の統一に伴う社会・財政上の巨大な重荷(統一コスト)を引き受けるよりは、小規模な攻撃や戦争の脅威を現実として受け入れるほうがましな選択に思えたからだ。

 北朝鮮の衰退に派生する余波を中韓ほど心配しなくても済むアメリカと日本も、結局は平壌の体制と現状を事実上受け入れてきた。ビル・クリントンとジョージ・W・ブッシュという2人の米大統領は、平壌が核開発プログラムを一部制限することの見返りに、支援を提供する外交戦略をとってきた。1994年の枠組み合意の一環として、北朝鮮に軽水炉2基を建設する資金として10億ドルを提供することに合意し、食糧支援を提供することも約束した。ワシントンと東京の政策決定者は、北朝鮮の体制を倒す手段が少数ながらも存在することを認識しつつも、むしろ、休制崩壊によって地域秩序がカオスに陥っていくことを警戒した。

 たしかに、こうした懸念は間違っていない。すべての外部パワーは、もはや避けようのない北朝鮮の崩壊に備える対応計画において、そうした余波を間違いなく想定しておく必要がある。最善の環境で統一が実現したとしても、南北間の経済、教育レベルに大きな格差があり、イデオロギー的にも隔たりがある以上、朝鮮半島の統一はドイツ統一以上にコストがかかり、多くの課題を伴うだろう。
 だからといって、半島の統一を回避すべきだと考えるのは間違っている。一般に考えられているのとは逆に、統一コストが韓国を押しつぶすわけでも、アメリカ、中国、日本に受け入れ難いリスクを作り出すわけでもない。むしろ、統一は朝鮮半島と近隣地域に非常に大きな経済・社会的な恩恵をもたらす。北朝鮮国家の長いストーリーをハッピーエンドで終わらせるには、民主的な統一国家を半島に誕生させるしかない。半島の統一に向けて、関係諸国はあらゆる手を尽くすべきだろう。


■三つのシナリオ

 朝鮮半島の統合はおそらく次の三つのシナリオのいずれかによって実現するだろう。韓国が望んでいるのは、北朝鮮が中国の経済モデルを導入し、軍事路線を控え、ソウルとの段階的な和解策に転じるというソフトランディング・シナリオだ。これを第1のシナリオとしよう。一方、第2のシナリオは魅力的なものではなく、経済・社会的な重圧によって迷走する北朝鮮が内側から崩壊し、韓国に吸収されるというハードランディング・シナリオ。第3は、北朝鮮が韓国を攻撃し、米韓連合軍が北朝鮮を粉砕し、軍事的に半島が統一されるというより劣悪なシナリオだ。

 この三つのシナリオのなかで、もっとも現実性に乏しいのがソフトランディング・シナリオだろう。金正恩は改革路線にはほとんど関心を示していない。第3の軍事的統一というシナリオにも説得力はない。いくらけんかっ早いとしても、金正恩が彼の父や祖父以上に自滅さえも厭わない無謀な人物には思えない。そうなると、第2の「内からの崩壊」というハードランディング・シナリオがもっとも現実味がある。

 体制の崩壊は数多くの切実な問題を作り出す。特にアメリカにとっては、北朝鮮の核兵器の安全をいかに確保するかが重要になる。さらに米・韓国軍は、北朝鮮軍における内部抗争の発生や強硬派による戦闘行動を抑え込むために、軍の指揮統制構造を確保する必要もある。一方で人道的悲劇を回避するには、治安、飲料水、電力、通信などの基本的社会サービスを提供しなければならない。人道的悲劇が起きれば、これまでも長く苦しんできた北朝鮮の民衆が難民化し、国境線を越えて中国や韓国へ、そして海を越えて日本へと流れ込むだろう。
 これらは非常に大きな課題だが、十分な対応計画を事前に準備し、アメリカ、国連、その他の国際プレーヤーが韓国を支えればうまく対処できる。実際、韓国統一省は、アメリカの国防総省関係者と協力して、数十年にわたって緊急事態への対応計画を検討してきた。
 体制が崩壊した場合には、装備も訓練も充実している韓国軍が半島の北側を迅速に管理下におき、文民政権がその任務を引き継ぐまで基本的な社会サービスを提供する。この対応計画に中国も参加させれば、韓国の重荷は大きく軽減される。これまでのところ北京は 「金正恩体制が永遠に続くことはない」(つまり、いずれ崩壊する)という見方を公的政策の前提にはしていない。だが、仮に中国の参加がなくても、韓国とそのパートナーは、体制崩壊の余波に十分に対処できるだろう。
 韓国も、北朝鮮の体制が内側から崩壊した場合の直接的な余波に対応できないとは考えていない。むしろ、(中・長期的に)財政負担(統一コスト)の重荷に耐えきれなくなることを警戒している。
 たしかに、朝鮮半島の統一コストは(西)ドイツのそれよりも大きくなるだろう。ハレ経済研究所によれば、20年に及ぶドイツの統一コストは1兆9000万ドル。一方、韓国の企画財政部は半島の統一コストは年間で現在のGDPの7%規模、つまり、800億ドルに達し、少なくとも、この状況が10年は続くとみている。2011年に李明博大統領が任命した諮問パネルが試算した統一コストはさらに大きく、2兆ドルを超えるとされている。
 最終的な数字がどのようなものになるにせよ、統一には非常に大きなコストを必要とするし、その試みは、孤立し洗脳されている上に極端な貧困のなかで暮らしてきた民衆を統合していくという難題によってさらに困難を極めるプロセスになる。


■統一のコストと恩恵

 韓国は統一コストばかりを気にする傾向があるが、統一がコスト以上に大きな恩恵をもたらせることを認識すべきだろう。もっとも直接的な恩恵の一つは、北東アジアにおける主要な不安定化要因が消失することだ。北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルの管理体制の安全が確保され、北朝鮮軍が平和的に動員解除されれば、その体制崩壊は、ソウルだけでなく、ワシントン、東京にとつても、これまでよりもはるかに安全な地域環境をもたらすことになる。
 「北朝鮮は核兵器を外国に輸出するのでないか。米軍を第2次朝鮮戦争に引き込むのではないか」とワシントンが気に病む必要もなくなる。日本も北朝鮮によるミサイル攻撃やこれ以上の拉致事件の発生を心配しなくてもよくなる。そして韓国も北からの砲撃、哨戒艇に対する潜水艦の魚雷攻撃、あるいは指導者の暗殺を狙ったコマンド隊員を警戒する必要性から解放される。
 中国でさえも、北朝鮮の消失を歓迎する理由がある。何の見返りも期待できない北朝鮮への燃料・食糧その他の援助を、配当の期待できる経済投資に置き換えることができる。世界でもっとも独裁的な政権を支える必要性から解放されれば、世界における責任ある利害共有者として自らを位置づけるのも簡単になる。
 金正恩体制が崩壊すれば、北朝鮮の人道環境の大きな改善も期待できる。世界に残された最後のスターリン主義政権から2500万人が解放され、統一された近代的民主国家で暮らせるようになる。犯罪によってではなく、その多くが政治犯として収監されている8112万人の多くが強制労働から解放されるだろう。
 平均的な北朝鮮人も飢えに苦しむ粗末な食生活から十分な食糧を手に入れ、情報製品、消費財を含む、近代資本主義の恩恵に浴することになるだろう。非常に民族的な絆を重視する韓国人も離散家族との再会を祝うことができる。半島が統一されれば、新羅が三国時代を制して半島を統一した668年から米ソが38度線で半島を分断した1945年までと同様に、半島には再び一つの国が誕生する。
 統一によって韓国に最大の恩恵がもたらされるのは、経済領域においてだろう。半島の再統一は、一般に考えられている以上の恩恵をもたらす。まず、ソウルは、現在GDPの2.5%規模(年300億ドル)に達する国防予算を大幅に削減できる(この数字には、年間10億ドルの半島における米軍プレゼンスをカバーするためのコスト「思いやり予算」は含まれていない)。国民皆兵制度を止め、軍隊の兵力規模を現在の68万人から50万人、あるいはそれ以下へと削減し、現在よりも早い段階で若者たちを労働市場へと送り出せるようになる。さらに、その多くが若者である110万の北朝鮮軍の兵士たちも労働市場に参入するだろう。
 韓国の人口が急速に高齢化している以上、こうした若い労働力が市場に参入すれば、大きな助けになる。
 国富が増大するとともに、韓国の平均余命は81歳に達しており、今後も寿命は延びていくだろう。一方で、女性一人当たりの出生率(合計特殊出生率)は1.2人と非常に低い。その結果、経済協力開発機構(OECD)の予測によれば、2050年までには韓国の平均年齢は先進国で2番目に高くなり、生産年齢人口の一人に対して65歳以上の高齢者が約七人いる計算になる。統一しない限り、韓国における15−64歳の人口は2017年には減少へと転じ、2030年までには総人口も減少し始める。

 対照的に、北朝鮮の人口の91%は65歳未満で、合計特殊出生率も2人と、韓国よりは高い。しかも、半島が統一されれば、現在の3600万の生産年齢人口に北朝鮮の1700万が加わることになる。この場合、社会に統合するのが難しい低賃金労働者を東南アジアその他の国に依存しなくても済むようになるし、韓国企業がその工場を中国から北朝鮮へと移すこともできるようになるだろう(北朝鮮の労働賃金は、当面は中国よりも低賃金となるはずだ)。
 統一によって特に鉱業部門が大いに活気づくと予想される。韓国のハイテク経済は世界でも最先端のレベルにあるが、鉱物資源には恵まれず、エネルギー・鉱物資源の97%を輸入に依存している。対照的に北朝鮮には、総額6兆ドルの価値をもつ石炭、ウラン、マグネサイト、レアメタル資源が存在する。現在はこうした資源を開発できずにいるが、韓国の技術があれば、これらの鉱物資源を開発できるようになり、資源の開発と輸出はグローバル経済の成長にも貢献することになるだろう。

 統一されれば国内市場の規模が拡大するだけでなく、半島の北に風光明媚な観光スポットが数多く存在するために、観光産業の収益も急増する。国債の格付けも引き上げられるだろう。一方で戦争リスクは消失する。クレジットから戦争プレミアムが外され、外資ももっとスムーズに半島に流れ込むようになるはずだ。
 かつては地雷で埋め尽くされていた非武装地帯がなくなれば、貿易の流れもよりスムーズになり、輸送コストも低下する。現在は孤立した島と大差ない状態にあるために、韓国は原材料の輸入に高い輸送コストを支払っている。だが国境線がなくなれば、ウラジオストックとソウルをつなぐ天然ガスパイプラインをついに敷設できるようになり、ロシアの石油や天然ガスを韓国に引き込めるようになる。こうして、韓国経済に重くのしかかるエネルギーコストは劇的に低下する。もちろん、製品を陸送で中国やロシアに輸出できるようになる。
 時とともに、勤勉な750万(7500万)の人口を擁する統一朝鮮は「アジアにおけるドイツ」として、消費と産業のパワーハウスへと台頭していくかもしれない。
 二つの経済が一つになれば、新たな投資機会も誕生する。ゴールドマンサックスの2009年のリポートによれば、朝鮮半島が統一されて30−40年もすれば、半島における統一国家の国内総生産(GDP)はフランス、ドイツだけでなく、日本のGDPさえも上回るようになるポテンシャルを秘めている。そうなれば、韓国の貿易パートナー、特にソウルにとつての二大パートナーである中国とアメリカは、半島の統一国家の経済活力から非常に大きな恩恵を引き出すことになる。


■近隣諸国の立場

 こうした大きな経済的恩恵が期待できるとはいえ、近隣諸国に半島統一の地政学的帰結を受け入れさせるのは容易ではない。
 中国の指導者はアメリカのパワーを食い止める「防波堤としての北朝鮮」を失うことを警戒している。だが、−中国の半島統一に向けた支持を引き出すために必要なら「統一後は現在の非武装地帯以北、あるいは、半島のいかなる部分にも米軍を駐留させない」とワシントンが私的に約束すればどうだろうか。そうした懸念も和らぐだろう。そうでなくても、北朝鮮の脅威から解放されれば、ナショナリスト志向の強い韓国が米軍の撤退を求める可能性は十分にある。

 こうした動きはワシントンにとつて愉快ではないかもしれないが、それでアメリカ外交が後退することにはならない。米軍が撤退するとしても、それは、朝鮮戦争という危機的状況のなかで開始されたアメリカの長期的なコミットメントがハッピーエンドを迎えたことを意味するからだ。中国の拡大主義に対しては日本やグアムの基地を引き続き利用できるし、統一ドイツ同様に、ワシントンは統一朝鮮と良好な関係を間違いなく維持できるだろう。
 北京とソウルの関係は、厄介で扱いにくい平壌との関係よりもはるかによい状態にあり、統一後も良好な関係を維持していくだろう。歴史的にみれば、朝鮮は中国に朝貢する国家だった。そうした従属的な関係が復活することはあり得ないとしても、中国が統一を警戒する理由はない。韓国は中国と敵対的な関係に陥ることを避けたいと望んでいるし、統一朝鮮は貿易パートナーとしての重みをさらに増していくだろう。むしろ、統一国家は、ワシントン、北京とのバランスを考慮した三角関係を形作っていくことになるだろう。
一方日本は、統一されてより強固になった国家の出現を警戒するかもしれない。第二次世界大戦の終結から70年近くが経過しているにも関わらず、日韓関係は依然として、朝鮮半島を日本が支配していた時代の歴史の重荷によって緊張している。だが、民主的で資本主義体制をとる統一国家が、日本を真の意味で脅かすことはない。
 むしろ、半島の統一国家に日本が食糧、医薬品を提供し、支援スタッフや医療関係者を送り込めば、現地における反日感情を克服していく大きなチャンスになる。すでに日本は世界有数の援助拠出国であり、朝鮮半島北部の再建を助けることで、敬意を勝ち取ることができるだろう。


■多国間で統一に備えよ

 こうしたメリットを認識して、国際社会は半島の統一を先送りするのでなく、むしろ促進する必要がある。平壌に現在のコースを見直させる上で、外部パワーにできることはそれほど多くないかもしれない。だが地域国家、特に韓国とアメリカは、より良い行動をとるという当てにならない約束の見返りに、金王朝を支えるような支援を与える、これまでの取引は止めるべきだ。金正恩は、彼の父や祖父以上に約束を守るタイプではない。
 これまで各国は、平壌が挑発的行動にでても、北朝鮮を不安定化させることを懸念して、経済制裁の強化や、対抗策をとることを躊跨ってきたが、今後はそのような配慮をすべきではない。北朝鮮がいま内側から崩壊するとしても、今後10年にわたってこの国が生きながらえ、決して実施されない改革をわれわれが期待し続けるよりもはるかにましだ。

 半島の統一から最大の恩恵を引き出せるのは韓国であり、ソウルは統一シナリオを直視するのを躊躇うのではなく、自信をもってそれに向き合うべきだ。朴槿惠大統領が2014年に半島の統一によって韓国は非常に大きな利益を確保できると語り、ドイツで統合に前向きな内容の演説を行ったことは、大きな話題となった。
 韓国政府は今後も統一に向けた国内広報戦略をとり、その恩恵を社会に理解させ、人々が統一を前向きに捉えるように試みるべきだ。韓国の若者たちが統一に対する懸念を強めているだけに、そうした広報路線をとるのは重要だろう。
 北朝鮮との対話路線の復活を模索し、離散家族の再会に向けた交渉を再開するとしても、朴槿惠大統領は「北朝鮮の脅威と挑発には毅然たる態度をとる」という約束を今後も守る必要がある。ソウルは反撃を試みることを躊躇すべきではない。今度、平壌が韓国の船に魚雷を撃ち込み、島を砲撃した場合に、反撃すれば北朝鮮は不安定化させると考えて行動を躊躇すべきではない。中国も、新たに改革主義の指導者が支配者として登場しない限り、平壌に援助を与えるのを止めるべきだろう。

 中国と日本に同一歩調をとらせるためにも、アメリカと韓国は、北朝鮮の唐突な崩壊という緊急事態に対応するための外交的試みを開始すべきだろう。
 まずワシントンとソウルは、半島統一に向けた包括的な政治・外交・経済・法律上の戦略を考案し、合同軍事計画の立案に着手すべきだ。米韓両政府はそれぞれ半島統一を担当する政治代表、外交代表を任命し、民間の専門家を交えて紛争が起きた場合、あるいは北朝鮮が不安定化した場合に実施する合同軍事計画をまとめておく必要がある。これらの計画に向けて多くを貢献できる立場にある韓国の統一省その他の省庁は、長年の経験をこの計画に生かすことができる。アメリカもドイツ、日本、コソボ、イラク、アフガンにおける国家建設の経験からの教訓と洞察を提供できる。

 米韓が半島統一に向けた共通ビジョンを描いたら、日本にこの計画に参加するように働きかけるべきだ。東京は朝鮮半島の将来がどうなるか、自国の立場を表明する正当な権利をもっているし、海を越えた大規模な難民の流入を含む、北朝鮮の崩壊に派生する懸念に対処する計画に参加することにも関心を示すだろう。半島の統一プロセスをスムーズに進める上でも、日本の後方支援や経済援助は不可欠だ。例えば、ソウルが北朝鮮の核の兵器庫を引き継がないことを条件に、中国と日本を北朝鮮の再建に貢献させることも考えるべきだろう。中国は電力を安価に提供し、インフラ再建を支援することで(旧)北朝鮮の再開発に貢献できるし、日本は人道支援、経済支援、投資、専門知識を提供できる。
 こうした取り決めが成立すれば、二つの大きな懸念を緩和させられる。一つは統一コストに関わる韓国の懸念、もう一つは半島の統一国家が軍事的・経済的ライバルとして台頭することへの地域諸国の懸念だ。
 北朝鮮の体制が一定の秩序を保ちつつ最後を迎えることはおそらくない。国の崩壊はつねに多くの混乱を伴うが、かくも軍事化され、絶望的な状態にある国が崩壊した場合には非常に大きな混乱が生じるだろう。だが、そうだとしても、北朝鮮の消失によって得られるさまざまな恩恵を見失うべきではないし、北朝鮮の崩壊という不可避の事態に備えた計画を先送りすべきではない。
 北朝鮮の不安定化に備え、統一コストを抑え込む最善の方法は、主要国がいまから対応計画をめぐって協調を模索することだ。北朝鮮は地球上でもっとも悪辣な国家だ。統一プロセスにさまざまな課題が伴うとしても、半島の統一によって自由で新しい国家が誕生すれば、誰もが大きな恩恵を確保できる。


Sue Mi Terry:コロンビア大学東アジア研究所・シニアリサーチフェロー。米中央情報局(CIA)上席分析官、国家安全保障会議(NSC)ディレクター、米外交問題評議会ナショナル・インテリジェンス・フェローを経て現職。専門は朝鮮半島、日本など。

 

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コメント
 
01. 無段活用 2014年8月26日 22:18:13 : 2iUYbJALJ4TtU : au2FKR4tf6
>統一によって特に鉱業部門が大いに活気づくと予想される。韓国のハイテク経済
>は世界でも最先端のレベルにあるが、鉱物資源には恵まれず、エネルギー・鉱物
>資源の97%を輸入に依存している。対照的に北朝鮮には、総額6兆ドルの価値
>をもつ石炭、ウラン、マグネサイト、レアメタル資源が存在する。現在はこうした資
>源を開発できずにいるが、韓国の技術があれば、これらの鉱物資源を開発できる
>ようになり、資源の開発と輸出はグローバル経済の成長にも貢献することになる
>だろう。

そこで第4のシナリオ。北朝鮮が豊富な鉱産資源を担保に資金を調達し、経済破綻
した韓国を併合する。

北朝鮮は食糧の自給を達成しつつあるが、あの国はそれさえできれば他のどこの国
にも頭を下げる理由がなくjなる。一方、韓国は財閥が潰れれば途端に国民が飢える。
北朝鮮に基準を合わせるなら、韓国が試算した程のコストもかからないだろう。韓国
国民の生活水準を北朝鮮に合わせれば良いのだから。


02. 2014年8月27日 00:48:05 : r2hkpE6I9E
あっしらさんコメントの指摘および方向性に同意します。

3. タカサゴ[13] g16DSoNUg1M 2017年7月23日 10:25:16 : Tz0OaHiKA6 : KKYAoIembEs[15]
韓国と北朝鮮は同じ民族同士なので許し合い、助け合った方が良いよね。
民族統一に必要なのは、両国民の民族統一に向けた熱意と協力と、信頼を積み上げる努力なんだろうけど、
韓国が主体となって朝鮮民族の統一国家樹立に向かうにあたっては、米・中・露・日の協力が不可欠であり、在韓米軍の駐留度合いや、THAADミサイル配備の是非などでアメリカの譲歩を引き出し、中・露の統一に対する拒否反応を低め、協力のメリットを高める事が重要でしょうね。
あと、北朝鮮の核ミサイル保持を認めつつ国際社会規則内と資本主義に引き入れる方向へ向かうのが平和的解決策だと思うので、アメリカと北朝鮮が直接交渉を行う必要があると思いますね。

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