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ロシアの禁輸、中・東欧に痛手
リンゴや豚肉、行き場失う 域内デフレ懸念、一段と
【ベルリン=赤川省吾】ロシアが欧州連合(EU)産の食料品を対象に決めた禁輸措置が予想外の波紋を広げている。ロシアに近い中・東欧で輸出先を失った野菜や果物の価格が急落し、域内のデフレ懸念がさらに強まった。中・東欧はドイツやフランスに比べ経済の規模が小さく、外部環境の変化を受けやすい弱みも抱える。政府・中銀は対応に追われている。
「1つ食べれば医者いらず、2つ食べてプーチンをやっつけろ」。こんな言葉がワルシャワで急速に広まっている。ロシアに出荷していた国産リンゴが大量に余り、なんとか国内で消費しようと官民あげて「バイ・ポーランド」運動が始まった。「9月から新学期となる学校で無償配布できないか」「企業で社員の間食用としてはどうか」。議論は熱を帯びる。
もともと豊作の今年は青果の価格が弱含みだった。そこにロシアの禁輸が重なった。特産品の豚肉も対象となり、値段は10〜15%下がった。
あわてた政府はEUに泣きつき、農家の損失を補填したり、政府が買い上げて備蓄に回したりする案をまとめた。だがロシア輸出分の8億ユーロ(約1100億円)をすべて消化するのは難しい。
反ロ感情の強い中・東欧を狙ってロシアは制裁を決めたフシがある。
ロシアはポーランドに対して今春から通関の検査を厳しくし、実質的な輸入制限を科していた。外需の冷え込んだ農産物の価格が下がり、ポーランドの7月の消費者物価の伸びはゼロに沈んだ。すでにデフレの入り口だと中銀は心配する。
対ロ強硬派のリトアニアも状況は似る。人口が300万人の国にもかかわらず、ロシアが輸入を停止した農産物の規模はドイツの1.5倍に達する。政府は乳製品の業界の救済に乗り出した。
想定外のとばっちりを受けたのはラトビアだ。ポーランドでだぶついた安い野菜が流れ込み、ラトビア産のカリフラワーやキャベツが売れなくなった。政府・与党は銀行団と農家の資金繰り支援の話し合いを続ける。
年間70万人のロシア人が訪れ、国内総生産(GDP)の14%を観光業が稼ぐブルガリアも悩む。8月上旬、黒海沿いのブルガス空港に200人のロシア人が取り残された。EUの対ロ制裁が響いてツアーを主催したロシア系旅行会社が倒産し、バカンスの途中でツアー客が立ち往生したと地元メディアは伝える。
「ロシア人は気前がよく、平均より2割多くお金を使ってくれた」。リゾート地ヴァルナの観光協会のマリノフ理事は日本経済新聞に語った。制裁を背景にロシア経済は冷え込み、ルーブル安が進んだこともあり、観光客は出費を切り詰める。稼働率が下がった高級ホテルは値下げに動く。
成長率への影響は見方が割れる。BNPパリバのチーフエコノミスト、デブラ氏はポーランドで14年の成長率が0.4ポイント下がるとみる。青果に加え、機械などの輸出も鈍るとの見立てだ。一方でラトビアのドンブロウスキス前首相は底堅い景気で影響を吸収できると、地元テレビに語った。
欧ロの制裁の応酬はエネルギー価格の上昇を招くとの声が多かった。実際に目立つのは食品などの物価の下振れだ。経済の規模が大きく、打撃に対する吸収力もあるドイツやフランス、イタリアなどよりも「痛み」は中・東欧に表れている。
[日経新聞8月23日朝刊P.7]
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