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「ニューズウィーク日本版」2014−8・26
P.20
「黒人射殺事件で見えた警察の軍隊化
米軍で余った重火器を手に入れて凶暴に?「勘違い警察官」が過剰捜査で悲劇を招く
今月上旬、ミズーリ州ファーガソンで警察官が丸腰の黒人青年マイケル・ブラウン(18)を口論の末に射殺した。そこから全世界に配信された写真で最も印象的なのは、射殺に対する抗議デモでも暴動でもなく、市民と対略した警官隊の姿だ。
防弾チョッキにヘルメット、迷彩服に身を包み、拳銃やショットガン、自動小銃などで武装している。デモ隊に警棒を振り回し、ライフル兢を突き付ける。完全武装の機動隊が最新鋭の軍用装甲車を背に立ちはだかり、デモ隊や報道陣に催涙ガスを放っている様子も写真に捉えられている。
ファーガソンは戦場ではないし、アメリカで警察が軍用装甲車を必要とする場面は想像し難い。1件の略奪騒ぎを除けば、警察は何の危険にも直面していない。なのに市民を保護対象としてではなく、占領民のように扱っている。
家宅捜索でSWAT突入
ジャーナリストのラドレー・バルコは著書『武装警察の台頭』で60年代以降の警察の変化を次のように述べている。「警官と軍人の境界が曖昧になってきた。『非常事態』という口実と装備の供給に促され、警察官は兵士のようなものの見方をするようになった」
この流れは80〜90年代の「麻薬戦争」で強まった。連邦政府は州・市警察に軍用の武器を供与し、麻薬密売などの犯罪摘発に当たらせた。9・11テロとイラク・アフガン戦争の後には連邦政府は軍備を持て余し、州や地方政府に払い下げた。
ニューヨーク・タイムズによれば、06年以降、全米の警察は装甲車435台、飛行機533磯、機関銃9万3763丁、最新鋭の軍用装甲車を432台も購入した。連邦議会が軍備品供与やンステムを確立して以来、警察は稔額43億ドルの装備品を購入。警察が買った軍備の総額は90年の100万ドルからシステム導入直後の95年には3億2400万ドル、昨年には4億5000万ドル近くに上った。
犯罪率が近年で最低水準に下がるなか、警察は大量の武器を獲得し、何かにつけてSWAT(特殊部隊)投入などの手荒な手法を採用している。米自由人権協会(ACLU)によれば、11〜12年のSWAT出動の79%が家宅捜索だった。
過剰捜査は悲惨な結果を引き起こしている。10年のデトロイト市警のSWATによる家宅捜索では家屋に特殊閃光弾と防弾盾で突入。家にいた7歳の女の子が警官の銃をつかもうとして銃弾の犠牲となった。
SWATが出動するのは、黒人とヒスパニック(中南米系)が住む地域に偏っている。具体的には、SWATによる捜査対象者の半数が黒人とヒスパニックで、出動件数の68%が麻薬捜査だった。麻薬捜査の実に6割で強行突入が行われ、死傷者まで出している。
警察は新型の武器や車両に夢中だ。ニューヨーク・タイムズが述べるように、「SWATの活躍で、警官の格好や警察の自己イメージは変わった。警官募集ビデオには、警官が発煙弾と自動小銃を手に突入する場面が満載だ」。警察に武器という「おもちゃ」を与えれば、彼らは当然それを使って「遊ぶ」だろう。
ファーガソンでも警官は重火器を振り回し占領軍のように振る舞っている。黒人とヒスパニックが多数を占める地域では長年、警察は攻撃的かつ懲罰的な行いをしてきた。これに自動小銃や装甲車両が加われば、乱暴な取り締まりになるのは当然だ。
ファーガソンの悲劇はアメリカの無数の貧困地帯で繰り返されていてもおかしくない。
ジャメル・ブイエ」
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