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撃墜されたマレーシア航空機の現場検証を行う国際調査団(写真:AP/アフロ)
旅客機撃墜は、ロシア崩壊のシグナルか ソ連は大韓航空機撃墜事件後に崩壊加速した
http://toyokeizai.net/articles/-/44631
2014年08月17日 ニーナ・フルシチョワ :世界政策研究所上席研究員 週刊東洋経済2014年8月9-16日合併号
ロシア政府の無能ぶりが人命にかかわるようになった今、ロシア国内は恐怖におののき始めた。ウクライナ上空でのマレーシア航空17便撃墜の知らせがロシアに入ると、昔を知る人は1983年9月のソ連空軍機による大韓航空機撃墜事件とその政治的影響を思い出した。
■ソ連崩壊を早めた大韓航空機撃墜事件
当時のソ連政府は、失踪した大韓航空機との関係を否定して世界を欺いた後、同機が米国のスパイだと主張した。だが、この事件でソ連軍参謀総長であり、生粋の強硬派だったオガルコフ元帥のキャリアに終止符が打たれた。
彼の不手際と下手なうそは、1979年から続くソ連のアフガニスタン侵攻の混迷と相まって、崩壊しつつある体制の実態を露呈させた。ブレジネフ政権で始まった経済停滞は、1982年の彼の死後さらに深まる。後継者は諜報機関KGB出身のアンドロポフ氏、次いで共産党中央委員会のチェルネンコ氏だが、彼らは権力の座に就いた時点で片足が棺おけに入っていただけでなく、改革の準備がまったくできていなかった。
アフガニスタンにおける多大な人命の消失(ベトナムでの米国のそれと同等。ただし期間は大幅に短い)は、ソ連政府が自滅の危機にあることを示唆したが、民間機に対する攻撃がその見方を決定づけたように思われた。この気づきがゴルバチョフ氏を権力の座に押し上げ、ペレストロイカやグラスノスチに対する上層部の支持を後押しした。
歴史は運命で決まるわけではない。ただ、プーチン大統領の側近数名、あるいはプーチン大統領自身も、オガルコフ元帥の失敗とソ連エリートの末路に思いを巡らせていることは間違いない。
クリミア併合に関するプーチン大統領の論拠は、アフガニスタン侵攻に関するブレジネフ氏のそれに酷似する。プーチン大統領は2004年にロシア退役軍人に対してアフガニスタン侵攻に関するスピーチを行った際、中央アジアを守る正当な地政学的理由があった、と説明した。2014年3月、ウクライナの土地強奪を正当化するため安全保障上の懸念を口にしたように。
ブレジネフ時代の拡張政策は、エネルギーが新たにロシアにもたらした富を反映していた。プーチン大統領による過去10年の軍の強化と近代化もまたエネルギー輸出に支えられたものだった。経済成長と政府歳入は完全に炭化水素ガス田に依存している。
■残忍、無責任な治安部隊
プーチン大統領の治安部隊は依然として残忍で無責任だ。ロシア国内の一部の地域では、治安部隊が犯罪組織と融合している。ロシアの軍事施設、潜水艦、石油掘削装置、炭坑、病院、老人ホームは頻繁に爆発、崩壊、沈没している。
クリミア併合に対する一般の支持は今後弱まるだろう。マレーシア航空機の大惨事も手伝い、プーチン政権が「詐欺師と盗人」の集団であるとの野党からの批判はますます共感を呼ぶことになる。
プーチン大統領は実質的に自分自身を国家としたことで、国家の失敗はすべて彼自身の責任だとの印象が強まっている。彼のパートナー、特にほかのBRICS(ブラジル、インド、中国、南アフリカ)も国際法軽視や近隣国の主権軽視に対して、先日のBRICS首脳会議で見せたような見て見ぬふりはもはやできない。欧州も今後厳しい制裁をせざるをえない。
プーチン大統領はまだ61歳。ソ連を崩壊の淵に導いた過去の指導者たちよりも10歳若い。憲法上、彼は少なくともあと10年は権力の座に居座れる。だが13年のGDP成長率がわずか1.3%で、制裁により経済の落ち込みが加速すると予想される状況で、愛国心が彼を守りきれなくなるのも時間の問題だ。
アフガニスタン侵攻で強く出すぎ、大韓航空機撃墜事件で全世界にうそをついたことで、ソ連は崩壊した。ロシアを再び帝国権力として確立しようとしたプーチン大統領の努力が異なる運命をたどると信じる理由は、どこにもない。
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