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旅客機撃墜は、ロシア崩壊のシグナルか ソ連は大韓航空機撃墜事件後に崩壊加速した(週刊東洋経済)
http://www.asyura2.com/14/kokusai9/msg/291.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 8 月 17 日 18:17:05: igsppGRN/E9PQ
 

撃墜されたマレーシア航空機の現場検証を行う国際調査団(写真:AP/アフロ)


旅客機撃墜は、ロシア崩壊のシグナルか ソ連は大韓航空機撃墜事件後に崩壊加速した
http://toyokeizai.net/articles/-/44631
2014年08月17日 ニーナ・フルシチョワ :世界政策研究所上席研究員 週刊東洋経済2014年8月9-16日合併号


ロシア政府の無能ぶりが人命にかかわるようになった今、ロシア国内は恐怖におののき始めた。ウクライナ上空でのマレーシア航空17便撃墜の知らせがロシアに入ると、昔を知る人は1983年9月のソ連空軍機による大韓航空機撃墜事件とその政治的影響を思い出した。

■ソ連崩壊を早めた大韓航空機撃墜事件

当時のソ連政府は、失踪した大韓航空機との関係を否定して世界を欺いた後、同機が米国のスパイだと主張した。だが、この事件でソ連軍参謀総長であり、生粋の強硬派だったオガルコフ元帥のキャリアに終止符が打たれた。

彼の不手際と下手なうそは、1979年から続くソ連のアフガニスタン侵攻の混迷と相まって、崩壊しつつある体制の実態を露呈させた。ブレジネフ政権で始まった経済停滞は、1982年の彼の死後さらに深まる。後継者は諜報機関KGB出身のアンドロポフ氏、次いで共産党中央委員会のチェルネンコ氏だが、彼らは権力の座に就いた時点で片足が棺おけに入っていただけでなく、改革の準備がまったくできていなかった。

アフガニスタンにおける多大な人命の消失(ベトナムでの米国のそれと同等。ただし期間は大幅に短い)は、ソ連政府が自滅の危機にあることを示唆したが、民間機に対する攻撃がその見方を決定づけたように思われた。この気づきがゴルバチョフ氏を権力の座に押し上げ、ペレストロイカやグラスノスチに対する上層部の支持を後押しした。

歴史は運命で決まるわけではない。ただ、プーチン大統領の側近数名、あるいはプーチン大統領自身も、オガルコフ元帥の失敗とソ連エリートの末路に思いを巡らせていることは間違いない。

クリミア併合に関するプーチン大統領の論拠は、アフガニスタン侵攻に関するブレジネフ氏のそれに酷似する。プーチン大統領は2004年にロシア退役軍人に対してアフガニスタン侵攻に関するスピーチを行った際、中央アジアを守る正当な地政学的理由があった、と説明した。2014年3月、ウクライナの土地強奪を正当化するため安全保障上の懸念を口にしたように。

ブレジネフ時代の拡張政策は、エネルギーが新たにロシアにもたらした富を反映していた。プーチン大統領による過去10年の軍の強化と近代化もまたエネルギー輸出に支えられたものだった。経済成長と政府歳入は完全に炭化水素ガス田に依存している。

■残忍、無責任な治安部隊

プーチン大統領の治安部隊は依然として残忍で無責任だ。ロシア国内の一部の地域では、治安部隊が犯罪組織と融合している。ロシアの軍事施設、潜水艦、石油掘削装置、炭坑、病院、老人ホームは頻繁に爆発、崩壊、沈没している。

クリミア併合に対する一般の支持は今後弱まるだろう。マレーシア航空機の大惨事も手伝い、プーチン政権が「詐欺師と盗人」の集団であるとの野党からの批判はますます共感を呼ぶことになる。

プーチン大統領は実質的に自分自身を国家としたことで、国家の失敗はすべて彼自身の責任だとの印象が強まっている。彼のパートナー、特にほかのBRICS(ブラジル、インド、中国、南アフリカ)も国際法軽視や近隣国の主権軽視に対して、先日のBRICS首脳会議で見せたような見て見ぬふりはもはやできない。欧州も今後厳しい制裁をせざるをえない。

プーチン大統領はまだ61歳。ソ連を崩壊の淵に導いた過去の指導者たちよりも10歳若い。憲法上、彼は少なくともあと10年は権力の座に居座れる。だが13年のGDP成長率がわずか1.3%で、制裁により経済の落ち込みが加速すると予想される状況で、愛国心が彼を守りきれなくなるのも時間の問題だ。

アフガニスタン侵攻で強く出すぎ、大韓航空機撃墜事件で全世界にうそをついたことで、ソ連は崩壊した。ロシアを再び帝国権力として確立しようとしたプーチン大統領の努力が異なる運命をたどると信じる理由は、どこにもない。


 

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コメント
 
01. 2014年8月17日 20:02:03 : 4thLYS9dcQ
その論理だと崩壊するのはEUの方なのだが
現在アフガンにいるのはアメリカ・NATOだし

02. 2014年8月17日 21:23:59 : nLJN1oTWWc
東洋経済は東スポに名前を変えたのかねw

03. 2014年8月17日 22:03:27 : LBtbDXFoS6

>プーチン大統領は実質的に自分自身を国家としたことで、国家の失敗はすべて彼自身の責任だとの印象が強まっている。彼のパートナー、特にほかのBRICS(ブラジル、インド、中国、南アフリカ)も国際法軽視や近隣国の主権軽視に対して、先日のBRICS首脳会議で見せたような見て見ぬふりはもはやできない。欧州も今後厳しい制裁をせざるをえない。


ブラジル、ボリビア、エクアドル、ベネスエラ、アルゼンチン、チリ、ペルーはイスラエルのパレスチナに対する非道なやり方を見て見ぬふりはしなかった。このうち、BRICSに参加しているのはブラジルだけだが、この前のBRICS開発銀行発足会議にはこれらの国々もオブザーバーとして参加していた。


04. 2014年8月18日 16:03:02 : RTWWw8j8P6

旧ソ連のマネをして介入し続けているのは明らかにアメリカの方だな。

今度崩壊するのがアメリカでないと信ずる理由はどこにもない(笑)

アメリカで暴動が広がっているらしいな。


05. 2014年8月18日 16:09:29 : ouO9IAl8bw

ソ連の最高指導者だったニキータ・フルシチョフの曾孫娘
ニーナ・L・フルシチョワ(Nina L. Khrushcheva)の記事
だね。
現在、アメリカで政治アナリストをやっているらしい。
言わずもがなだべな。

06. 2014年8月18日 18:01:48 : EFJsUJRZXE
この執拗なロシア攻撃はストーカーを超えてゾンビ化してる
もう、気持ち悪いぐらいのレベルだ
このウクライナの捕虜兵士も異常なくらいに精神が崩壊してる
http://japanese.ruvr.ru/news/2014_08_18/276070243/

07. 2014年8月18日 18:54:50 : f0AgkN0pN5
アメリカのことを言っているんだろ彼女(ニーナ・フルシチョワ)は。
アメリカンジョークかロシアンジョークか知らんがねw

08. 2014年8月18日 23:51:39 : O1GIjctQSc
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/41463 
アジアの地政学を一変させるロシアのINF条約違反 米国も中距離ミサイル配備で中国に対抗か?
2014年08月18日(Mon) 福田 潤一
 金門島の歴史的経験を題材に離島防衛のあり方を論じた「中国の侵攻を撥ねつけてきた台湾の小さな島 金門島に学ぶ国境離島を防衛する方法」(7月25日)に引き続き、今回も抑止と防衛にかかわるトピックを取り上げたい。7月末に米国が公式に断定した、ロシアの中距離核戦力(INF: Intermediate-range Nuclear Forces)全廃条約(以下、INF条約)への違反を巡る戦略論争についてである。
 「ニューヨーク・タイムズ」(NYT)紙の報道によれば、オバマ政権は7月28日、ロシアがINF条約に違反する地上発射型巡航ミサイルの試験を行っていると断定した。オバマ政権はその事実を翌日公表した国務省の報告書で明らかにするとともに、プーチン大統領に書簡を送り、米ロ間の協議開催を要請した。オバマ政権は2008年1月、ロシアのINF条約違反について、NATOをはじめとする同盟国への通告を行っていた。
 この話、実は欧州のみならずアジアの戦略環境をも一変させかねない重大性を持つ。米国のみならず、日本自身も当事者と言ってよい話なのだ。しかし、どうも日本での注目がいま一つ弱いように思う。この問題がグローバルな戦略観の下でまだ十分に認識されていないのかもしれない。
 仮にロシアがINF条約から脱退して再びINFを保有するようになれば、その矛先は欧州のみならず日本や中国にも向けられる。このことがまず、当然ながら重大だ。ところが、影響はそれだけに留まらない。仮にロシアがINF条約から離脱するとすれば、米国ももはやそうした条約に拘束される必要はなくなるのである。
 このことは、米国が新たにINF相当のミサイルを開発・配備できるようになることを意味する。日米が中国に対して通常弾頭型の中距離/準中距離の弾道ミサイル配備において劣勢に置かれている現状を勘案すれば、INF条約の廃止はそうした劣勢を打開するチャンスになるかもしれない。
 いずれにしても、ロシアのINF条約違反は、アジアの戦略関係を根本から変化させかねない重大性を持つ話なのである。
INF条約とは何か
 まずINF条約とは何かを振り返っておきたい。これは、1987年12月に米ソ間で締結された、中距離核戦力(INF)の全廃条約である。INFとは何かと言うと、射程500〜5500キロメートルの核弾頭および“通常弾頭”を搭載した地上発射型の弾道・巡航ミサイルのことである。INF条約はこうした兵器を米ソが全廃することを定めた条約であった。
 なぜこのような条約が締結されたのか。ソ連は1970年代後半からSS-20と呼ばれるINFを欧州に前方配備し、「欧州諸国は狙えるが米国は狙えない」態勢を作り上げた。そのことによって欧州諸国に、「欧州に限定したソ連の核攻撃に対して、米国は自らが核攻撃されるリスクを冒してソ連に核反撃の威嚇を行うことはないのではないか」という拡大抑止面での不安を抱かせ、米欧間の離間(デカップリング)を図ろうとしたのである。
 これに対して米国はじめ欧州の同盟国は、NATOの「二重決定」と呼ばれる方式で対抗した。すなわち、一方ではソ連に核軍縮交渉を呼びかけつつ、他方ではソ連がそれに応じるインセンティブを高めるために、NATO自身もINFを欧州に前方配備する方法を採用したのである。こうして、1980年代後半までに、欧州には東側のSS-20と西側のパーシングIIおよび地上発射型巡航ミサイル(GLCM)等のINFがひしめき合うようになった。
 やがてソ連にゴルバチョフが登場すると、このような状況の危険性が改めて認識された。そこで米ソは紆余曲折の末にINFという特定兵器を全廃するINF条約を締結することに合意した。こうして米国側846基、ソ連側1846基のINFが全廃されることが決まった。この条約は、史上初の核軍縮条約であるとともに、史上初の特定兵器全廃条約でもあり、軍備管理・軍縮面で画期的なものであった。このINF条約の締結を境に、米ソは冷戦の終結に向けて協調姿勢を強めていくことになるのである。
 上記の経緯から、INF条約は戦略核にかかわる条約だと考えられがちである。しかし、その規制対象に“通常弾頭搭載型のミサイルも含まれる”点を認識することは極めて重要である。ミサイルを外部から見ただけでは搭載弾頭が核なのか通常型なのかは判別し難い。査察や検証の有効性を確保するために、INF条約は核と通常型の双方の弾頭を搭載した「全ての射程500〜5500キロメートルの地上発射型ミサイル(弾道および巡航を含む)」の保有を禁止した。この点が実は大きな今日的意味を持っているのである。
ロシアの戦略的利益に適わなくなったINF条約
 INF条約は冷戦末期の米ソ間の核軍縮における協調を象徴する条約であった。しかし、30年近く経過した今日、この条約を取り巻く環境はかつてとは一変している。戦略環境の変化が条約の存在意義を改めて問う状況を作り出しているのである。
 冷戦終結後、INF条約を取り巻く状況に2つの変化が生じた。第1に、いくつかの国家で核開発が進められた。イランと北朝鮮が代表的だが、これらの国家は核兵器とともにその運搬手段たるミサイルの開発も進めており、イランはシャハーブ3、北朝鮮はノドンやムスダンなど、INFに相当する弾道ミサイル(準中距離弾道ミサイル=MRBMや、中距離弾道ミサイル=IRBMと呼ばれる)を保有するに至っている。これら、新たなINF相当のミサイル保有国に対する対応が問題となってきたのである。
 第2に、INFに相当する通常弾頭搭載のミサイル配備を顕著に進める国家が登場してきた。こちらの代表は中国である。周知の通り、中国は1996年の台湾海峡ミサイル危機の経験に鑑み、有事の際の米国の西太平洋への戦力投射を防ぐ意図で、いわゆる接近阻止・領域拒否(A2/AD)と呼ばれる能力を増強させてきた。そして、その代表格が弾道ミサイルではDF-16やDF-21Cであり、さらに対艦弾道ミサイル(ASBM)とされるDF-21Dであり、加えて最近登場したDF-26C等であって、巡航ミサイルではCJ/DH-10等の各種ミサイルであったのである。
 こうした戦略環境の変化は、米国よりもロシアの側に大きな影響を与えるものであった。米国の場合、INF相当の弾道・巡航ミサイルを開発または配備中の国家が近隣に存在しない。よって、少なくとも米国自身はこれらのミサイルを脅威に感じる必要がなかった。同盟国に対する拡大抑止の観点は必要であったが、敵対者のINF相当のミサイルの数が限られているうちは、ミサイル防衛(MD)での対処も可能であった。
 だがロシアの場合、上記のようなミサイル開発国が全て近隣(INFの射程内)に位置している。そして、これら諸国のINF相当のミサイルの脅威に対して、有効なMD能力を持たず、INF条約に拘束されるロシア(厳密には、旧ソ連から条約義務を引き継いだベラルーシ、カザフスタン、ウクライナ等の旧ソ連諸国を含む)は、同種の兵器の配備によってそれらの脅威を相殺できないという問題が指摘されるようになった。
 すなわち、戦略環境の変化の結果、INF条約はもはや今日のロシアの利益には適わないものと認識されるようになってきたのである。ロシアはこれまで折に触れてこの問題を提起してきた。
 2005年、当時のS・イワノフ(Sergei Ivanov)国防相はINF条約からの潜在的な離脱の可能性について述べている。2007年、プーチン大統領(当時)も、米ロが第三国のINF相当のミサイル開発を念頭に条約のあり方を見直すべきだと提案している。ロシアはその頃からINF条約からの「ソフトな撤退(soft-exit)」を考え始めたと推測される。
米国務省報告書が問題視するロシアのINF条約違反
 米国が7月29日に公表した軍備管理と不拡散に関する報告書によると、今回、米国がロシアのINF条約違反として問題視したのは、地上発射型の巡航ミサイルである。しかし、報告書中に同ミサイルの詳細についての記述はない。
 この点、米ロ双方の報道や米国科学者連盟(FAS)のH・クリステンセン(Hans M. Christensen)氏によれば、違反とされたミサイルは、イスカンデル-K発射機から発射されるR-500ミサイルとされる。その射程は500キロメートル超とも2000キロメートルとも言われるが、既にエストニア国境付近のルガに配備されたとも見られており、事実とすればバルト三国をはじめとするNATO諸国にとって大きな脅威となりそうである。
 ロシアのINF条約違反を巡っては、それ以外にもロシアが開発中のRS-26ルベズ大陸間弾道ミサイル(ICBM)が実はINFではないかとの疑惑が存在していた。このミサイルは2011年から実験が開始されたが、ICBMでありながらINFの射程で実験が行われ、これが条約違反に当たるのではとの指摘が行われてきた。ただし、米国はこれについてはINF条約に違反しないとして問題視しないようである。
 また、上記イスカンデル発射機から発射される別の短距離弾道ミサイルである、SS-26イスカンデル-Mの射程が500キロメートルを超えているのではという疑惑も従来存在していたが、これも米国はINF条約違反であるとは見なしていないようであり、報告書中に記述はない。よって、米国が問題視するのはR-500と考えられる地上発射型の巡航ミサイルのみとなる。
 ロシアがなぜこのようなミサイルをINF条約に違反してまで開発するかには諸説あるが、1つは既述のように、ロシア近隣のINF相当のミサイルを保有する国家に対抗する目的があるとみられる。特に、中国の弾道・巡航ミサイルに対抗するための開発という見方が有力となっている。
 他方、ロシアには米国およびNATOが推進している欧州のMDを打破する目的があるとの見方も存在する。米国は2009年9月から段階的適合アプローチ(PAA)と称する欧州へのMD配備の取り組みを継続しているが、米国との交渉でこれを規制できなかったロシアが、新兵器によってMD拠点を攻撃するための手段を獲得しようとしているとの見方も存在している。
問われるオバマ政権の対応
 弾道ミサイルであれ、巡航ミサイルであれ、ロシアのINF条約への違反は、オバマ政権が進める軍縮・軍備管理への取り組みに対する深刻な挑戦に相当する。よって、それに対してオバマ政権がいかなる対応を採るのかが注目されるところである。ところが、これまでこの問題に対するオバマ政権の対応は、かなり鈍いものであったと言わざるを得ない。
 なぜならば、R-500ミサイルの最初の実験は2007年に行われたとされているからである。NYT紙によれば、オバマ政権は2011年末までにはその実験がINF条約違反の疑いがあることについて判断を固めていたという。それなのに、同盟国への通告は2014年1月まで遅れ、政権としての公式の断定と公表は現時点(7月末)まで遅れているのである。
 このような遅延がなぜ生じたのか。背景として考えられるのは、オバマ政権がロシアとの核軍縮交渉の継続に未練を残したためではないかと推測できる。米ロ間では2011年に戦略核弾頭の保有数を1550発に抑える「新START条約」が発効しているが、オバマ政権はその後もその後継条約および米ロ間の戦術核の削減に関する条約について交渉を模索してきた。
 そして2013年6月、オバマ大統領はベルリンで演説を行い、米ロの戦略核弾頭の数を新START条約の上限の3分の2、1000〜1100発まで削減することが可能であるとする提案をロシア側に対して行った。すなわち、核廃絶に拘るオバマ大統領としては、ロシアのINF条約違反を公式に提起することによって、ロシアとのさらなる核軍縮交渉に向けた機運が萎んでしまうことを懸念したのではないかと推測できる。
 しかし、このような姿勢は、現条約でさえ遵守しない相手と新条約の締結に向けて努力する、という本質的矛盾を孕んでおり、オバマ政権としても結局この問題を放置できない、との判断を固めたのであろう。よって、かなり時間が経過した後ではあったが、今回のINF条約違反断定の公表が行われたのであろうと考えられる。
 そのため、オバマ政権としてももはやこれ以上はロシアの違反を見過ごすことができない段階に来ていると考えられる。それには、ウクライナ危機その他による米ロ関係の悪化により、さらなる核軍縮交渉の見通しが全く立たなくなったことも影響を与えている可能性が高い。すなわち、これはオバマ政権の「核なき世界」構想の重大な蹉跌と解釈することもできるのである。
「米国はどう対応すべきか」に関する2つの主張
 オバマ政権の対応の遅れはともかく、現在、米国ではこの問題にどう対応すべきかを巡り、重要な戦略論争が展開されている。これは東アジアの戦略環境、ひいては日本の安全保障にも大きく影響する話であるので、日本人としても注目すべきだと考える。
 ロシアのINF条約違反に対して、米国では大別して「条約遵守派」と「条約離脱派」の2つの対応が提起されている。
【「条約遵守派」の主張】
 まず「条約遵守派」の立場からは、ロシア側のINF条約違反があったからといって、米国も直ちにINF条約から離脱するという選択肢を採るべきではない、という主張が行われる。この立場からは、INF条約の継続は様々な形で米国の利益に適うという指摘が行われ、米国は事実を公表してロシアに協議を呼びかけることにより、ロシア側の条約遵守に向けた取り組みを引き出すよう努力すべきだと主張されるのである。
 この立場を採るS・パイファー(Steven Pifer)ブルッキングス研究所上級研究員は、7月17日に行われた米下院軍事委員会の公聴会に提出した事前文書において、米国がINF条約を遵守し続けることは以下の点から米国の利益に適うと指摘している。
 第1に、米国がはっきりした違反の証拠を提示できない限り、条約離脱の責任は米国側が担うことになる。第2に、米国の離脱はロシアが制約なくINFを実験・開発・配備できるようになることを意味し、これは米国の同盟国の懸念を呼ぶ。第3に、現状において米国防総省はINF相当のミサイルを開発する何等の計画も持っていない。厳しい国防予算の削減下において、そうした開発を正統化することは難しい。第4に、よしんば開発できたとしても、それを配備する同盟国の当てがない。INF相当のミサイルの前方展開は、配備予定の同盟国の激しい反発を呼ぶ可能性がある。
 上記の理由から、パイファーはたとえロシア側の違反があるとしても、米国はINF条約への遵守を継続し、ロシア側にINF条約遵守への復帰を呼びかけることが戦略的に妥当な方策だと主張するのである。彼はまた、第三国のINF相当のミサイルへの対応に関しては、INF条約をむしろ多国間化することで、グローバルなINFの全廃を模索すべきだとも指摘している。
【「条約離脱派」の主張】
 これに対して「条約離脱派」は、ロシア側のINF条約違反を契機として米国も同条約からの離脱を模索すべきである、そして米国自身もINF相当のミサイルを開発・配備して、他国の同種のミサイルの脅威を相殺すべきである、と主張する。
 例えば、この立場を支持するJ・トーマス(Jim Thomas)戦略予算評価研究所副所長は上記の公聴会での事前文書において、以下のような主張を行っている。
 すなわち、最も望ましいのは条約の多国間化で第三国のミサイルをも規制することだが、米ロがINF条約を遵守するままでは、第三国にそのような枠組みへの参加のインセンティブが乏しく、実現が難しい。米ロ間の条約を修正して特定地域における限定的なミサイル(例えば射程500〜2000キロメートルの通常弾頭搭載型ミサイルのみ)の保有を認めるという方策もあるが、これも特定地域の問題解決がなされても他地域の問題解決がなされないという欠点があり、やはり困難を抱えている。
 そうなれば米国に残るのは条約離脱の選択肢しかないが、むしろ米国に条約離脱の選択肢があることが、INF条約の多国間化や修正などを他国が受け入れるインセンティブを強める。つまり、米国に必要なのは、INF相当のミサイル開発の可能性を検証することで他国のINF条約遵守(または参加)のインセンティブを引き出すという、現代版の「二重決定」であると言うのである。
 つまり、トーマスは、「他国に条約を遵守させる(または条約に参加させる)ために、逆説的に米国が条約を遵守しない場合のコスト(米国によるINF相当のミサイル開発とその同盟国への配備)を、他国に説得的な形で示すべきだ」という指摘を行っているわけである。そのため、米国はINF条約からの離脱を真剣に考え、現実にINF相当のミサイルを開発して前方展開することを検討すべきだ、との主張を行っているのである。
 「条約遵守派」も「条約離脱派」も、最終的にはINF条約の多国間化と遵守が望ましい点では意見が一致しているが、そこに至る道筋についての理解が異なっている。「遵守派」はあくまで既存の条約遵守(や既存条約への参加)を米国が他国に呼びかけるのがよいと主張するのに対して、「廃止派」は、そのためには米国が逆説的にINF条約からの離脱を真剣に検討する必要がある、と主張するのである。
アジアの地政学を一変させるINF論争
 以上の論争は必然的に、アジアの地政学にとっても極めて大きな意義を持っている。アジアでは北朝鮮や中国のINF相当のミサイルの開発・配備に対して、米国がINF条約に拘束されるがゆえに、有効な対策を採ることができない限界がこれまで指摘されてきた。その結果、米国と同盟国との間に拡大抑止の信頼性についてのデカップリングが生じることが懸念されてきたのである。
 具体的には、北朝鮮のノドンや中国のDF-16やDF-21シリーズは、米国には届かないが、同盟国(例えば日本)には届くという特徴を有する。そのため、米国への影響を限定的に抑えつつ、同盟国たる日本だけを選択的に攻撃するという恫喝を実行可能な状況にある。その場合、同盟国への攻撃に対して米国が反撃を行うという威嚇が本当に行われるのか、拡大抑止の信頼性が問われる事態が起こり得る。
 いわば1980年代の欧州における状況がアジアにおいて再現されているわけだが、当時との違いは現在の米国はINF条約に拘束されているということである。そのため、米国は自身がINF相当のミサイルを前方配備することでお互いの戦力を相殺するという当時の「二重決定」の発想が採れないという限界があった。そこに、現在のロシアのINF条約違反を契機とした戦略論争の重大性があるのである。
 特にこれは、中国の“通常弾頭搭載型の”ミサイルに対抗する上で重大な意義を持つ。仮に米国が、トーマスら「条約離脱派」が指摘するようにINF条約から離脱し、既存のシステム(RIM-161 SM-3やMGM-164 ATACMS等)の発展による安価なINF相当のミサイル(通常弾頭搭載型)を前方配備することができるようになれば、これらミサイルの撃破を考慮に入れなければならない中国の戦略計算は複雑化し、西太平洋で先制攻撃を行うための費用を高めることができる(=抑止に貢献する)と考えられよう。
 つまり、米国やその同盟国が西太平洋においてINF相当の“通常弾頭搭載型”ミサイルを前方配備することは、中国のA2/AD能力を打破する上での「費用賦課戦略(cost-imposing strategy)」に適うものと考えることができるのである。これは既存の(=MD強化や軍事アセットの分散・堅牢化等の)対A2/AD措置に追加的な形で対中抑止力の向上に繋がるものである。もちろん、この措置は一時的な軍拡競争の激化を導くことになるが、最終的な目的はそれによって中国をアジア地域における軍備管理・軍縮交渉に引き出すことにある。
 なお、1980年代のNATOの「二重決定」と同じく、核弾頭搭載型ミサイルの前方展開についてはどうなのかという指摘も考えられようが、中距離/準中距離射程とはいえ戦略核のこの地域への「持ち込み」は、通常弾頭搭載型ミサイルの前方展開と比べてあまりにも政治的コストが高すぎると考えられるため、現実的にはひとまず通常弾頭搭載型ミサイルの導入に上記の議論を限定することが適切である。
 もっとも、オバマ政権は現在のところ、上記のような「条約離脱派」の立場に立ってINF条約を廃止することは全く考えていないように見える。当面のオバマ政権はあくまでもロシアのINF条約違反を非難し、ロシアに条約遵守への復帰を求める立場を採り続けるだろう。オバマ政権としては、簡単に「核なき世界」の目標を放棄するわけにはいかないと考えられるからである。
 しかし、この問題はすでに何年も議論されてきており、オバマ政権が公式にロシアのINF条約違反を断定したことが米国内の新たな論争のモメンタムを生み出していることを、日本としても見過ごすべきではない。オバマ政権は立場を変えないとしても、オバマ政権以後の政権も同様であるとは断言できないのである。
日本に求められるグローバルな戦略観
 日本では、ロシアのINF条約違反がアジアにおいても重大な戦略的意義を持つという指摘がなされることはまだまだ少ない。しかし本稿では、これが日本にとっても直接的な意味を持ち得る可能性について言及したつもりである。仮に米ロ双方がINF条約から離脱するとすれば、その時、我々が直面する戦略環境は、従来とは全く異なるものとなるであろう。
 「条約離脱派」に属する米国の有識者の一部は、すでに米国がINF条約から離脱する意義について公に語り出しており、「条約遵守派」のパイファーでさえ、ロシアの離脱によってINF条約が実質的意義を失う可能性に備え、新たなINF相当のミサイル開発の実現可能性を巡る研究を国防総省が開始すべきだと述べている。日本としては、こうしたグローバルな戦略環境の変化を導き得る動きに敏感であった方がよい。
 大前提として言えば、日本は根本的にはあくまでもINF条約の遵守とその多国間化を追及してゆくべきなのだろう。中国をはじめとする第三国の脅威を念頭に置けば、今後、第三国を交渉に参加させる形でINF相当のミサイルを縮小・廃止してゆく努力が必要になるだろう。
 しかし、それを目指す過程においては、戦略的な逆説を覚悟する必要があるかもしれない。すなわち、日本自身も米国との協力の下でINF相当の“通常弾頭型“ミサイルの前方配備を受け入れることで、第三国の脅威を相殺するとともに、第三国を交渉に引きずり出す努力が必要となる可能性がある。
 ロシアのINF条約違反は軍縮・軍備管理の観点からは危機であり、また日本にとっても直接的な脅威となり得る話である。だが「危機」とは「危険」と「機会」を合わせた言葉であることを見落とすべきではない。米ロのINF条約からの離脱は、中距離/準中距離射程の中国の通常弾頭搭載型ミサイルの面における日米の劣勢を打開するチャンスを提供するかもしれないのである。
 そのことが、中国をINF相当のミサイルを縮小・廃止する多国間交渉に参加させるきっかけとなる可能性もある。日本もそろそろ、こうしたグローバルな戦略観の下で、INFの問題を考えてゆくべきではないだろうか。

09. 2014年8月19日 16:20:30 : DeXW4DjLSM
読んでいただくと言う点を忘れないようにね。

10. 2014年8月19日 20:08:38 : toeh68c7IA
>>08
要約してくれ。
能力がないなら貼らないように。

11. 2014年8月20日 12:41:56 : RTWWw8j8P6

フルシチョフはウクライナ人、クリミヤをウクライナに帰属させたのもフルシチョフ

割とわかりやすい構図。

結論はウクライナ崩壊の加速だろう(笑)


12. 2014年8月21日 00:35:36 : no31X615y2
>>08 必死のプロパガンダ

ご苦労さん。長過ぎて誰も読まないよ。w

>>03 さん、正確な情報を有難うございます。
それに比べて本文記事は妄想レベルとしか言い様がない。記事を書いた者のバカさが際立つ。

本文>ロシアを再び帝国権力として確立しようとしたプーチン大統領の努力が異なる運命をたどると信じる理由は、どこにもない。

新自由主義の国民無視の悪政をストップさせて借金をほぼ完済しロシア経済を復活させたプーチンが祖国愛から成し得た一連の偉業をこの記事のバカ女ニーナ・L・フルシチョワ(Nina L. Khrushcheva)は古いロシアと対置させているからバカ丸出しである。
ロシアは生まれ変わって以前のロシアではない事をこのバカは分からない、というか認めたくないのだろう、祖国愛のないノーメンクラトゥーラの末裔=死に損ない=クズである。

おおっ、我ながら、阿修羅らしいコメントだ。www


13. 2014年8月21日 23:29:57 : AQLSPLIkCw
当方、国際短波放送を受信するBCLであるが、この3月でほとんどの国際放送を取りやめたロシア連邦が、この10月から復活するとの情報が流れている。まだ未確認だが、ウクライナ問題で西側マスゴミのイメージダウン戦術に対抗するため、自分たちの主張や意見を世界各国の国民に直接届ける必要があると判断したと見られる。

ネットによる放送は、各国語で順次、再開されています。


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