03. 2014年8月05日 14:25:24
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>一方、西欧諸国の仲間に入った諸国の経済は、効率化が進んだこともあり、総じて順調に拡大の道を歩むことになった。その結果、ロシアを中心とした諸国と西欧諸国の仲間に入った諸国との間に、大きな経済格差ができてしまった。 そんな状況を反映して、一旦はロシアに歩み寄った諸国の中から西欧入りを目指す動きが目立ち始めた。その一例がウクライナだ。ウクライナは成長著しいポーランドやバルト3国などを横目に、次第に西欧諸国へと舵を切り始めた。 不況の東欧で唯一好況なのはポーランドである。 ところでポーランドの貿易の4分の一はドイツである。 ドイツはエネルギーの4分の一をロシアに委ねている。 それだけではない。 ドイツとロシアの経済関係はロシア関連事業に関わるドイツ人雇用問題にもかかわる。 エネルギー問題はロシアの代替国が今すぐ見つからない現状では、ロシアによる売値のつり上げはドイツ人の生活に直に響いてくる。 それはドイツとの貿易を主とするポーランドにも影響する。 さて、当のポーランドはこのような米露の対立にどのような見解を持っているのか、閣僚の一人であるシコルスキ外相の発言をめぐる記事を紹介しよう。 断っておくが記事(論文)を書いたのは米国人(保守系シンクタンク)だということを忘れないで頂きたい。 長いが全文を貼る。 米国との同盟を無意味と斬り捨てたポーランド外相 Kazuya Hirai Kazuya Hirai2014年6月30日 国際 編集部注:本記事は翻訳家・平井和也氏の寄稿。同氏は、人文科学・社会科学分野の日英・英日翻訳をおこなっている。 日米安全保障条約に基づいて米国と同盟関係にある日本では集団的自衛権の解釈改憲についての安倍政権の対応を巡って議論が巻き起こっているが、ポーランドでは外務大臣が米国との同盟関係は無意味だと発言し、物議を醸している。 本稿ではこの問題に注目し、リアリズムを編集方針に掲げる米国の外交専門誌「The National Interest」のサイトに6月25日に掲載された論考”Is Poland’s Alliance with America ‘Worthless’?”(ポーランドの米国との同盟は無意味か?)を取り上げたいと思う。 この論考の著者は、米国の保守系シンクタンクであるケイトー研究所のダグ・バンドー上席研究員だ。同氏はレーガン政権で大統領特別補佐官を務めた実績の持ち主だ。 ダグ・バンドー上席研究員: https://twitter.com/Doug_Bandow/with_replies それでは、論考の内容を見ていきたいと思う。 米国との同盟関係を無意味だと断言したポーランドのシコルスキ外務大臣 歯に衣着せぬ物言いをするポーランドのラドスワフ・シコルスキ外務大臣は、ポーランドの米国との同盟関係は「無意味」だと考えているようだ。ただ、今回に関しては、米国はシコルスキ外相に対して、ポーランドをあらゆる状況から守るために必要なあらゆる措置を講ずることを再確認するという性急な行動をとるべきではない。逆に、ポーランドの方こそ、なぜ米国の支援を受けるに値するのかというその理由を明確に示すべきなのだ。 ポーランドの週刊誌『Wprost』は、シコルスキ外相と同国の前財務大臣との会話を録音した記録を入手したらしい。EU外務大臣(EU外務・安全保障政策上級代表)候補と目されているシコルスキ氏は、その中で次のように明言している。 「ポーランドと米国の同盟関係は無意味であり、有害ですらある。というのも、この同盟のおかげでポーランドが安全保障について間違った考えを持つようになるからだ。この同盟は全くのインチキだ。我が国はドイツとロシアとの間で紛争を抱えている。米国がポーランドに好意的なため、我が国は全てがうまくいっていると考えているが、実際には我々はひどい間抜けっぷりだ」 米国の莫大な軍事費 この二国の既存の関係に間抜けがいるのは確かだが、それはポーランドではなくむしろ米国の方だ。米国はGDPの4%以上を軍事に使っており、この数字は北大西洋条約機構(NATO)加盟国の国防費合計の4分の3に相当する。NATOはGDPの2%を目標にしているが、全加盟国を合計しても昨年は1.6%にすぎなかった。ポーランドは最近、国防費をGDPの1.8%まで引き上げ、今年はこの数字をさらに1.95%まで引き上げたいと考えている。NATOの直接的な軍事費に対する米国の分担金は、ポーランドの約十倍に相当する。 旧ソ連の崩壊によって、このアンバランスな状況はさらに悪化することになった。米国が世界中に展開している米軍をそのまま保持したのに対して、欧州の同盟国は速やかに兵力を削減した。この動きは、欧州諸国にとって主要な敵国(唯一の敵国である場合が多い)がなくなったという事実を反映したものだ。 さらに悪いことに、NATOは手当たり次第にロシアとの国境線まで拡大し、軍事力を最小限に抑えながらも多くの国々を従え、ロシアとの間で重大な対立が生まれる可能性をもたらしたのだった。これらの要素はどれ一つとして米国の安全保障にとって重要なものではなかったが、米国は多くの国々に安全保障の配当を与え、その恩恵を受けた国の中にはポーランドも含まれていた。 NATOの集団防衛条項が生きている可能性を示唆するウクライナ危機 米国と欧州は、このような安全保障の約束を果たす必要は全くないだろうという想定を描いていたが、そこに起こったのがウクライナ危機だった。ウクライナ危機は、NATOの第五条(集団防衛条項)が今でも生きている可能性があることを示唆している。NATO加盟国の中で最も東に位置している国々が改めて米国の安全保障を強く要求し始めたのだ。ここで最も重要なのは、それらの国々が米軍の駐留と国境防衛のための常備軍を求めていることだ。 その中でも最も強い主張を展開したのがポーランドだった。米国との同盟関係が無意味だと考えるようになる前の段階では、シコルスキ氏は「英国、スペイン、ポルトガル、ギリシア、イタリアには大規模な基地があるが、なぜポーランドにはないのだろうか?」と述べていた。同氏は、既存の施設は「冷戦の遺物」であり、それらが位置している国々は「過去25年間に起こった出来事にきちんと目を向けるべき」であるという考えを表明していた。 一方、ポーランドのドナルド・トゥスク首相は、「NATOの国境で防衛努力が必要なものがあるとすれば、それはポーランドの東側の国境だ。NATO軍の増強ペースをもっと上げることができるだろう」と述べている。 また、ポーランドのトマス・ シェモニャク国防大臣は、次のように述べている。 「米国は、ポーランドを含めた中欧および東欧におけるプレゼンスを高めなければならない。長期的に見て、我が国はポーランドにおけるNATOと米国のインフラ開発および両者の軍事プレゼンスの増強を強く望んでいる」 さらに、ポーランドのスタニスワフ・コジェイ国家安全保障局長官は、「核抑止はNATOの裁量で行うことができる極めて重要な分野であり、その重要性はますます高まっている」と述べている。 ロシアがクリミアを併合した後、ポーランドのアレクサンデル・クファシニェフスキ元大統領は、「これからの四ヶ月間から五ヶ月間は、米国は明確な毅然としたリーダーシップを発揮することができず、難しい局面が続くだろう」と述べている。つまり、ここで言うリーダーシップとは、「空虚な言葉」ではなく「具体的なもの」を意味している、とワルシャワ大学のボーダン・スクラルスキ教授は述べている。 イラクとアフガニスタンにおける米国の戦争に参戦したポーランド ポーランドにとって、世界の超大国である米国の常備軍によって支えられたロシアに対抗するための国防体制を築くことにどんなメリットがあるのかは明らかだ。しかし、米国にとってのメリットとは何なのだろうか? この二国間関係は一方的な構造だ。ポーランドは米国に対して、米国と同等の支援を行っていないからだ。 ただし、ポーランドは他のNATO加盟国および加盟予備軍と並んで、イラクとアフガニスタンにおける米国の愚かな戦争に参戦している。皮肉なことに、ポーランドの参戦は、当時のブッシュ政権が行った中東と中央アジアの大転換を図ろうとする間違った政策を後押しすることになり、逆効果となったのだ。しかし、この二つの戦争を行ったことにたとえ意味があったとしても、それはポーランドにとっての核武装した潜在敵国を抑えると約束していた米国の意向に合致するものではなかった。もし事態が悪い方向に進んでいたら、米国は壊滅的な破局に直面していた可能性がある。 米国にとって戦略的に重要ではないポーランド 米国にとって、ポーランドを守るために戦争の危険を冒すだけの安全保障上の理由は何もない。ポーランドが米国にとって戦略的に重要だったという事例はこれまでの歴史の中で一度もないのだ。第一次世界大戦の戦後処理を行った1919年のパリ講和会議に米国は出席し、この会議の結果、ポーランドは再び独立国家となった。しかし、米国はポーランドをナチスドイツから守ることもなければ、第二次世界大戦終結時のポーランド独立の際にソ連と対決することもなかった。米国はまた、1956年の労働者と学生による反政府運動(ポズナン暴動*)の時にも、ポーランドに対して何も行わなかった。また、1976年の大統領選挙の討論会で、共和党の現職であるジェラルド・フォード大統領は、米国主導の解放運動を呼びかけることはなく、ポーランドは自国が占領下にあるとは考えていないという主張を展開した。さらに、1982年にポーランド政府がソ連による侵略の恫喝を受け、自主管理労働組合「連帯」を弾圧した時にも、当時のレーガン政権は軍事介入を考えなかった。 (*ポズナン暴動とは、1956年6月28日にポーランド西部の工業都市ポズナンで起こった反政府暴動のこと。工場労働者の賃上げ要求ストライキがきっかけだったが、暴動化して53名の死者を出し、三日間続いた。統一労働党指導部は事態の処理を巡って分裂したが、暴動は反革命分子の仕業だとするスターリン主義者の主張は否定され、原因は過去の党の政策の誤りにあるとする立場が採用された。この事件をきっかけとして、ポーランドでも非スターリン化が急速に進み、十月にはかつて民族共産主義者として批判されたゴムルカが復活し、党第一書記となった。ハンガリー動乱はポーランドのこの十月政変に直接刺激されたものだった。) 米国はこれまでの歴史の中でポーランドが置かれてきた苦境に対して同情している。ポーランドは何世紀にもわたって、数々の強欲な帝国に苦しめられてきた歴史がある。このようなポーランドの境遇は不運であり、悲劇的でさえあるが、だからと言って米国にとっては戦争の危険を冒す理由にはならない。政策立案者がNATOを軍事同盟ではなく、国際的な社交クラブだと考えるようになった時に、初めて米国の政策が変更された。その中で、ポーランドは待望のNATO第五条(集団防衛条項)による安全保障の確約を与えられたのだった。 ロシアのポーランドに対する脅威は米国との対決を意味する ポーランドと米国の同盟関係が無意味になるのは、米国がそれを後ろ盾しなくなった場合に限られる。ロシアがポーランドを弾圧した場合に米国がどう出るかについては確かなことは言えないが、ほとんどの政府がその事態について、無視できない核心的な秩序に対する脅威だとみなすだろう。また、ポーランドと国境を接しているドイツが刺激されるということもあるかもしれない。少なくとも、ロシアは、ポーランドの脅威となることは米国との対決という重大な危険をともなうということを認識するだろう。これはポーランドにとって、決して「無意味」などと言えるものではない。 シコルスキ外務大臣の発言は米国の目を覚まさせる警告であるはずだ。米国は欧州をはじめとした各地域に多くの福祉依存者を抱えているが、米国の福祉に最も深く依存している人たちは、米国に対して全く敬意を払っていないように見える。このような構図の中で、本当の間抜けは米国だ。米国はどこの国をどこの国から守っているのかについて再考し、同盟の見返りとして有用な価値をもたらしてくれる国々との「価値ある」同盟関係を確保すべきである。 【参照資料】 The National Interest: Is Poland’s Alliance with America “Worthless”? http://newclassic.jp/16287 シコルスキ外相の心変わり(以前の発言では米軍基地を置けと言っていた)の米国の同盟は要らない発言は同国の経済的好況に水を差しかねない米国及びNATOの冒険主義への嫌悪であり、それを揶揄したこの記事では腹が膨れれば(国が富めば)これまで米国が与えてやった恩(文中ではすべて逆説的に書いている)を忘れるらしいとポーランドの無邪気さに苛立っている。 いずれも以前より悪くなりたいと願う国はなく、争いは避けるべきだというのは近ければ近いほど(いうまでもなくとばっちりを一番食う国)願うのも人の常だ。 アメリカは欧州に遠く、ロシアはより近い。 しかしロシアの接しているのは欧州だけではない、ユーラシアなのだ。 アメリカが海一枚隔てたユーラシアの市場国家をロシアは散歩にでも行くかの鼻歌気分で行くことができる。 アメリカのロシアへのジレンマはまだまだある。
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