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ふざけるな、ウソつきプーチン!世界はお前のものじゃない 「ロシアがマレーシア機を撃墜」真相と決定的証拠
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40028
2014年08月04日(月) 週刊現代 :現代ビジネス
全世界から非難を浴びてなお、この男は「無関係」を主張し続けている。一瞬にして奪われた300人の命。プーチンはいま、犠牲になった彼らまでも、己の野望のために利用しようとしている。
■無慈悲すぎる独裁者
いま、全世界の怒りが、一人の男へと向かっている。男の名は、ウラジーミル・プーチン。これまで国際情勢を思うままに動かしてきたロシアの独裁者は、マレーシア旅客機撃墜事件の責任を一切認めず、到底納得のできない「ウソ」を吐き続けている。
「アメリカ、そして西欧諸国は現在、ロシアを痛烈に非難しています。これまでロシアがウクライナの国内情勢を不安定にしてきた結果として、今回の惨事は起きた。それにもかかわらずプーチンの言動は、あまりにも無責任すぎる。無慈悲かつ約束を守らない彼の姿勢を見て、アメリカは、ロシアと対決せざるを得ないという決意を固めています」(ハーバード大学政治学部客員教授のオーレル・ブラウン氏)
マレーシア航空17便を襲った悲劇は、ウクライナ上空を横切り、ロシア領空内へさしかかろうとしたそのとき起きた。
ミサイル命中の衝撃とともに、機内に巻き起こった爆風。乗客のほとんどは、その熱に焦がされた。爆発から逃れた人たちも、四散する機体とともに上空に放り出され、気圧差により気絶。意識を失ったままばらばらと落下し、猛スピードで地面へと叩きつけられた。全てが一瞬の出来事。彼らには、悲鳴をあげる暇さえなかっただろう。
旅客機に乗っていたのは、約300人の民間人。そのなかには、著名な研究者を含む、およそ100人の「第20回国際エイズ会議」への参加者がいた。待ちに待った夏休みを迎え、アジア方面への家族旅行に出かける、80人以上の子供たちもいた。
プーチンは撃墜に関与し、彼らの未来を奪い去った。その罪はあまりにも大きく、怒りに燃え上がった国際世論は容易に収まりそうもない。
■当然、すべて知っていた
事件後、ウクライナのポロシェンコ大統領は「事故ではなくテロ行為」とロシアを激しく非難。アメリカのオバマ大統領も「(ロシアは武装勢力に対し)直接的な責任がある」と指摘した。最も多くの国民が旅客機に乗っていたオランダのルッテ首相はさらに、「(武装勢力の無慈悲な対応には)虫酸が走る」と罵倒した。
しかしプーチンは、批判などどこ吹く風だ。「ウクライナが平和なら今回の悲劇は起こらなかった。しかも領土内で起きたことは、その国(=ウクライナ)の政府に間違いなく責任がある」と強弁した。
「実はオバマ大統領は、事件後すぐに、親ロシア派勢力の武装解除を申し入れるため、クレムリンへの直通電話をかけていました。しかしプーチンは、批判を一切聞き入れなかった。それどころかオバマが撃墜事件について触れようとすると、プーチンはアメリカのロシアに対する経済制裁に怒りを露にし、逆にオバマを責め立てたんです。撃墜については、1時間におよぶ電話対談の終盤になったところで『そういえば……』と、軽く触れたのみだったようです」(全国紙政治部記者)
しかしいくらプーチンが逆ギレしたところで、旅客機墜落が「事故」ではなく、ウクライナ東部を実質支配する親ロシア派武装勢力による「撃墜」だったことは間違いない。それを示す「決定的な証拠」が、次々と明らかになり始めている。
まずは、撃墜に使用された「BUK(ブーク)」と呼ばれる地対空ミサイル。秒速800mで標的を捕捉し、高度2万5000mを飛行する戦闘機を攻撃する能力がある強力な兵器だ。
「親ロ派勢力が自前でそんな兵器を持っていたとは考えられない。国際社会から非難されているとおり、ロシア本国から横流しされていたのは確実です。親ロ派はさらに、『BUK』のみならず、戦車や装甲車も渡されていたはずです。チンピラの集まりのような親ロ派は当然練度が低い。兵器を扱うための訓練も、ロシア本国でやっていたと考えられます」(軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏)
大量の兵器の横流しと、軍事訓練を国内で行いながら、絶対的な支配者であるプーチンが知らなかったはずはないのだ。
元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が語る。
「武装勢力のなかにはGRU(ロシア軍参謀本部情報総局)出身者がいます。このGRUには『死の商人』という一面があり、兵器の密売、横流しを行っている。当然プーチンは、関与していることをわかっていた。しかしそれを黙認していたのです」
ロシア側の関与を証明するため、ウクライナ内務省は、事件後に「BUK」が親ロシア派勢力によってウクライナからロシアへと運搬される様子を収めた動画を全世界に公開。動画からは、大型のトレーラーに載せられた「BUK」が運ばれていく様子が見て取れた。
■世界のルールをぶち壊す
証拠はこれだけに留まらない。ウクライナ保安局は、親ロシア派武装集団の一人が撃墜直後に、ロシア軍の情報将校に電話で報告している会話を傍受しており、その音声も公表した。
会話はまず、「たった今飛行機を撃ち落とした!」と意気揚々と報告する武装勢力の男の声から始まる。親ロシア派は数日前にウクライナの輸送機を撃ち落としており、それに続く戦果だと、調子づいていたのだ。
しかし墜落現場に到着し、状況が明らかになるにつれて、徐々に焦りの色が濃くなっていく。そして間違いなく民間機だと気づくと、ロシア軍情報将校は誤射を責め、武装勢力の兵士は開き直った。
「何をやっているんだ!」
「クソ!じゃあこいつらはスパイを乗せていたんだ。こんなところを飛ぶべきではない。ここでは戦争が起こっているんだ!」
撃墜はロシアが横流しした兵器によって、親ロシア派勢力が行った。これはもはや言い逃れのできない事実だ。
プーチンは事件から時間が経過するにつれ、やや態度を軟化し始めてはいる。
「(親ロシア派武装勢力に対し)できる限りすべてのことをする」
しかしこの発言の背景には、事件の真相は明らかにならないという計算がある。軍事評論家の世良光弘氏は解説する。
「親ロシア派勢力は、真相解明の鍵を握る『ブラックボックス』の引き渡しに同意しました。ブラックボックスとは、撃墜された旅客機のフライトレコーダーおよびボイスレコーダーのことです。ただこれを解析してわかるのは、どの位置でミサイルを被弾したかということくらい。発射場所までは、わからない。
さらに言えば、ブラックボックス以上に明確な証拠が見つかり、ミサイルの発射場所が明らかになったとしても、親ロシア派の犯行だと決定づけるのは難しい。というのも、ウクライナ軍と親ロ派の戦闘地域は明確に線引きされてはおらず、複雑に入り組んでいるからです。発射場所がわかっても、ロシアは『そこはウクライナ軍の支配地域だ』と抗弁するでしょう」
多数の民間人を乗せた旅客機の撃墜を、プーチンが直に指示したとはさすがに考えにくい。ただ、過激で暴力的な武装勢力に兵器を流せば、いずれ今回のような事件が起きることは容易に想像がついたはずだ。KGB出身で稀代の策謀家であるプーチンが、それを予測していなかった、ということはありえない。
プーチンはそこまでして、何を成そうとしているのか。その背景には、プーチンの恐るべき狙いがある。
アメリカを中心とした西欧諸国が作り上げた「世界のルール」。それをぶち壊すことこそが、プーチンの目的だ。欧米中心の国際会議によって細かく動きが規制され、それを破った国は各国からの経済制裁を受ける現在の国際社会。そのルールを破壊し、「強いロシア」が主役となった新たな世界を再構築する。それが、プーチンが長年抱き続ける野望に他ならない。
アメリカ・ニューヨークのニュー・スクール大学准教授で、ロシア政治が専門のニーナ・クルシュシバ氏が言う。
「今回の事件が、プーチンの策略の一環であることは間違いない。彼の最終目的は、世界一のパワーを持つ国になること。そしてアメリカの発言力が弱まっているいま、そのチャンスだと見ている。最終目的に達するまで、プーチンが妥協的な態度をとることは絶対にありえない」
だからこそプーチンはいま、撃墜によってウクライナに起きた「火種」が、さらに燃え広がるのを待っている。今後戦闘が激しさを増せば、旅客機墜落以上の悲劇が起きる可能性は高いからだ。ウクライナ派の義勇軍が、ロシアの国境を越え国民を傷つけることも十分に起こりうる。
そのとき、プーチンには「ウクライナの鎮静化」という大義名分ができる。自ら作戦を指揮し、ウクライナの首都・キエフへ侵攻。圧倒的な戦力で政府軍を制圧し、ウクライナを占領するシナリオが成立する。
そうなれば国際社会も指をくわえて見ているわけにはいかない。第2次世界大戦以来となる、最大級の戦争危機が発生するだろう。
「NATOが鎮圧に乗り出すでしょう。それをアメリカが支援する形になると思います。ウクライナ上空を舞台に、NATO・米空軍とロシア空軍が衝突する恐れがある。そうなったとき、ロシアの味方につく可能性があるのは、中国だと思います。EU・アメリカvs.ロシア・中国の構図になる」(前出の世良氏)
戦火の拡大はウクライナとその周辺だけにとどまらない。世界の「もうひとつの火薬庫」である中東地域にも広がっていく。
「これまでアメリカとロシアは、中東におけるイスラム原理主義勢力の拡大を阻止する協調関係にありました。しかしウクライナ問題を契機に、その関係は崩れ始めている。抑止力が弱まったことで今後、原理主義組織は自由に動けるようになり、中東全域が大混乱に陥る恐れがあります。
そして中東の情勢が悪いほうに傾けば、石油の安定供給はできなくなる。日本ではガソリンの値段が、リッター250円まで上がるというような事態も考えられます」(前出の佐藤氏)
つまり、世界を意のままに動かしたいというプーチンの狙い通り、国際社会のバランスは崩れ、「力によるルール変更」が横行する時代が再びやってくるのだ。
■日本株は暴落へ
筑波大学人文社会系教授で、ロシア政治が専門の中村逸郎氏が言う。
「現在の状況は、冷戦が終わった'89年、それ以降の世界の最大の危機と言えます。国際社会のパワーポリティクスを巻き込んだ、初めての戦いになる。これはもはや、第3次世界大戦の前夜である―といっても過言ではない」
そうなれば当然、日本は日和見を続けていられるわけもなく、この争いの真っ只中に巻き込まれていく。外交ジャーナリストの手嶋龍一氏は語る。
「安倍政権としては、北方領土問題解決の糸口を見出すため、なるべくロシアと明確な対立はしたくない。しかし国際社会の反ロシア体制が強まれば、そうは言っていられないでしょう。同調しない、ということはなかなか難しい」
現に安倍政権はいま、アメリカから「ロシア制裁に同調せよ」と、強い圧力を受けている。かつてのイラク戦争のように、日本に対して「ショー・ザ・フラッグ」(旗幟鮮明にせよ)と求めているのだ。その結果、安倍首相が進める集団的自衛権の「拡大解釈」適用の第1号が、このウクライナ派兵になる可能性も出てくる。
そして、世界的に戦火が拡大していくことになれば、グローバル経済は完全に崩壊する。まず、ロシアから全需要量の3分の1の天然ガスを輸入しているEUで、急激に景気が悪化。その余波を受け、現在史上最高値付近にあるアメリカの株価も、奈落の底へ暴落していくだろう。
「そして一番割を食うのは日本です。アメリカ、ロシア、EU、すべての通貨が信用できなくなったとき、最も安心して運用されるのは日本円しかなくなる。すると、必然的に円高になり、これまで安倍首相が躍起になって進めてきたアベノミクスは水泡に帰す。大不況の時代にいきなり逆戻りするのです」(前出の中村氏)
世界の歴史は、たった一発の銃弾によって激変してきた。今度は300人の命を奪った「プーチンのミサイル」が、世界と日本の命運を一変させることになるのかもしれない。
「週刊現代」2014年8月9日号より
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