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原文はここ
記者に関して
http://thebulletin.org/bio/alexander-golts
以下訳
冷戦時代の戦略に回帰するロシア
「歴史は繰り返す。一度目は悲劇、二度目は喜劇として・・・」この言葉は必ずしも正しくない。歴史は時に同じ悲劇を繰り返し、同様の酷い結果をもたらす。
30年前、ソ連の戦闘機が、領空に迷い込んだ大韓航空機を撃墜した。アメリカの情報機関はレーガン大統領に疑う余地の無い証拠を提供した。パイロット間の通信記録である。
レーガンは民間機の撃墜を「虐殺行為」と呼び、世界は震え上がった。それまで、国際社会は、レーガンが使う「悪の帝国」というレトリックは、いささか誇張に過ぎると思っていた。数百人の乗客が死んだことで、レーガンのソ連評の信憑性が高まったのである。
ロシア参謀部が、説明図を使い、差し棒を振り回して力説しても、誰も耳を貸さなかった。彼らの主張は、「大韓航空機は巧妙に民間機を装ったスパイ機だった」というものだった。結果、ソ連は国際的につまはじきにされた。
今、歴史は、恐るべき類似性をもって繰り返されている、ロシア軍の官僚が、互いに矛盾しあう2つの仮説を熱心に主張しているところまでそっくりだ。仮説のひとつは、ウクライナの戦闘機が撃墜したというもの。もうひとつは、ウクライナの地対空ミサイルによる撃墜説だ。(ロシア側は、ウクライナ軍が所有する空対空および地対空ミサイルの情報を入手したと主張している)ロシア外務省は、国防省が際限なく押し付ける「疑問点」を議論するよう、国際社会に求めている。
しかし、国際社会はロシアの要求を完全に無視している。西側主要国は、すでに結論に達しているからだ。ホワイトハウスのスポークスマン、ジョッシュ・アーネストのロジックは極めて明確だ。「我々は、マレーシア機が、地対空ミサイルにより、反政府軍支配地域の上空で撃墜され、ミサイルは反政府軍(分離主義者)の支配地域から発射されたと認識している。当時、ウクライナ軍は、地対空ミサイルを同地域から発射することはできなかった。したがって我々は、ロシアと親ロシア派民兵に責任があると考えている」
ロシアは、西側諸国から「ならずもの国家」と見なされている。EUとアメリカはロシアと関係を強化する理由はないと考えているばかりか、あらゆる手段で封じ込める必要性さえ感じている。かってのソ連に対してのように・・・。アメリカの統合幕僚本部議長、マーチン・デンプシーは、こう発言した。「NATO諸国は、自国の安全を確保するために、政策を大きく転換しなければならない」
アメリカは、潜在的脅威に対処するために、ヨーロッパへの迅速な部隊派遣の準備をする必要がある。これがデンプシー大将の真意であろう。つまり、アメリカ軍がロシアの近くに現れないとしても、ヨーロッパの米軍基地に、兵器の移送が始まるということだ。アメリカ政府は、分離派グループが所持する地対空ミサイルの正確な位置情報の提供や、ウクライナへの武器提供も検討している。
20世紀の後半、アメリカとソ連は、それぞれが支援するゲリラ組織を代理として戦わせ、傀儡政権を次々と樹立した。今、全く同じシナリオがヨーロッパで展開している。しかし、その頃の米ソの指導者は、対立がヨーロッパに飛び火することには慎重であり、その点、賢明でもあった。一方、デンプシー大将は、ヨーロッパの戦略的環境は劇的に変化し、ウクライナだけの問題ではないと言い切っているのである。
要するに、世界は新しい冷戦に直面しているということだ。かってソ連は冷戦に破れた。では、ロシア派勝利する可能性があるだろうか?
ソ連はかって兵員数500万人を誇った。しかし、現在のロシアは、人口構造の変化から、80万人を動員するのがせいぜいだろう。ソ連の軍事産業は、あらゆる種類の武器を自前で製造した。ロシアは多くの分野で外国に依存している。
ソ連には、ワルシャワ条約機構という強固な軍事・政治的同盟があった。一方、ロシアは、プーチン自身が、「幸運にも、我々はどこの国とも同盟関係が無い」と発言している。しかし、プーチンはこう発言することで、CSTO(ロシアがカザフスタ等5カ国と結ぶ集団安全保障機構)の真価を認めているのある。プーチンが、CSTO をNATO への対抗勢力として位置づけるようになったのは、ごく、最近のことである。
これ以上、旧冷戦時代との類似点をあげでもきりがない。いずれにしろ、ロシアがアメリカに軍事的に対抗できないことが明確になるだけだろう。
しかし、ロシアの最高司令官は、この点、全く意に介していないようだ。最近開かれた安保保障会議で、ロシアの主権と領土保全を説く演説の冒頭に、プーチンは、こうセンセーショナルに宣言している。「明らかなのは、我々の主権や領土に対する直接的な脅威は存在しないということだ。プーチンによれば、「国際的なパワーバランスがロシアの安全を保障している」のだ。しかし、上に挙げた要素を考慮すれば、そのような「力の均衡」が存在するとは思えない。ロシアは明らかに軍事的にアメリカに劣っているのだ。
ロシアの強みといえば、「核兵器」しか存在しない。ウラジミール・プーチンの頼みの綱はこれなのである。しかし、アナトリー・セルジェコフ元国防大臣によれば、アメリカはこの分野でも優位にたっている。セルジェコフによると、ロシアが戦略核削減条約の上限まで戦略ミサイルを増やすには2028年までかかるという。
だが、旧冷戦時代と違い、戦略核の量的均衡には重要な意味は無い。明白なのは、現在の西側の戦略が、「ロシアの核ミサイルが一基でも、防衛システムを突破し、アメリカに到達する可能性」を前提にしていることだ。
最近まで、ロシアが世界第2の核大国であるという現実は、国際政治において重要な意味を持たなかった。クレムリンの指導者たちの知性と分別に一定の信頼を置いていたからだ。どういう状況になっても、プーチンが核ミサイルの発射ボタンを押すことはないだろうと・・・。
状況は変わった。ロシアはもはや、同盟関係も軍事的な力も無く、核兵器に依存する国際社会の「つまはじき者」となってしまった。私が恐れるのは、目的達成の安易な手段が他に無い場合、クレムリンが、核兵器の使用を梃子に国際社会を脅しをかけることが常態化することだ。ロシアは第二の北朝鮮になりつつある。北朝鮮よりも、はるかに大きく、危険な「ならずもの国家に」になろうとしているのだ。
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